第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

援助機器

[PL-4] ポスター:援助機器 4

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PL-4-3] 当院におけるアームサポート「MOMOプライム」を使用した複数事例の臨床経過

小澤 弘幸, 廣瀬 陽夏, 原川 りな, 小林 健太郎 (国家公務員共済組合連合会 九段坂病院リハビリテーション科)

【はじめに】アームサポートであるMOMOは,上肢の水平方向の動作や肘屈曲による上方向へのリーチをサポートできる装具であり,近年,MOMOを用いた訓練に関する報告が散見される(松岡, 2021).一方,肩屈曲や外転運動のサポートも付加されたMOMOプライムがあるが,MOMOプライムを用いた訓練経過に関する報告は見当たらない.そこで,当院においてMOMOプライムを導入した事例とその経過をまとめたので,報告する.なお,対象者からは発表に関する同意を得ている.
【方法】当院にMOMOプライムを導入した2019年9月から2023年1月までにおいて,作業療法が処方された患者のうち,MOMOプライムを訓練に導入した患者を抽出した.抽出した患者の臨床経過をカルテにて後方視的に調査した.
【結果】対象患者861名のうち,該当者は5名だった.内訳はギランバレー症候群(GBS)が2名,頚椎症性脊髄症(CSM)と頚椎症性筋萎縮症(CSA),脳出血(CVA)が1名ずつで,全例食事動作の獲得を希望していた,CSM事例は使用時の不快感と困難感が強く,CVA事例は自力での訓練を希望されたため導入しなかった.
症例1:50代,男性,GBS.当院回復期リハビリテーション病棟(当院)へ入院となった140病日のMMTは,上肢近位部2,遠位部2~3,中等度の肩関節拘縮と軽度の上肢近位部の筋萎縮があり,上肢の自動挙上角度は45°だった.168病日より右上肢にMOMO,左上肢にMOMOプライム,両側手関節装具を使用して食事訓練を開始した.172病日に1食,198日病日に3食自力摂取が可能となった.その際のMMTは上肢近位部3,遠位部4,手関節伸展筋のみ2,上肢の自動挙上角度は130°だった.
症例2:50代,男性.GBS.当院に入院となった302病日のMMTは,三角筋1,上腕二頭筋1,上腕三頭筋3,遠位部0~1,両上肢の筋萎縮は重度であり,上肢挙上はほぼ不可能だった.重度の肩・肘関節の関節拘縮があったが,感覚障害はなかった.386病日より両側MOMOプライムと手関節装具,自助具を併用して食事訓練を開始した.口元や食器へのリーチ動作は可能なものの筋疲労が著名であり,開始当初は数口しか自力摂取できなかった.485病日に1食,589病日に3食自力摂取が可能となったが,疲労の程度により1食分は介助を要する日もあった.その際の MMTは三角筋5,上腕二頭筋2,上腕三頭筋4,遠位部1〜2,上肢の自動挙上角度は120°/140°だった.
症例3:70代,男性. CSA.左上肢の挙上困難を自覚後,2年経過してから当院にてC4-6頚椎前方固定術を受けた.術後,右上肢挙上困難のため再手術を受けたが,上肢麻痺が進行し,MMTは三角筋 1/2, 上腕二頭筋 1/2 ,上腕三頭筋 4/4,その他4〜5となった.肩・肘周囲の著名な筋萎縮を認め,上肢挙上はほぼ不可能だったが,関節拘縮はなかった.痺れと感覚鈍麻は軽度だった.術後89日よりMOMOプライムを用いた食事訓練を開始した.初期は数口のみ自力摂取が可能なものの易疲労性が顕著であり,術後143日に1食,術後171日に3食自力摂取が可能となった.その際のMMTは三角筋 1/2,上腕二頭筋 1/2 ,上腕三頭筋 4/5,遠位部4〜5,上肢の自動挙上角度は20°/45°だった.
【考察】当院におけるMOMOプライムの導入事例は,食事動作の獲得を希望するGBSとCSAによる両側上肢の挙上が困難な事例だった.全例,食事動作は自立したが,症例2・3は筋萎縮が著名であり,運動機能の回復が遷延し,食事動作の自立まで長い期間を要した.両側上肢の挙上が困難な事例におけるMOMOプライムを用いた食事動作の獲得には,疾患や重症度別の回復過程を考慮した長期的な訓練が必要になる可能性が示唆された.