第57回日本作業療法学会

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ポスター

MTDLP

[PM-4] ポスター:MTDLP 4

Sat. Nov 11, 2023 11:10 AM - 12:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PM-4-2] 臨床実習における生活行為向上マネジメントを用いた教育効果

稲富 惇一, 桂 雅俊, 安岡 希和, 畑田 早苗, 片岡 聡子 (土佐リハビリテーションカレッジ作業療法学科)

【序論】
 臨床実習において生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)を用いることは,学生と実習指導者との協働により対象者を総合的に捉え臨床推論能力を身につけられるため,活用することが推奨されている(小林, 2017).一方で,臨床実習におけるMTDLPの教育効果を報告した数は少なく,学生にどのような学びがあるのか不透明な部分も多い.そこで今回,臨床実習にてMTDLPを用いて3症例を経験した29名の学生に対して,生活行為向上マネジメントシートに関する自由記述式のアンケート調査を行い,その内容に対して計量テキスト分析を実施した.その結果,臨床実習においてMTDLPを活用することの教育効果が明らかになったため以下に報告する.
【目的】
 臨床実習においてMTDLPを使用した学生の教育効果を明らかにする.
【方法】
 研究デザインは自己記述式の質問票による調査研究を選択し,倫理委員会の承認を得た上で実施された(承認番号:TRC202212).対象は研究の同意が得られた作業療法士養成校の4年生29名(男性14名,女性15名,平均年齢21.9 ± 1.1歳)で,どの学生も臨床実習を1080時間終えており,なおかつMTDLPを用いて3症例を経験していた.アンケートは臨床実習終了1ヶ月以内に行い,内容は本校の学内発表の一部で使用している生活行為向上マネジメントシートに関して,使用して良かった(理解しやすかった)理由,難しかった(理解しにくかった)理由について自由記載にて回答を求めた.分析は,計量テキスト分析とし樋口の開発したKH coder Ver.3を使用.集計単位は文とし関連語と語の関連性の強さはJaccard Index 0.3以上にて共起関係を出力した.出力後は,関連語検索にて文章中の語の頻度や使われ方・文脈を確認し,妥当性についてはMTDLP指導者3名で検証した.
【結果】
 アンケート回収率は100%で,総抽出語数3317語,異なり語数467語,頻出語は多い順に「プログラム,難しい,考える,家族,目標」であった.14回以上の頻出語とJaccard Index 0.3以上の共起関係に着目すると,良かった(理解しやすかった)理由の「考える」と「目標,患者」,「理解」と「患者,強み」,「生活」と「患者,行為,要因,妨げる」,「支援」と「本人,家族」,「見る」と「全体」であり,難しかった(理解しにくかった)理由では,「難しい」と「予測,予後,考える」,「プログラム」と「家族」であった.
【考察】
 臨床実習において学生がMTDLPを活用する利点として,患者との合意目標を考える上で強みや生活を妨げている要因など全体像を捉えられ,包括的なプログラムの立案に役立っていることが分かった.全体像を捉えることは臨床推論能力を高めるため臨床実習で習得することが求められる(Moruno-Miralles et al., 2020).しかし,これまでの報告では臨床実習にて作業療法学生が対象者の全体像を把握することは難しく,どのような教育ツールを使用すれば良いの明らかになっていなかった(熊谷ら, 2022;Márquez-Álvarez et al., 2021).今回MTDLPを活用することで,学生が対象者の全体像を把握する一助になることが明らかになり,臨床実習にて用いることの意義が高まったと考える.加えて,学生が経験の少なさから「予後予測を考える」や「家族とのプグラム立案・実施をイメージする」点が難しいことも分かった.この点においては,今後も実習指導者からの十分な助言や思考過程の提示が必要と思われる.研究の限界と今後の展望としては,今回一学年のみの調査であったため引き続き他学年や他校においても同等の結果が得られるのか検証していきたい.