[PM-3-2] 前腕切断に対し生活行為向上マネジメントを用いて職場復帰を果たした筋電義手導入の1例
【はじめに】生活行為向上マネジメント(以下MTDLP)は,症例の希望に沿った目標を立て支援するという思考過程を見える化するツールである.今回,前腕切断による焦り混乱する気持ちに対し,MTDLPを介して自身の仕事内容に合意目標を立て早期より筋電義手を作製し,工場オペレーターへ復帰した症例を経験したので報告する.尚,症例には事前に書面にて発表の同意を得ている.
【症 例】症例は40歳代男性.職業は工場オペレーターで機械誤作動により右前腕を巻き込まれ受傷,同日に全層植皮術施行した.受傷3週目に作業療法処方となる.右前腕切断(断端長11.3cm,44%短断端),切断肢の皮膚生着良好,幻肢は幻肢投影法による分類で手部型,幻肢痛は認めなかった.本人,医師,義肢装具士,OTによるカンファレンスにより能動義手は作製せず筋電義手を導入する方針となった.受傷3か月目よりソケット作製の工程と筋収縮訓練を同時に進行させた.ソケット完成から筋電義手での基本動作訓練を実施,受傷4か月目から仮筋電義手で応用的な動作の訓練と実践を行った.受傷8か月で本筋電義手導入となった.
【作業療法評価】ROMは右肘関節-5°~95°,MMTは右肩と右肘とも[5],前腕は回外位で固定され運動は困難.FIM 126点,患者立脚型で日常生活における困難さに焦点を当てた評価である上肢障害評価票(日本語版DASH)で機能障害/症状52点,スポーツ/芸術56点,仕事56点であった.
【介入方針】当初は重度外傷に対し焦り混乱する様子が散見され,職場への復帰という漠然とした目標があったが,具体的に何が出来ればいいのかというイメージが持てていなかった.OTとMTDLPを介しての状況分析を行い,仕事内容を整理して合意目標を「工場オペレーターへの復帰」とし具体的に「両手でコードの連結作業ができる」, 「長柄スクイージーでの水切り作業ができる」 ことを設定し仕事や生活で症例に意味ある作業を訓練に取り入れた.合意目標設定後 4か月目に合意目標の自己点検と評価を計画した.
【訓練経過】OTプログラムとしては,受傷4か月目の仮電動義手導入までの期間は,1)ROM維持拡大と筋力強化,2)利き手交換,3)片手動作では自助具等の検討,4)断端形成促進と断端管理を実施した.筋電義手導入の決定からは,義手ソケット作製と筋電義手プログラムとして,電極の位置確認や感度調整,Myo Boy®(Otto Bock社製,ドイツ)による筋収縮訓練を並行して行った.受傷4か月目からは,仮電動義手でのハンド開閉操作や物品操作など両手動作や協調性獲得の応用動作の訓練をした.この頃に合意目標の途中点検を実施し,新たに「油圧ショベルの操作ができる」,「マニュアル車の運転ができる」という目標が追加された.本電動義手は受傷8か月目で導入された.
【結 果】現在の仕事評価では,車を運転して通勤し,勤務時間内は常に電動義手を装着している.右肘関節ROM 0°~125°,DASHでは機能障害/症状16点,スポーツ/芸術31点,仕事13点と大幅に満足度が向上した.
【考 察】本症例は,心理的な落ち込みや将来への不安や焦りを抱えていたと推察した.仕事復帰を見据え,症例において意味のある活動を訓練に取り入れた事に大きな意義があり,DASHの評価からも満足度が向上していた.また早期より筋電義手が導入できたことは,義手の必要性認識向上や使用率向上に寄与したと考えられる.これらよりMTDLPは地域包括ケアに貢献するというイメージもあるが,急性期の整形疾患という症例においても生活行為を向上させながら社会参加・活動の向上にも役立つツールであり,今後も積極的に使用したいと考えた.
【症 例】症例は40歳代男性.職業は工場オペレーターで機械誤作動により右前腕を巻き込まれ受傷,同日に全層植皮術施行した.受傷3週目に作業療法処方となる.右前腕切断(断端長11.3cm,44%短断端),切断肢の皮膚生着良好,幻肢は幻肢投影法による分類で手部型,幻肢痛は認めなかった.本人,医師,義肢装具士,OTによるカンファレンスにより能動義手は作製せず筋電義手を導入する方針となった.受傷3か月目よりソケット作製の工程と筋収縮訓練を同時に進行させた.ソケット完成から筋電義手での基本動作訓練を実施,受傷4か月目から仮筋電義手で応用的な動作の訓練と実践を行った.受傷8か月で本筋電義手導入となった.
【作業療法評価】ROMは右肘関節-5°~95°,MMTは右肩と右肘とも[5],前腕は回外位で固定され運動は困難.FIM 126点,患者立脚型で日常生活における困難さに焦点を当てた評価である上肢障害評価票(日本語版DASH)で機能障害/症状52点,スポーツ/芸術56点,仕事56点であった.
【介入方針】当初は重度外傷に対し焦り混乱する様子が散見され,職場への復帰という漠然とした目標があったが,具体的に何が出来ればいいのかというイメージが持てていなかった.OTとMTDLPを介しての状況分析を行い,仕事内容を整理して合意目標を「工場オペレーターへの復帰」とし具体的に「両手でコードの連結作業ができる」, 「長柄スクイージーでの水切り作業ができる」 ことを設定し仕事や生活で症例に意味ある作業を訓練に取り入れた.合意目標設定後 4か月目に合意目標の自己点検と評価を計画した.
【訓練経過】OTプログラムとしては,受傷4か月目の仮電動義手導入までの期間は,1)ROM維持拡大と筋力強化,2)利き手交換,3)片手動作では自助具等の検討,4)断端形成促進と断端管理を実施した.筋電義手導入の決定からは,義手ソケット作製と筋電義手プログラムとして,電極の位置確認や感度調整,Myo Boy®(Otto Bock社製,ドイツ)による筋収縮訓練を並行して行った.受傷4か月目からは,仮電動義手でのハンド開閉操作や物品操作など両手動作や協調性獲得の応用動作の訓練をした.この頃に合意目標の途中点検を実施し,新たに「油圧ショベルの操作ができる」,「マニュアル車の運転ができる」という目標が追加された.本電動義手は受傷8か月目で導入された.
【結 果】現在の仕事評価では,車を運転して通勤し,勤務時間内は常に電動義手を装着している.右肘関節ROM 0°~125°,DASHでは機能障害/症状16点,スポーツ/芸術31点,仕事13点と大幅に満足度が向上した.
【考 察】本症例は,心理的な落ち込みや将来への不安や焦りを抱えていたと推察した.仕事復帰を見据え,症例において意味のある活動を訓練に取り入れた事に大きな意義があり,DASHの評価からも満足度が向上していた.また早期より筋電義手が導入できたことは,義手の必要性認識向上や使用率向上に寄与したと考えられる.これらよりMTDLPは地域包括ケアに貢献するというイメージもあるが,急性期の整形疾患という症例においても生活行為を向上させながら社会参加・活動の向上にも役立つツールであり,今後も積極的に使用したいと考えた.