第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-1] ポスター:地域 1

2023年11月10日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-1-9] 就労支援施設における支援者へのコーチングの検討

本多 伸行1, 草野 房子2, 青山 晃大2, 宮崎 友理2, 浅野 みのり2 (1.関西福祉科学大学, 2.一般社団法人 じょいなす)

<序論>安定した就労を目指すために,就労準備期における自身の障害の気づき(以下,気づき)の獲得は重要となる.対象者を援助する支援者は,経験や研修を通し支援技術を磨いているが,個々の心身機能や活動・参加能力を関連付けた気づきの促しに難渋している.また既存プログラムは,就労支援に重要な要素を含み,組織の仕組みからも,新たなプログラム導入は一朝一夕にはいかない.そこで,既存プログラムを評価・介入し,更なる気づきを促す関わり方について支援者にコーチング・ダイアローグを行った.今回は,プログラム介入と支援者に対するコーチングの経過について報告する.尚,本研究は関西福祉科学大学倫理委員会の承認を得て実施している(20-33).
<目的>既存プログラムへの評価と介入,支援者へのコーチングの効果を考察する.
<方法>プログラムは,認知行動療法に基づき構成され,就労生活に必要な勉強会,作業活動,個々の面談を行う.週1回合計約180分実施する.個々の面談は,週初で1週間の目標の確認,週末で1週間の振り返りと次週の目標設定を行う.コーチング・ダイアローグは,双方向,個別対応,現在進行形の3つの原則から構成した.評価は,支援者の個々の特性と問題の把握のために,プログラムと個別面接を観察し,コーチング・ダイアローグを支援者と実施した.1回目の全体コーチング後,6か月間の介入し再度2回目の全体コーチングを行った.また一人につき2カ月間合計8回の面接後コーチングを行った.
<結果>プログラム実施には合計4名の支援者が関わっていた.4名は,職場適応援助者2名,社会福祉士1名,介護福祉士1名で,経験年数は3~9年目であった.常に2名を配置し時折1名の時もあった.1回目のコーチング後,既存プログラムの問題点について,①支援者間の連携,②個々の面接技能が抽出された.①支援者間の連携では,週初・週末の面談者が異なる際,申し送り方法や面談の流れの違いが課題となった.②面接技能では,出てきた課題に対して,気づきを促せているか不安が強く残ること,振り返り結果から目標設定まで関連付けた促しが困難であったこと,支援者と対象者の距離感や他のプログラムでの関わり方の違いに戸惑いがあったことが挙がった.その後,申し送り表と面接シートは,対象者との面談の流れ・質が分かるよう項目順序と点数化すること,目標設定を具体的に記入できるように改変した.また面接場面で個々に直接コーチングを行った.2回目のコーチング結果,①支援者の気づきの獲得,②対象者との関係性向上,③支援者の自己効力感向上が抽出された.①支援者の気づきでは,点数の活用した聞き方,支援・聞き取り方の変化が挙がった.②対象者との関係性では,対象者との一体感(伴走感)を感じ,思考・行動の変化を客観的に把握すること,生活背景との関連性を持った思考ができることが挙がった.③自己効力感では,支援できている実感が沸いた,観察する目が養われたことが挙がった.
<考察>今回,既存プログラムを活用し,対象者や支援者の負担を考慮した環境調整を行った.対象者の障害像は,多様性に富み,生活背景も様々である.加えて就労支援施設の支援者は,就労支援の専門教育・資格・経験がある者ばかりではなく,援助技術や知識に幅がある.しかし,支援者は「やってみたい・挑戦してみたい」という対象者の想いを実現したいという信念が共通していた.この支援者の共通した信念があるからこそ,作業療法士の視点がより効果的に影響した結果であったと考える.