[PL-2-3] 体幹前傾をサポートする椅子の駆動に必要な運動パターンの解析
はじめに:我々は前方リーチ動作時に生じる本来の体幹や骨盤の運動を補助するために,座面が前傾する可動性に加え骨盤と体幹の位置関係を変化させずにリーチ活動を補助する座面の前方移動が可能となる椅子を開発している.この椅子は,前方への体重負荷と共に前傾かつ前方へ移動し,後方への体重負荷により後傾しながら後方に戻る仕様となっている.座面が前傾することで,骨盤と下部体幹の前傾運動を補助し,座面が前方に移動することで体幹の前傾や回旋による手の運搬のための運動を補助することができる可能性がある.本研究では,健常成人がこの椅子を使用する際,どのような運動パターンにより椅子を駆動させているのかを動作解析と筋活動から明らかにし,今後椅子の動きを半自動化させる工学的調整の際の基礎資料とすることを目的とした.本研究は本学倫理委員会の審査を得ている(承認番号24-2-33).
方法:対象は,20~30代の健常成人5名とし.対象者には口頭および書面で研究内容を説明し同意を得ている.課題は,椅子を最大前傾させる課題とした.対象者には膝関節と足関節が90度になるよう座位姿勢を取り,上肢長×1.3の距離で目の高さにある指標をみながら動くように指示した.課題は5回実施し,分析対象は3回目の施行とした.
動作解析はダートフィッシュ10.0(ダートフィッシュ社)を用い,課題中の体幹前傾角度と椅子の傾斜角度について算出した.体幹前傾角度は機器調整の都合上,第7頚椎と大転子,大腿骨外側上顆によりなす角から求めた.椅子の傾斜は水平線に対して座面が傾く確度とした.また,筋電図はテレマイオDTS EM-801(ノラクソン社)を使用し,導出筋に送信機(EMG プローブ)を装着し,サンプリング周波数1000Hz,フィルタ特性15~500Hzの設定で測定した.導出筋は体幹屈曲筋である外腹斜筋,体幹伸展筋である腰部脊柱起立筋,股関節屈曲筋である大腿直筋とした.すべて左右の筋を測定した.動作解析からは最大体幹前傾角度および体幹が動き出してから座面が傾き出すまでの時間を求めた.筋活動からは,椅子が最大前傾するまでの各筋の%EMGを算出し,平均筋活動及び個人内での筋活動パターンを分析した.
結果のまとめと考察:動作解析の結果より,体幹の前傾角度は33.04±9.67度となり,椅子を10度程度前傾させる課題において体幹はその3倍近く動かす必要があった.これに要した時間は平均1.91±0.32秒となり,椅子に用いた油圧バンパーの特性が反映した結果であった.また,椅子の駆動に要した筋活動については,外腹斜筋(右/左)が1.72±0.42/3.07±1.19,脊柱起立筋(右/左)が10.45±3.10/16.38±4.43,大腿直筋(右/左)が13.47±12.54/16.63±10.28であった.これは,運動自体は従重力方向ではあるが,座面上での姿勢を保ちながら椅子を前傾させる必要があるため,腰背部と大腿直筋の筋活動が比較的高かったと考えられる結果であった.しかし個人差も大きく,大腿直筋優位な者,腰背部が優位な者など個人の動作戦略が影響していた可能性がある.
これらのことから,少なくとも体幹を30度程度前傾させるだけの可動範囲と姿勢を保持したり椅子を駆動させるための腰背部や大腿直筋の筋活動が椅子の使用には重要であることが示唆された.今度,アクチュエーターの搭載により椅子の動きを半自動化させる際,筋活動の負担が軽減され,体幹の可動範囲も少ない条件で椅子が作動させる調整が必要であると考えられた.
方法:対象は,20~30代の健常成人5名とし.対象者には口頭および書面で研究内容を説明し同意を得ている.課題は,椅子を最大前傾させる課題とした.対象者には膝関節と足関節が90度になるよう座位姿勢を取り,上肢長×1.3の距離で目の高さにある指標をみながら動くように指示した.課題は5回実施し,分析対象は3回目の施行とした.
動作解析はダートフィッシュ10.0(ダートフィッシュ社)を用い,課題中の体幹前傾角度と椅子の傾斜角度について算出した.体幹前傾角度は機器調整の都合上,第7頚椎と大転子,大腿骨外側上顆によりなす角から求めた.椅子の傾斜は水平線に対して座面が傾く確度とした.また,筋電図はテレマイオDTS EM-801(ノラクソン社)を使用し,導出筋に送信機(EMG プローブ)を装着し,サンプリング周波数1000Hz,フィルタ特性15~500Hzの設定で測定した.導出筋は体幹屈曲筋である外腹斜筋,体幹伸展筋である腰部脊柱起立筋,股関節屈曲筋である大腿直筋とした.すべて左右の筋を測定した.動作解析からは最大体幹前傾角度および体幹が動き出してから座面が傾き出すまでの時間を求めた.筋活動からは,椅子が最大前傾するまでの各筋の%EMGを算出し,平均筋活動及び個人内での筋活動パターンを分析した.
結果のまとめと考察:動作解析の結果より,体幹の前傾角度は33.04±9.67度となり,椅子を10度程度前傾させる課題において体幹はその3倍近く動かす必要があった.これに要した時間は平均1.91±0.32秒となり,椅子に用いた油圧バンパーの特性が反映した結果であった.また,椅子の駆動に要した筋活動については,外腹斜筋(右/左)が1.72±0.42/3.07±1.19,脊柱起立筋(右/左)が10.45±3.10/16.38±4.43,大腿直筋(右/左)が13.47±12.54/16.63±10.28であった.これは,運動自体は従重力方向ではあるが,座面上での姿勢を保ちながら椅子を前傾させる必要があるため,腰背部と大腿直筋の筋活動が比較的高かったと考えられる結果であった.しかし個人差も大きく,大腿直筋優位な者,腰背部が優位な者など個人の動作戦略が影響していた可能性がある.
これらのことから,少なくとも体幹を30度程度前傾させるだけの可動範囲と姿勢を保持したり椅子を駆動させるための腰背部や大腿直筋の筋活動が椅子の使用には重要であることが示唆された.今度,アクチュエーターの搭載により椅子の動きを半自動化させる際,筋活動の負担が軽減され,体幹の可動範囲も少ない条件で椅子が作動させる調整が必要であると考えられた.