第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

援助機器

[PL-3] ポスター:援助機器 3

2023年11月10日(金) 17:00 〜 18:00 ポスター会場 (展示棟)

[PL-3-4] ハンドル形電動車いす支援に関するアンケート調査結果

本田 優介, 城野 友哉, 松井 佑介, 上田 浩貴 (社会福祉法人金沢市社会福祉協議会金沢福祉用具情報プラザ)

【はじめに】ハンドル形電動車いす(以下,電動カート)は,自動車運転免許の返納後や,歩行能力の低下した高齢者の移動手段として知られているが,運転免許の自主返納数の増加に比べ,電動カートの出荷台数は微増である.支援者には電動カート支援に対する不安があるのではないかと仮説をたて,令和2年6月に某市地域包括支援センターの相談員(以下,相談員)91名を対象に電動カートのニーズ調査を行った.その結果,相談員の62%が電動カートを「勧めたくない」と答え,相談員の96%が「導入評価の難しさ」や「事故リスク」などにより,電動カート支援に不安があると回答した.一方で相談員の73%が「不安が解消すれば勧めたい」と回答した.この結果を踏まえ,心身機能や生活,環境を包括的に評価できるリハビリテーション専門職(以下,リハ職)が電動カート支援に介入できれば相談員の不安を軽減できると考えた.しかし現状では,電動カート支援に携わるリハ職は少ないと報告されている.今回,リハ職も導入相談や評価依頼があった場合に不安を感じるのではないかと仮説を立て,リハ職の電動カート支援の経験と認識を調査し,どのような事業の実施が電動カート支援の円滑化に繋がるかを考察するべくアンケート調査を行った.
【方法】実施期間:令和4年11~12月.対象:石川県内在勤の作業療法士(以下,OT)・理学療法士(以下,PT).調査方法:選択と記述によるアンケート方式(Googleフォームを利用したオンラインアンケート).本調査は,研究目的,方法,参加は自由意志で拒否による不利益がないことを文書にて説明を行い同意を得て実施した.また,本調査は無記名とし本人が特定されないよう配慮した.
【結果と考察】回収率10.1%(205/2034名).電動カート支援の経験について「なし」が67%,「あり」が33%であった.電動カートの推奨については「勧めたい」が74%,「勧めたくない」が26%であった.勧めたい理由は「活動範囲の拡大・QOL向上」が65%,その他に「移動手段の選択肢拡大」,「自動車の代替手段」と続いた.勧めたくない理由は「事故リスク」が47%,その他に「使用環境の問題」,「知識・経験不足」と続いた.電動カートの推奨について経験の有無別で分析した結果,「経験なし」で勧めたい人が67%,「経験あり」で勧めたい人が87%であった.この結果から,電動カート支援の経験の有無が電動カートの推奨に関連してくる可能性が示唆された.一方で支援者から導入相談や評価依頼があった場合,「不安を感じる」が66%,「どちらともいえない」が25%,「不安を感じない」が9%であった.不安の要因として,「経験・知識不足」が75%以上,「事故リスク」が66%,「実車・心身機能の評価方法がわからない」で50~60%であった.また,リハ職が電動カートの導入相談や評価に関わるために取得したい情報として,「制度や保険」,「実車評価方法」が75%以上,次いで「心身機能評価方法」や「障害別の注意点」が約60%であった.これらの結果から,経験や知識不足を補える情報提供や勉強会の実施が電動カート支援に対するリハ職の不安軽減に繋がると考える.
【今後の展望】当館は福祉機器の展示機関であり,電動カートの製造・販売メーカーとも協力関係にある.メーカーと協力し,制度や保険の情報提供や,実車評価を含む勉強会を行うことで支援者が求める情報を発信していきたい.その結果が支援への不安軽減や高齢者の移動手段の選択肢拡大に繋がると考える.福祉機器に携わる機関として,必要な人に必要な福祉機器が届くように支援していきたい.