第57回日本作業療法学会

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ポスター

援助機器

[PL-1] ポスター:援助機器 1

Fri. Nov 10, 2023 3:00 PM - 4:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PL-1-1] 3Dプリンタで制作した自助具の総合満足度と自助具に関する評価の関係

松崎 将哉 (木古内町国民健康保険病院リハビリテーション科)

【はじめに】
 わが国における自助具は1990年代以降大きく発展し,普及してきた.自助具は障がいのある方が使う物から高齢の方が使う物へ,さらには疾病などにより,一時的にでも生活に支障を来す方の使う物へと変化してきた.それに伴い,自助具に関わる人々も増加している.自助具を我慢して使用していないかを十分に考慮し,その効果を明確に評価する必要がある.(Demers, et al.2008)
 作業療法士は自助具を対象者に提供する際,手作り品や既製品で対応することが多かったが,近年では3DプリンタなどのDigital Fabricationを活用した報告がされている. (澤田ら.2020)しかしながら,3Dプリンタで制作した自助具に対する報告は乏しい.
【目的】
 本研究の目的は,3Dプリンタで制作した自助具の総合満足度と自助具に関する評価がどのような関係にあるか明らかにすることである.
【方法】
 ペットボトルの開閉に困難感がある,振動障害を有する患者9名を対象とした.3Dプリンタで個々に合わせて制作したペットボトルオープナーを使用してもらい,調査を実施した.検討項目は年齢,握力,ピンチ力と研究者が作成したアンケートの4項目(総合満足度,見た目,完成度,重要度),福祉用具満足度の効果測定の指標であるQUEST第2版(Quebec User Evaluation of Satisfaction with assistive Technology)の8項目(大きさ,重さ,調整しやすさ,安全性,耐久性,使いやすさ,使い心地,有効性)について5件法で評定し,点数が高いほど好結果となる.
 総合満足度と各項目を分析するためにSpearmanの順位相関係数を算出した.統計解析はEZR1.61を使用し有意水準は5%未満とした.本研究は個人情報保護に努め,参加者には書面にて同意を得ている.
【結果】
 対象者の年齢は平均62.3歳±8.0歳,性別は男性9名,握力は中央値22.8(四分範囲4)kg,ピンチ力は2.9(0.8)kg,総合満足度は,「やや満足している」の3(2)点であった.Spearmanの順位相関係数を算出した結果,総合満足度は有効性(rs=0.91,p<0.01),調整のしやすさ(rs=0.82,p<0.01),使いやすさ(rs=0.87,p<0.01)に正の強い相関が認められた.その他の項目では,総合満足度と有意な相関は認められなかった.
【考察】
 3Dプリンタで制作したペットボトルオープナーの自助具は,調整のしやすさ,使いやすさ,有効性が総合満足度と相関が認められた.自助具の期待される効果を発揮し,操作性が高いことが主観的な満足度に影響を与える可能性が示唆された.3Dプリンタで制作した自助具は,個別に形状を微調整することが可能で,既製品の自助具よりも個々の満足度が高い物を提供できる可能性がある.今後,作業療法士が3Dプリンタを活用し自助具を提供することで,対象者の活動性を高め,生きがいのある生活に繋げることが期待される.
 今回の検討では,症例数が少ないことや性別が男性のみだったことで結果に偏りが生じた可能性があるため,より多くの症例数で検討を行っていきたい.