第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

援助機器

[PL-3] ポスター:援助機器 3

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PL-3-2] 地域在住高齢者のICT活用における世代間交流の可能性について

宮寺 亮輔1, 村山 明彦2, 山口 智晴1 (1.群馬医療福祉大学リハビリテーション学部作業療法専攻, 2.群馬医療福祉大学リハビリテーション学部理学療法専攻)

[はじめに] 高齢者のICT活用はコミュニケーションの増加や居場所と役割の形成などに繋がり,高齢者の意欲と生活満足度を向上する効果があると期待されている.地域在住高齢者に効果的なICT活用の普及には,高齢者と地域社会とが相互にメリットを得られる支援の循環が有効(総務省,2022)とされているが,ICT活用における世代間交流に関する実践報告は少ない.我々は2021年度より地域在住高齢者を対象にICT活用プログラムを実施し,ICT活用が機器に対する不安感や生活満足度に及ぼす影響を明らかにした(Miyadera, 2022).本研究では,高齢者のICT活用プログラムに大学生が関与することの効果を探索的に調査することを目的とする.[対象及び方法]対象は,研究の主旨を理解し同意を得た,ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が利用できる通信機器を持つ理学療法学生または作業療法学生22名(以下,学生)であった.なお本研究は,群馬医療福祉大学倫理審査の承認を得て実施した(承認番号21A-26).本研究のICT活用プログラムは,群馬県内で日常の通信手段としてSNS(LINE®など)を利用している65歳以上の地域在住高齢者(以下,参加者)を対象に,興味・関心に基づいて作成されたSNSグループ内で余暇活動に関する情報交換を一定期間行い,その前後で高齢者の意欲や生活に関連した調査を実施し,SNSを活用した社会的交流が高齢者の意欲や生活満足度に与える効果を検証するものであった.学生はLINEグループ(参加者3~4名)に2~3名で参加し,参加者が投稿する疑問や記事に適宜反応(投稿)し,ビデオ通話を利用したレクリエーションも企画・実行した.各学生の投稿頻度を観察した.学生へのアンケート調査は,プログラム終了時にGoogleフォームで依頼した.調査項目は,わが国の高齢者の通信利用動向を把握しているか(以下,ICT状況認識)の確認として60歳以上のモバイル機器の保有状況,SNSの利用状況,インターネットの利用目的,デジタルを利用しない理由などについて回答を得た.また,参加者との交流に関することとして,①機器の操作能力の程度,②交流の難易度,③プログラムのニーズに関して回答も得た.さらに,スタッフとしての関わりとして,④運営の負担感,⑤今後の協力継続の希望,⑥成長の程度に関して回答も得た.ICT状況認識は正解率を算出し,参加者との交流の①~③,スタッフとしての関わりの④~⑥は評定尺度法(①~⑤は5段階評価,⑥は3段階評価)とし,評定値は単純集計し,③と⑥は評定した理由も自由記述で得た.各質問項目と学生のICT状況認識や投稿頻度の関係には,Shapiro-Wilkの正規性の検定を行った後,Spearmanの順位相関係数を用いた.統計学的解析ソフトはR ver. 4.2.2を使用し,統計処理における危険率5%とした.[結果]アンケートは15名より回答を得た. 学生のICT関連の測定値{中央値(四分位範囲)}は,ICT状況認識は33.3(27.1-33.3)%,投稿頻度は4.0(2.2-6.5)回であった.投稿頻度と各質問の測定値に相関関係は認められなかった.ICT状況認識との相関分析では,③プログラムのニーズ(r=-0.584,p=0.0285),⑤今後の協力継続の希望(r=-0.584,p=0.0283)で中等度の負の相関関係を示した.評定理由として,③は「交流機会の増加」,「生活満足度の向上」等が挙がった.[考察] 我が国のICT活用の実態と学生の状況認識には乖離があってもICT活用の普及に意欲や関心を持つ可能性があること,その意欲や関心を把握する指標に投稿頻度は不向きであることが確認できた.本研究結果は,大学生が高齢者のICT活用に効果的に関与する仕組みを作る上での基礎資料となり得る.