[PL-2-5] 360度リアルタイム空間共有ソリューションを用いた遠隔家屋訪問の有用性の予備的検討
【背景】:退院後の住環境への適応訓練や家屋環境調整は,作業療法士(以下OT)にとって重要な役割である(作業療法ガイドライン 2018).リハビリテーション開始早期より退院先家屋環境を評価し,対象者や家族とOTがその評価結果を共有することは,退院後の環境調整やその環境を想定した動作指導をする上で有益であるが,時間や費用的問題から導入が容易ではない.そのため,写真による家屋環境評価が広く用いられているが,限定的な情報であるために介入すべき環境危険因子を見逃すリスクや,自宅内動作や動線がイメージしづらいといった問題がある.そこで我々は,360度映像をリアルタイムで遠隔地に配信する360度リアルタイム空間共有ソリューションを使用して,家屋環境の360度映像をOTがVirtual Reality (VR)でリアルタイムに視聴することにより,時間や費用的な負担を軽減したうえで従来の写真による家屋環境評価よりも正確に評価できるか否かを検証した.
【方法】:対象者は医療法人協和会千里中央病院に所属するOT4名であった.OT①(経験年数15年)は家屋環境評価の対象となるクライエントを担当しており,残りの3名のOT(経験年数OT②2年,OT③4年,OT④21年)はクライエント情報を①より事前に共有された.①~④は事前に撮影された家屋写真を用い家屋環境評価を実施した.その後①は現地訪問による家屋環境評価を実施し,②~④はVR映像を視聴して家屋環境評価を実施した.360度カメラの操作はクライエントの家族が行い,②~④とオンラインで会話をしながら自宅内を撮影,配信した.家屋環境評価はHome Hazard Assessment(HHA),自宅環境チェックリスト(HEC日本語版)を使用し,環境危険因子の有無,介入すべき環境を回答した.家屋環境評価実施前後の疲労感,ストレスをVisual Analog Scale(VAS)を用い評価した.②~④に対し写真とVRの使用感をSystem Usability Scale(SUS)と自由記述アンケートを用い評価した.家屋環境評価回答項目数,介入すべき環境因子について写真評価とVR視聴評価で比較し,現地訪問評価とVR視聴評価の一致数を算出した.①~④の評価実施前後の疲労感・ストレス変化量を比較した.また使用感について写真とVRのSUS得点を比較し,自由記述では②~④で共通する内容を抽出した.本研究は大阪公立大学リハビリテーション学研究科研究倫理委員会の承認(承認番号:2022-219)を得て実施された.
【結果】HHA回答項目数について写真評価は②11,③9,④10,VR視聴評価は②19,③21,④19であり,現地訪問評価との一致項目数は写真評価で②8,③6,④7,VR視聴評価で②9,③12,④11であった.HEC日本語版の回答項目数について写真評価は②2,③1,④2で,VR視聴評価は②4,③4,④4であったが,現地一致項目数は3名で写真評価とVR視聴評価に著しい変化はなかった.介入すべき環境については写真評価とVR視聴評価において著変なく3名でばらつきがあった.SUSの得点について写真評価は②57.5,③52.5,④42.5,VR視聴評価は②47.5,③55,④57.5であり3名でばらついているが,記述式アンケートからVRは「動線,間取りの評価がしやすい」,「時間削減になる」という意見が共通して見られた.疲労,ストレスの家屋環境評価前後の変化量について,①は疲労感18→46,ストレス33→47,②は疲労感48→38,ストレス46→38,③は疲労感24→30,ストレス50→46,④は疲労感50→49,ストレス20→10であった.
【考察】:VRを用いたリアルタイム遠隔家屋訪問は360度映像により情報量が多く現地の人物と会話できるため環境危険因子の見逃しが少なく,また移動を伴わないことから実際の家屋訪問と比較しOTの時間や費用的負担を軽減出来る可能性がある.
【方法】:対象者は医療法人協和会千里中央病院に所属するOT4名であった.OT①(経験年数15年)は家屋環境評価の対象となるクライエントを担当しており,残りの3名のOT(経験年数OT②2年,OT③4年,OT④21年)はクライエント情報を①より事前に共有された.①~④は事前に撮影された家屋写真を用い家屋環境評価を実施した.その後①は現地訪問による家屋環境評価を実施し,②~④はVR映像を視聴して家屋環境評価を実施した.360度カメラの操作はクライエントの家族が行い,②~④とオンラインで会話をしながら自宅内を撮影,配信した.家屋環境評価はHome Hazard Assessment(HHA),自宅環境チェックリスト(HEC日本語版)を使用し,環境危険因子の有無,介入すべき環境を回答した.家屋環境評価実施前後の疲労感,ストレスをVisual Analog Scale(VAS)を用い評価した.②~④に対し写真とVRの使用感をSystem Usability Scale(SUS)と自由記述アンケートを用い評価した.家屋環境評価回答項目数,介入すべき環境因子について写真評価とVR視聴評価で比較し,現地訪問評価とVR視聴評価の一致数を算出した.①~④の評価実施前後の疲労感・ストレス変化量を比較した.また使用感について写真とVRのSUS得点を比較し,自由記述では②~④で共通する内容を抽出した.本研究は大阪公立大学リハビリテーション学研究科研究倫理委員会の承認(承認番号:2022-219)を得て実施された.
【結果】HHA回答項目数について写真評価は②11,③9,④10,VR視聴評価は②19,③21,④19であり,現地訪問評価との一致項目数は写真評価で②8,③6,④7,VR視聴評価で②9,③12,④11であった.HEC日本語版の回答項目数について写真評価は②2,③1,④2で,VR視聴評価は②4,③4,④4であったが,現地一致項目数は3名で写真評価とVR視聴評価に著しい変化はなかった.介入すべき環境については写真評価とVR視聴評価において著変なく3名でばらつきがあった.SUSの得点について写真評価は②57.5,③52.5,④42.5,VR視聴評価は②47.5,③55,④57.5であり3名でばらついているが,記述式アンケートからVRは「動線,間取りの評価がしやすい」,「時間削減になる」という意見が共通して見られた.疲労,ストレスの家屋環境評価前後の変化量について,①は疲労感18→46,ストレス33→47,②は疲労感48→38,ストレス46→38,③は疲労感24→30,ストレス50→46,④は疲労感50→49,ストレス20→10であった.
【考察】:VRを用いたリアルタイム遠隔家屋訪問は360度映像により情報量が多く現地の人物と会話できるため環境危険因子の見逃しが少なく,また移動を伴わないことから実際の家屋訪問と比較しOTの時間や費用的負担を軽減出来る可能性がある.