[PL-3-1] デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者に対する余暇活動の拡大を目的とした環境支援介入
【はじめに】
当院はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下.DMD)患者をはじめとする小児期発症の難病支援をおこなっている.DMDは進行性の筋変性疾患であり,四肢の筋力低下のみならず,呼吸・循環などにも影響を及ぼす全身性疾患である.近年では,非侵襲的陽圧換気療法(以下.NPPV)の普及により30歳を超えての延命が可能となっている.加齢と伴に重度化する運動機能障害の中で,患者らがパソコンなどの活動を維持するためには少ない身体の動きで機器操作が行えるよう支援機器の適合が重要であるが,当院ではまだまだ整備が遅れている現状がある.今回,スマートフォン(以下.スマホ)使用時間を延ばしたいと希望するDMD患者に対し,テレビやスマホなど複数の機器を1つの入力スイッチで操作できる環境制御装置を当院で初めて導入し,余暇活動の拡大に至ったため報告する.
【症例】
当院入院中で20代のDMD患者.終日NPPV使用,機能障害分類ステージⅧ,上肢機能障害度分類stage9.ADLは全介助で,昼食時のみ車いす乗車されているが,その他多くの時間をベッド臥床で過ごす.自閉症スペクトラムの診断あり,初めてのことに取り組みづらい,環境の変化に弱い特性を認めるが,知的障害はない.余暇は週に3日,できiPad(Dekimause社)を午前中の2時間程度使用.その他の時間はテレビを視聴して過ごされている.介入当初は特に困りごとはないと話されていた.
【経過】
本人の作業ニーズ把握のため COPM を用いた.スマホ使用時間延長を希望されていたが,遂行度5,満足度5と現状でもそれほど低い状態ではなかった.余暇活動はテレビリモコンとスマホそれぞれの機器操作は同じ入力スイッチで行っていたが,連動していないため,切り替えの都度介助者がスイッチを繋ぎ変える必要があるなどセッティングの工程が複雑で時間がかかり,介助者の負担が大きい状態だった.そのため2つの機器操作を患者本人が好きなタイミングで切り替えられるように簡易ECS(KIKIROOM社)の導入を行ったこと,病棟スタッフに向けて介助方法の指導を行ったことで,これまで機器のセッティングに5分以上要していのが1分程度で済むようになり,活動時間も起床から就寝前までいつでも作業が可能となった.導入当初は生活リズムの変化などに不安を訴えることもあったが,試行開始日と開始から2か月後との比較で遂行度 5→8,満足度5→10 と上昇が認められ,「お母さんとリアルタイムでLINEができるようになった,テレビの録画予約も自分でできる」と話していた.
【考察】
病状が徐々に進行していく中,環境制御装置を活用し複数の機器操作が可能となった事で,患者のコミュニケーション手段を制限なく持てることとなり,患者は家族との連絡を随時取れる事になった.当初は機器導入による生活リズムの変化に対する不安があり,否定的・受動的であったが,実際に試せる環境・できた体験を積み重ねる事で患者のアドヒアランス向上に繋がった.さらに病棟との連携を行い,セッティングに対する情報共有を進めた事で介助量の軽減に至った.DMDの認知特性上,優先順位をつけるのが苦手で段取りよく進めるのが困難であるため,明確でわかりやすい支援が必要である.わかりやすさに焦点を当てた関わりが必須で,ボードに書きながら一緒に活動を進めていく事が有効であった.本事例への関わりを通して同疾患患者からのニーズも出てきており,実際に機器を試せる環境が重要であると再認識できたため,複数台のデモ機を準備した.これから余暇の有効利用への様々な需要が拡大していくと思われるため,環境整備を急ぎたい.
当院はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下.DMD)患者をはじめとする小児期発症の難病支援をおこなっている.DMDは進行性の筋変性疾患であり,四肢の筋力低下のみならず,呼吸・循環などにも影響を及ぼす全身性疾患である.近年では,非侵襲的陽圧換気療法(以下.NPPV)の普及により30歳を超えての延命が可能となっている.加齢と伴に重度化する運動機能障害の中で,患者らがパソコンなどの活動を維持するためには少ない身体の動きで機器操作が行えるよう支援機器の適合が重要であるが,当院ではまだまだ整備が遅れている現状がある.今回,スマートフォン(以下.スマホ)使用時間を延ばしたいと希望するDMD患者に対し,テレビやスマホなど複数の機器を1つの入力スイッチで操作できる環境制御装置を当院で初めて導入し,余暇活動の拡大に至ったため報告する.
【症例】
当院入院中で20代のDMD患者.終日NPPV使用,機能障害分類ステージⅧ,上肢機能障害度分類stage9.ADLは全介助で,昼食時のみ車いす乗車されているが,その他多くの時間をベッド臥床で過ごす.自閉症スペクトラムの診断あり,初めてのことに取り組みづらい,環境の変化に弱い特性を認めるが,知的障害はない.余暇は週に3日,できiPad(Dekimause社)を午前中の2時間程度使用.その他の時間はテレビを視聴して過ごされている.介入当初は特に困りごとはないと話されていた.
【経過】
本人の作業ニーズ把握のため COPM を用いた.スマホ使用時間延長を希望されていたが,遂行度5,満足度5と現状でもそれほど低い状態ではなかった.余暇活動はテレビリモコンとスマホそれぞれの機器操作は同じ入力スイッチで行っていたが,連動していないため,切り替えの都度介助者がスイッチを繋ぎ変える必要があるなどセッティングの工程が複雑で時間がかかり,介助者の負担が大きい状態だった.そのため2つの機器操作を患者本人が好きなタイミングで切り替えられるように簡易ECS(KIKIROOM社)の導入を行ったこと,病棟スタッフに向けて介助方法の指導を行ったことで,これまで機器のセッティングに5分以上要していのが1分程度で済むようになり,活動時間も起床から就寝前までいつでも作業が可能となった.導入当初は生活リズムの変化などに不安を訴えることもあったが,試行開始日と開始から2か月後との比較で遂行度 5→8,満足度5→10 と上昇が認められ,「お母さんとリアルタイムでLINEができるようになった,テレビの録画予約も自分でできる」と話していた.
【考察】
病状が徐々に進行していく中,環境制御装置を活用し複数の機器操作が可能となった事で,患者のコミュニケーション手段を制限なく持てることとなり,患者は家族との連絡を随時取れる事になった.当初は機器導入による生活リズムの変化に対する不安があり,否定的・受動的であったが,実際に試せる環境・できた体験を積み重ねる事で患者のアドヒアランス向上に繋がった.さらに病棟との連携を行い,セッティングに対する情報共有を進めた事で介助量の軽減に至った.DMDの認知特性上,優先順位をつけるのが苦手で段取りよく進めるのが困難であるため,明確でわかりやすい支援が必要である.わかりやすさに焦点を当てた関わりが必須で,ボードに書きながら一緒に活動を進めていく事が有効であった.本事例への関わりを通して同疾患患者からのニーズも出てきており,実際に機器を試せる環境が重要であると再認識できたため,複数台のデモ機を準備した.これから余暇の有効利用への様々な需要が拡大していくと思われるため,環境整備を急ぎたい.