[PL-2-2] 兵庫県の介護事業所における介護ロボット導入の実態
【はじめに】
少子高齢化,生産年齢人口の減少を背景に,介護分野では人材確保や生産性向上の視点から介護ロボットへの注目が高まっている.兵庫県立福祉のまちづくり研究所では,2017年より介護ロボットの開発・導入支援を実施している.2022年度には兵庫県と共同し,介護ロボットの円滑な導入や活用ができるように県下の介護事業所(以下,施設)に向けて,兵庫県介護ロボット導入支援研修を実施した.研修で得られた情報から,施設における介護ロボット導入の実態について報告する.本発表は匿名化された情報のみの分析を行い,また開示すべき利益相反関係にある企業等はない.
【目的】
兵庫県下の施設における介護ロボット導入の実態を明らかにする.
【方法】
兵庫県介護ロボット導入支援研修を受講した施設を対象に,Googleフォームによる自記式アンケートを実施した.導入済の介護ロボットの分野や満足度(4件法),これから導入を希望する分野(以下,導入希望分野)を集計し,割合を算出した.また,介護ロボットを既に導入している施設(以下,導入済施設)と新たに導入する施設(以下,未導入施設)の導入希望分野についてX²検定を用いて群間比較を行った.解析はIBM SPSS Statistics Ver.28を用い,有意水準を5%とした.
【結果】
研修は基礎編と応用編を実施した.基礎編は介護ロボットに関わる国や県の背景,機器選定から導入に向けた知識を学ぶ内容とし,オンデマンドで215施設が受講した.応用編は実機使用や運用方法について実機を用いて学ぶ内容とし,対面で24施設が受講した.
基礎編を受講した215施設の内,導入済施設は131施設,未導入施設は84施設であった.
介護ロボットの導入率は見守り支援が48.4%(101件)と一番高く,次いでICT機器35.3%,介護業務支援29.3%であり,最も低いのは排泄支援5.1%であった.
導入済施設における満足度は介護業務支援が90.5%と一番高く,次いでICT機器89.5%,見守り支援79.8%で,最も低いのは排泄支援63.6%であった.
導入希望分野は見守り支援69.8%,移乗支援47.9%が多く,介護業務支援24.2%,ICT機器24.7%,排泄支援23.7%であった.最も低いのは移動支援16.3%であった.導入済施設と未導入施設の導入希望分野を比較すると,移乗支援において導入済施設の希望が有意に多かった(p=.004).
【考察】
兵庫県の実態として,多くの施設が見守り支援機器を導入していることが明らかになった.見守り支援機器は夜間帯の巡視に関する負担軽減の効果が期待されやすく,また2018年,2021年の介護報酬改定にて,見守り支援機器やICTの活用による夜勤職員配置加算の人員配置要件が緩和されたことが影響していると考える.
導入済施設は未導入施設に比べ,移乗支援分野の導入希望が有意に多いことが明らかとなった.介護ロボットの導入では施設課題を明らかにし,課題に即した機器の導入が成功につながると言われている.導入済施設は介護ロボットの導入において,既に現場の意見を取り入れる必要性を経験しており,現場の移乗介助の負担が大きいことを反映しているものと推測される.
排泄支援分野では一定数の希望はあるものの,有効に使用されていない現状が明らかとなった.移乗や排泄,入浴といった生活場面への機器導入では,対象者の選定から困難となるケースも多く,専門的な支援が必要と思われる.介護現場の「革新」が求められる中で,機器や対象者の特性を理解し,寄り添った支援が可能な作業療法士は,介護ロボットの導入支援において重要な役割を担うことが期待される.
少子高齢化,生産年齢人口の減少を背景に,介護分野では人材確保や生産性向上の視点から介護ロボットへの注目が高まっている.兵庫県立福祉のまちづくり研究所では,2017年より介護ロボットの開発・導入支援を実施している.2022年度には兵庫県と共同し,介護ロボットの円滑な導入や活用ができるように県下の介護事業所(以下,施設)に向けて,兵庫県介護ロボット導入支援研修を実施した.研修で得られた情報から,施設における介護ロボット導入の実態について報告する.本発表は匿名化された情報のみの分析を行い,また開示すべき利益相反関係にある企業等はない.
【目的】
兵庫県下の施設における介護ロボット導入の実態を明らかにする.
【方法】
兵庫県介護ロボット導入支援研修を受講した施設を対象に,Googleフォームによる自記式アンケートを実施した.導入済の介護ロボットの分野や満足度(4件法),これから導入を希望する分野(以下,導入希望分野)を集計し,割合を算出した.また,介護ロボットを既に導入している施設(以下,導入済施設)と新たに導入する施設(以下,未導入施設)の導入希望分野についてX²検定を用いて群間比較を行った.解析はIBM SPSS Statistics Ver.28を用い,有意水準を5%とした.
【結果】
研修は基礎編と応用編を実施した.基礎編は介護ロボットに関わる国や県の背景,機器選定から導入に向けた知識を学ぶ内容とし,オンデマンドで215施設が受講した.応用編は実機使用や運用方法について実機を用いて学ぶ内容とし,対面で24施設が受講した.
基礎編を受講した215施設の内,導入済施設は131施設,未導入施設は84施設であった.
介護ロボットの導入率は見守り支援が48.4%(101件)と一番高く,次いでICT機器35.3%,介護業務支援29.3%であり,最も低いのは排泄支援5.1%であった.
導入済施設における満足度は介護業務支援が90.5%と一番高く,次いでICT機器89.5%,見守り支援79.8%で,最も低いのは排泄支援63.6%であった.
導入希望分野は見守り支援69.8%,移乗支援47.9%が多く,介護業務支援24.2%,ICT機器24.7%,排泄支援23.7%であった.最も低いのは移動支援16.3%であった.導入済施設と未導入施設の導入希望分野を比較すると,移乗支援において導入済施設の希望が有意に多かった(p=.004).
【考察】
兵庫県の実態として,多くの施設が見守り支援機器を導入していることが明らかになった.見守り支援機器は夜間帯の巡視に関する負担軽減の効果が期待されやすく,また2018年,2021年の介護報酬改定にて,見守り支援機器やICTの活用による夜勤職員配置加算の人員配置要件が緩和されたことが影響していると考える.
導入済施設は未導入施設に比べ,移乗支援分野の導入希望が有意に多いことが明らかとなった.介護ロボットの導入では施設課題を明らかにし,課題に即した機器の導入が成功につながると言われている.導入済施設は介護ロボットの導入において,既に現場の意見を取り入れる必要性を経験しており,現場の移乗介助の負担が大きいことを反映しているものと推測される.
排泄支援分野では一定数の希望はあるものの,有効に使用されていない現状が明らかとなった.移乗や排泄,入浴といった生活場面への機器導入では,対象者の選定から困難となるケースも多く,専門的な支援が必要と思われる.介護現場の「革新」が求められる中で,機器や対象者の特性を理解し,寄り添った支援が可能な作業療法士は,介護ロボットの導入支援において重要な役割を担うことが期待される.