[PL-4-4] 指腹つまみを容易にする菜箸自助具の開発により天ぷら作業が可能になった事例
【緒言】
勤務先のそば屋の裁断機に右中指・環指を挟み，末梢部の完全切断を受傷した事例を外来リハで担当した．事例の目標は「天ぷらに花を咲かせ，お客様に提供する」であった．約3ヶ月のOT期間中，断端部痛と手指拘縮により思うような機能改善には至らなかった．拇指・示指の残存機能を活かし，指腹つまみで操作できる自助具菜箸を製作した．結果，天ぷら作業が可能となり復職に至った．役割の再獲得を得られたため，その過程について報告する．本報告に関して，事例の同意を得ている．
【事例紹介】
60歳代女性．右利き．独居．そば屋開店時から約10年勤務．症状は，断端部中心の知覚過敏と手指拘縮で，巧緻性障害を生じていた．
【OT初期評価】病日34日
外来リハ初回時，目標は，1. 「復職．天ぷらに花を咲かせること．中途半端なものは提供できない」2. 「年齢から新しい職場は考え難い」だった．機能評価は，NRS：10/10(断端部と周辺)．他動的ROM：右中指・環指，MP屈曲30°～40°，PIP屈曲50°，DIP屈曲10°，手指機能：各指のつまみ，把持困難．握力：右0kg，左19.6kg．FIM：126点(運動項目91点．認知項目35点)・BI：100点．ADL遂行は主に左上肢．
【OT経過】
介入初期，断端部と周辺に知覚過敏の痛み，手指拘縮強い．開始1ヶ月後，拇指・示指の拘縮は改善し，指尖つまみ可能となる．中指・環指の知覚過敏は不変．拘縮残存．2ヶ月後，指腹つまみは円滑となり，日常生活で右上肢の参加が増える．３指つまみや把持の肢位は可能だが，知覚過敏で実用的な物品操作困難．3ヶ月後：知覚過敏・拘縮残存．既製品の介助箸は断端部の接触や多関節運動での操作困難．残存機能の指腹つまみで容易に操作できる自助具菜箸を製作し，復職へと繋がった．
【OT最終評価】病日124日目
痛み：NRS：9～10/10．他動的ROM：右中指・環指.MP屈曲90°.PIP屈曲70°.DIP屈曲10°．手指機能：拇指・示指の指腹つまみ良好．中指・環指に知覚過敏と拘縮残存．把持動作は断端部の痛みで非実用的．巧緻性障害残存．右握力：0kg．左握力．21.4kg．FIM・BI：初期と同様．指腹つまみで右上肢のADL参加が可能．
【天ぷらを揚げる行程・作業分析】
行程１：指腹つまみで具材に天ぷら衣をつけ，油鍋に入れる．行程２：箸でつまみ，具材を泳がす．行程３：箸先に天ぷら衣をつけ，具材に花を咲かす．行程４．天ぷらを取り出す．作業分析は行程1で，指腹つまみ．行程2で，箸の開閉．行程3で，箸先の天ぷら衣を具材につける反復．行程4で，箸の開閉．
【考察および結語】
本事例は，残存機能に着目し，自助具の製作・適応により社会復帰に至った．製作した自助具は100円ショップのボトルオープナーに横穴をあけ，結束バンドで菜箸を固定する単純な構造である．オープナーの形状は，示指・拇指の末節部～中節部と接触面が広く，つまみが容易である．つまみ後の指の開きで，オープナーの性質が，箸を開く機能を代償した．断端部の接触も無く，天ぷらに花を咲かす行程1～4の一連の作業が遂行出来た．機能障害があっても残存機能を見極め，自助具を製作したOT実践が，能力を引き出し，役割の再獲得や自己効力感の向上などに繋がると実感できた．
勤務先のそば屋の裁断機に右中指・環指を挟み，末梢部の完全切断を受傷した事例を外来リハで担当した．事例の目標は「天ぷらに花を咲かせ，お客様に提供する」であった．約3ヶ月のOT期間中，断端部痛と手指拘縮により思うような機能改善には至らなかった．拇指・示指の残存機能を活かし，指腹つまみで操作できる自助具菜箸を製作した．結果，天ぷら作業が可能となり復職に至った．役割の再獲得を得られたため，その過程について報告する．本報告に関して，事例の同意を得ている．
【事例紹介】
60歳代女性．右利き．独居．そば屋開店時から約10年勤務．症状は，断端部中心の知覚過敏と手指拘縮で，巧緻性障害を生じていた．
【OT初期評価】病日34日
外来リハ初回時，目標は，1. 「復職．天ぷらに花を咲かせること．中途半端なものは提供できない」2. 「年齢から新しい職場は考え難い」だった．機能評価は，NRS：10/10(断端部と周辺)．他動的ROM：右中指・環指，MP屈曲30°～40°，PIP屈曲50°，DIP屈曲10°，手指機能：各指のつまみ，把持困難．握力：右0kg，左19.6kg．FIM：126点(運動項目91点．認知項目35点)・BI：100点．ADL遂行は主に左上肢．
【OT経過】
介入初期，断端部と周辺に知覚過敏の痛み，手指拘縮強い．開始1ヶ月後，拇指・示指の拘縮は改善し，指尖つまみ可能となる．中指・環指の知覚過敏は不変．拘縮残存．2ヶ月後，指腹つまみは円滑となり，日常生活で右上肢の参加が増える．３指つまみや把持の肢位は可能だが，知覚過敏で実用的な物品操作困難．3ヶ月後：知覚過敏・拘縮残存．既製品の介助箸は断端部の接触や多関節運動での操作困難．残存機能の指腹つまみで容易に操作できる自助具菜箸を製作し，復職へと繋がった．
【OT最終評価】病日124日目
痛み：NRS：9～10/10．他動的ROM：右中指・環指.MP屈曲90°.PIP屈曲70°.DIP屈曲10°．手指機能：拇指・示指の指腹つまみ良好．中指・環指に知覚過敏と拘縮残存．把持動作は断端部の痛みで非実用的．巧緻性障害残存．右握力：0kg．左握力．21.4kg．FIM・BI：初期と同様．指腹つまみで右上肢のADL参加が可能．
【天ぷらを揚げる行程・作業分析】
行程１：指腹つまみで具材に天ぷら衣をつけ，油鍋に入れる．行程２：箸でつまみ，具材を泳がす．行程３：箸先に天ぷら衣をつけ，具材に花を咲かす．行程４．天ぷらを取り出す．作業分析は行程1で，指腹つまみ．行程2で，箸の開閉．行程3で，箸先の天ぷら衣を具材につける反復．行程4で，箸の開閉．
【考察および結語】
本事例は，残存機能に着目し，自助具の製作・適応により社会復帰に至った．製作した自助具は100円ショップのボトルオープナーに横穴をあけ，結束バンドで菜箸を固定する単純な構造である．オープナーの形状は，示指・拇指の末節部～中節部と接触面が広く，つまみが容易である．つまみ後の指の開きで，オープナーの性質が，箸を開く機能を代償した．断端部の接触も無く，天ぷらに花を咲かす行程1～4の一連の作業が遂行出来た．機能障害があっても残存機能を見極め，自助具を製作したOT実践が，能力を引き出し，役割の再獲得や自己効力感の向上などに繋がると実感できた．