第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-1-8] 作業療法士のコンサルテーションで放課後児童支援員が抱く主観的経験

野口 泰子1, 小野 智子2 (1.岡山医療専門職大学健康科学部 作業療法学科, 2.中央くすの木クラブ)

【序論】
 昨今,作業療法士(以下,OT)の職域は放課後児童クラブ(以下,クラブ)にも広がりをみせており,クラブを訪問してコンサルテーションを行う事業(以下,OTコンサル)がある.OTコンサルでは,OTが対象児童の環境調整について助言を行うことで問題行動が軽減していくなど,OTが実践する間接的な支援の可能性が報告されている.一方,OTコンサルでは放課後児童支援員(以下,支援員)がOTのアドバイスを対象児童に活かすことに難しさがあり,未実施であったり方法を変更して実施している状況にある.本研究の目的は,支援員がOTコンサルで得られた知見を日々の保育に活かす上で感じている困難さについて,その主観的経験を明らかにすることである.その意義は,支援員の抱える課題を明らかにすることで,OTがコンサルテーション等の間接的な関わりに必要な視点を得られるところにある.
【方法】
 対象は,Aクラブに勤務する支援員でOTコンサルへの参加経験がある者とした.インタビューは集団で行い,コンサルテーションの結果を対象児童に活かす上で何に困難さを感じているか,どのような工夫を行っているかなどの質問をインタビューガイドに沿って尋ねた.インタビューデータは,全過程を通じてICレコーダーで録音し,逐語録を作成した.質的データ分析は,Steps for Coding and Theorization(以下,SCAT)を採用し,支援員がOTコンサルで抱える困難さなどについて分析した.SCATとは,データをセグメント化し,①データ内の着目すべき語句,②それを言いかえるためのデータ外の語句,③それを説明するための語句,④そこから浮き上がるテーマ・構成概念の順にコードを考えて付していく4ステップのコーディングがあり,上記のテーマや構成概念からストーリー・ラインを記述し,理論記述を行っていく分析手法である.本研究は当学園における倫理審査承認,および対象者に同意を得て実施した.
【結果】
 対象は10名(男性3名,女性7名)であった.インタビュー時間は約20分であった.SCATの結果,4ステップのコーディングから得られた構成概念は34となった.また,ストーリーラインを断片化した理論記述は8つあり,代表的なものを以下に示す.
・対象児童に専従の支援員はいないため,誰でも気軽に実践できる支援方法がよい
・支援員はコンサルの効果をクラブ全体の子どもに活かそうとアレンジをしている
・OTの観察時間が短く,支援員が捉えて欲しい対象児童の本質を捉えきれていない
・観察は,通常時と学校行事で疲れて帰ってくる等のイレギュラーな場面との比較が必要だ
・他職種(OT)の視点を得ることで多角的な視点で保育を実践できる
【考察】
 本研究の結果から,OTコンサルの内容を実践するために支援員は様々な取り組みを行っていることが明らかとなった.たとえば,支援員はOTコンサルの内容を対象児童に専従的・継続的に実践することが難しく,複数の支援員で場面的に関わるなどの工夫で補われていた.つまり,OTコンサルは支援員を介して対象児童に支援提供するため,現場のマンパワー状況を把握することをはじめ,支援員がOTコンサルの内容を実践できる形で提案していく視点が期待されている可能性があると考えられた.