[PL-4-1] 在宅支援におけるスマートデバイスを利用した支援の実態
【はじめに】支援機器は,補装具や日常生活用具の範囲にとらわれず,障害者の生活を支援する幅広い範囲を包含する機器の総称である.近年,情報通信技術の発展や安価な生産技術の実用化に伴い,障害者が自身の生活に用いる機器の範囲が広がっている.新たな技術開発の成果を障害者が用いる支援機器として導入するための方法や課題を明らかにするための研究の一環として,本研究は障害者の在宅支援においてスマートデバイス(パソコンやタブレット,スマートスピーカー,スマートフォンなど)を利用した支援の実態把握を目的に実施した.
【方法】対象者は機縁募集し,支援機器に関連した業務経験が豊富な作業療法士(4名),理学療法士(3名),言語聴覚士(1名),ソーシャルワーカー(1名)の4職種9名とした.対面またはオンライン会議システムを利用し,1~2時間程度の半構造的面接を実施した.インタビュー内容は,一般的なコミュニケーション支援の実態,スマートデバイスの利用実態,それらに伴う付属品,知識・技能の習得過程とした.インタビューはICレコーダーまたはオンライン会議システムの機能を利用して録音した.録音データから逐語録を作成し,内容をカテゴリ化し,テーマに関する発言内容の整理と核となる概念を抽出した.本研究は倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】対象者9名中4名(作業療法士3名・ソーシャルワーカー)は支給判定を担う施設に勤務し,他5名は訪問リハビリテーションに従事していた.
質的分析結果は「ニーズの個別化とニーズ実現手段の多様化」「コミュニケーション支援の実際」「スマートデバイス支援の実際」の3つの核となる概念に集約された.
1)ニーズの個別化とニーズ実現手段の多様化:一般化したスマートデバイスの利用経験の延長として,1対1のコミュニケーションからSNSなどを通した社会とのつながりやコミュニケーションに留まらない付加価値を求めていた.スマートデバイスのアクセシビリティ機能の向上により,様々な選択肢が増え,個別のニーズや評価と照らし合わせて選定する必要性がより高くなった.
2)コミュニケーション支援の実際:十分なニーズを把握し,評価・選定した上で利用者のタイミングに合わせて意思伝達装置導入等の支援をしていた.合わせて,入力方法や設置位置等の付属品・周囲の環境も支援していた.意思伝達装置の導入は制度内に限定された支援となり,導入までの時間を要することや短期間の利用ができないといった問題があった.
3)スマートデバイス支援の実際:パソコン・タブレットでの意思伝達装置の代替としての使用,スマートスピーカーを利用した環境制御装置の代替としての使用等がみられた.支援は,自宅環境や家族の協力状況,専門職の職場環境・知識等に左右された.スマートデバイスによる支援は制度内には収まらず,利用後のフォローアップができないといった問題があった.
【考察】本研究により,コミュニケーションに関連するニーズが個別化するとともに実現手段が多様化していることが明らかになった.スマートデバイスは,障害者の生活に一般的な機器として入り込み,さらには従来の福祉用具の代替として利用され,支援機器としての役割も果たしていることが示された.その一方で,制度や支援体制は従来のままであり,ニーズに合わせた支援のためには,本人・家族の知識・経済状況・自宅環境や,専門職の知識・技術に左右されている実態が明らかになったと考える.
本研究は,厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究,21GC2003)の助成を受けた.本研究に関連して,申告すべき利益相反(COI)はない.
【方法】対象者は機縁募集し,支援機器に関連した業務経験が豊富な作業療法士(4名),理学療法士(3名),言語聴覚士(1名),ソーシャルワーカー(1名)の4職種9名とした.対面またはオンライン会議システムを利用し,1~2時間程度の半構造的面接を実施した.インタビュー内容は,一般的なコミュニケーション支援の実態,スマートデバイスの利用実態,それらに伴う付属品,知識・技能の習得過程とした.インタビューはICレコーダーまたはオンライン会議システムの機能を利用して録音した.録音データから逐語録を作成し,内容をカテゴリ化し,テーマに関する発言内容の整理と核となる概念を抽出した.本研究は倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】対象者9名中4名(作業療法士3名・ソーシャルワーカー)は支給判定を担う施設に勤務し,他5名は訪問リハビリテーションに従事していた.
質的分析結果は「ニーズの個別化とニーズ実現手段の多様化」「コミュニケーション支援の実際」「スマートデバイス支援の実際」の3つの核となる概念に集約された.
1)ニーズの個別化とニーズ実現手段の多様化:一般化したスマートデバイスの利用経験の延長として,1対1のコミュニケーションからSNSなどを通した社会とのつながりやコミュニケーションに留まらない付加価値を求めていた.スマートデバイスのアクセシビリティ機能の向上により,様々な選択肢が増え,個別のニーズや評価と照らし合わせて選定する必要性がより高くなった.
2)コミュニケーション支援の実際:十分なニーズを把握し,評価・選定した上で利用者のタイミングに合わせて意思伝達装置導入等の支援をしていた.合わせて,入力方法や設置位置等の付属品・周囲の環境も支援していた.意思伝達装置の導入は制度内に限定された支援となり,導入までの時間を要することや短期間の利用ができないといった問題があった.
3)スマートデバイス支援の実際:パソコン・タブレットでの意思伝達装置の代替としての使用,スマートスピーカーを利用した環境制御装置の代替としての使用等がみられた.支援は,自宅環境や家族の協力状況,専門職の職場環境・知識等に左右された.スマートデバイスによる支援は制度内には収まらず,利用後のフォローアップができないといった問題があった.
【考察】本研究により,コミュニケーションに関連するニーズが個別化するとともに実現手段が多様化していることが明らかになった.スマートデバイスは,障害者の生活に一般的な機器として入り込み,さらには従来の福祉用具の代替として利用され,支援機器としての役割も果たしていることが示された.その一方で,制度や支援体制は従来のままであり,ニーズに合わせた支援のためには,本人・家族の知識・経済状況・自宅環境や,専門職の知識・技術に左右されている実態が明らかになったと考える.
本研究は,厚生労働行政推進調査事業費補助金(障害者政策総合研究,21GC2003)の助成を受けた.本研究に関連して,申告すべき利益相反(COI)はない.