第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-1-7] 吹田市訪問型短期集中サポートサービスにおけるOTの役割

下川 貴大1,2 (1.医療法人弘清会 四ツ橋診療所在宅診療部, 2.吹田市福祉部高齢福祉室)

【はじめに】近年,作業療法士(以下OT)が関わる介護予防・日常生活支援総合事業(以下総合事業)の報告は増えており,大阪府吹田市では2017年4月より総合事業の1つとして,訪問型短期集中サポートサービス(以下短期集中)を実施している.2022年3月をもって短期集中を開始して5年が経過するため,5年間の活動実績を報告するとともに,2019年に実施した地域包括支援センター職員(以下包括職員)向けのアンケート調査を再度実施し,比較検討することで見えてくるOTの役割や今後の課題について考察したため以下に報告する.
【事業の概要】吹田市では6名のOTが在籍し,1日に1名が常駐する形で勤務している.短期集中は,日常生活に支障があり生活行為が困難な高齢者が,OTが考えたプログラムを通所型サービス(以下通所)と組み合わせ,集中的に取り組み,自立支援を図ることを目的としている.対象は整形外科疾患がある者,入院等に伴う廃用症候群がある者で,要支援1・2の認定がある者または基本チェックリスト該当者である.期間は通所の利用開始から最長6か月の範囲とする.
【方法】吹田市内の包括職員全72名を対象にアンケートを送付.アンケート内容は,職種,包括の経験年数,事業目的の理解度,事業開始から終了(卒業先を含めた)までのイメージができているか,利用有無,利用した印象,利用して良かった点と困った点,OT・通所事業所・医療機関・地域資源との連携度合い,相談したい疾患,OTに期待すること,その他要望・感想とした. 2019年のアンケート結果と今回の結果を比較し,活動実績をまとめるとともに改めて短期集中に求められるOTの役割について考察した.
【結果】アンケートの回答率は90.3%となり,短期集中の目的は100%が「理解している」と答え,利用したことがある方は67.7%となった.短期集中を利用した方は全員が「良かった」と答え,具体的には「OTとの連携が取れた」「高齢者の目標が明確になった」「自主トレーニングの指導」が挙がった.困った点として「卒業先が見つからない」「訪問回数が多い」「通所との連携」が挙げられた.OTに期待することは,「自主トレーニング・生活動作の指導」「対象者の評価」が挙げられた.
【考察】短期集中開始から5年間が経過し,短期集中自体の周知は進みOTの視点,生活課題の評価を包括職員と共有することが増加した.アンケートからも,アセスメントや目標設定についての視点が深まったとの意見が以前より増加しており,OTとの協働が増えた影響と考えられる.一方でアンケート結果から通所の終了に至らないケースが増えたことも課題となっている.現状はサービス担当者会議のみでしか通所職員と対面で連携する機会がなく,実際に高齢者宅を訪問する回数も少ないため,初回にOTと合意形成した目標や方針について,通所職員や高齢者とうまく共有できていない可能性がある.また高齢者本人が通所利用時に他者との交流があるために通所の終了に繋がりにくい可能性も考えられる.包括職員への周知は進んでいるが,通所職員への周知や連携は今後も必要と考える.そのためOTはよりマネジメント,連携という視点が重要となる.
【今後の展望】包括職員・通所職員向けに研修や事例を通して連携を深めるとともに,住民向けにも短期集中利用者の声を届ける機会を増やしていく必要がある.さらに退院後早期からスムーズに地域で生活することができるよう,医療機関からも退院時の支援として考えていただけるような働きかけも必要である.吹田市の短期集中での関わりをより多職種で深めていく必要がある.