[PM-3-4] 実動作練習によって復職への自信を深めた一事例
【はじめに】生活行為向上マネジメント以下(MTDLP)は国民にわかりやすく地域包括ケアに貢献できる作業療法の形となるようOT協会により開発された.今回軽度の右不全麻痺を呈した事例に対して急性期よりMTDLPを用いて復職支援を行った.感染症対策による活動制限下でも可能な実動作を中心に介入を行い,事例の実行度と満足度の向上,復職への不安の解消に貢献できたため報告する.
【倫理的配慮/COI】本報告は事例から書面にて同意を得ており,COI関係にある企業等はない.
【症例紹介】A氏,60代男性,右利き.病前は和食店を妻と二人で経営,ADL,IADL自立.性格は真面目で努力家.妻と息子と同居. X年Y月Z日早朝に右手足の動かしづらさと呂律困難を自覚し当院に救急搬送.脳梗塞の診断にてt-PA施行.
【作業療法評価】Z日作業療法開始.意識清明.軽度の右不全麻痺(SIAS-M:4-2,5-5-5,MMT:右上肢5,右下肢4.握力:右28.5kg,左19.0kg.STEF:右85点,左93点)と構音障害を認めた.認知機能ほぼ問題無し(HDS-R:26/30点,FAB:12/18点).食事は右手で可能だが拙劣さあり.歩行車歩行見守り,更衣・入浴軽介助,階段昇降未実施でFIM:98/126点(運動65).復職に関する動作では安全な包丁操作は可能だが拙劣さがあることと書字や構音の拙さに不満があった.Z+3日の生活行為の意向聴取では調理師への復職と和食店の再開が挙げられたが,右手指の巧緻性低下等により実現に不安があった.A氏との相談の結果,入院中に復職準備を整えるとし,右手で箸を使用した食事と独歩でのADL自立,包丁や調理箸の操作性向上,書字・会話能力の改善を合意目標とした.それぞれの実行度は3~4,満足度は全て3であったが,これらは訓練にて改善・向上が見込めた.
【生活行為向上プラン】基本プログラムは動作の安定性と耐久性向上を目的に右手指や下肢等の機能訓練と書字・構音訓練を,応用的プログラムは右手でのADL訓練,屋内歩行訓練,学習療法を,社会適応的プログラムは立位での調理訓練,移動の応用動作訓練を病院で実施し,進捗状況は適宜チームカンファレンス等にて把握.退院後に店舗での実動作訓練を訪問リハビリテーションで行うこととした.
【経過】Z+7日に目標プランをチームで共有.訓練で獲得したADLはZ+16日から回復期リハビリテーション病棟で実践.Z+18日から包丁操作等の実動作を立位で実施.終盤は巧緻性がより高く職場復帰に必要な作業へと発展させた.移動動作は能力向上に合わせ段階的に進めていった.入院中に要介護2の認定も取得.Z+2M,店舗で復職のための訓練を行う準備をして退院.必要な家屋改修は退院後に検討することになった.
【結果】右手での包丁・箸・筆記用具の操作性は向上しADLも自立.それぞれの生活行為の実行度,満足度は改善し復職への自信が深まった.
【考察】A氏は麻痺が軽度で認知面も保たれていたため,急性期から実動作訓練も実施しており,復職もいずれは可能と考えられた.しかしA氏自身は右手の巧緻性低下や入院中調理が行えないことに不安があった.また当院の調理環境の不備や感染症対策下の活動制限により,調理訓練の進め方も課題となった.そこでA氏と練習すべき調理活動を検討し,大根の桂剥きや千切りなどの十分実践的で活動制限下でも可能な訓練を導入.これらは修行時代に練習した動作で,道具と対象物の位置関係や力の微調節が必要な巧緻動作でもあるため,反復訓練が効果的だったと考える.MTDLPを用いて事例にとって意味のある実動作を話し合いながら実施した結果,活動制限下でも実行度と満足度が向上し不安も解消.復職に繋がったと考える.
【倫理的配慮/COI】本報告は事例から書面にて同意を得ており,COI関係にある企業等はない.
【症例紹介】A氏,60代男性,右利き.病前は和食店を妻と二人で経営,ADL,IADL自立.性格は真面目で努力家.妻と息子と同居. X年Y月Z日早朝に右手足の動かしづらさと呂律困難を自覚し当院に救急搬送.脳梗塞の診断にてt-PA施行.
【作業療法評価】Z日作業療法開始.意識清明.軽度の右不全麻痺(SIAS-M:4-2,5-5-5,MMT:右上肢5,右下肢4.握力:右28.5kg,左19.0kg.STEF:右85点,左93点)と構音障害を認めた.認知機能ほぼ問題無し(HDS-R:26/30点,FAB:12/18点).食事は右手で可能だが拙劣さあり.歩行車歩行見守り,更衣・入浴軽介助,階段昇降未実施でFIM:98/126点(運動65).復職に関する動作では安全な包丁操作は可能だが拙劣さがあることと書字や構音の拙さに不満があった.Z+3日の生活行為の意向聴取では調理師への復職と和食店の再開が挙げられたが,右手指の巧緻性低下等により実現に不安があった.A氏との相談の結果,入院中に復職準備を整えるとし,右手で箸を使用した食事と独歩でのADL自立,包丁や調理箸の操作性向上,書字・会話能力の改善を合意目標とした.それぞれの実行度は3~4,満足度は全て3であったが,これらは訓練にて改善・向上が見込めた.
【生活行為向上プラン】基本プログラムは動作の安定性と耐久性向上を目的に右手指や下肢等の機能訓練と書字・構音訓練を,応用的プログラムは右手でのADL訓練,屋内歩行訓練,学習療法を,社会適応的プログラムは立位での調理訓練,移動の応用動作訓練を病院で実施し,進捗状況は適宜チームカンファレンス等にて把握.退院後に店舗での実動作訓練を訪問リハビリテーションで行うこととした.
【経過】Z+7日に目標プランをチームで共有.訓練で獲得したADLはZ+16日から回復期リハビリテーション病棟で実践.Z+18日から包丁操作等の実動作を立位で実施.終盤は巧緻性がより高く職場復帰に必要な作業へと発展させた.移動動作は能力向上に合わせ段階的に進めていった.入院中に要介護2の認定も取得.Z+2M,店舗で復職のための訓練を行う準備をして退院.必要な家屋改修は退院後に検討することになった.
【結果】右手での包丁・箸・筆記用具の操作性は向上しADLも自立.それぞれの生活行為の実行度,満足度は改善し復職への自信が深まった.
【考察】A氏は麻痺が軽度で認知面も保たれていたため,急性期から実動作訓練も実施しており,復職もいずれは可能と考えられた.しかしA氏自身は右手の巧緻性低下や入院中調理が行えないことに不安があった.また当院の調理環境の不備や感染症対策下の活動制限により,調理訓練の進め方も課題となった.そこでA氏と練習すべき調理活動を検討し,大根の桂剥きや千切りなどの十分実践的で活動制限下でも可能な訓練を導入.これらは修行時代に練習した動作で,道具と対象物の位置関係や力の微調節が必要な巧緻動作でもあるため,反復訓練が効果的だったと考える.MTDLPを用いて事例にとって意味のある実動作を話し合いながら実施した結果,活動制限下でも実行度と満足度が向上し不安も解消.復職に繋がったと考える.