第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-10] ポスター:地域 10

Sat. Nov 11, 2023 2:10 PM - 3:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-10-12] 生活支援員と看護師における重症心身障害者に対する集団活動支援の意識と支援の変化

杉山 いずみ1, 笹田 哲2 (1.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科博士後期課程, 2.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【はじめに】生活介護事業所は,常時介護を必要とする人に対して,日常生活上の支援,創造的・生産的活動の機会を提供しており,重症心身障害者(以下,重症者)の利用が増えている.生活支援員と看護師は,重症者を楽しませたいと思いながらも,重症者の微細な反応を見逃すために意思疎通が困難になり,重症者は集団活動に参加できていなかった.そこで,生活介護事業所での集団活動支援を行っている生活支援員と看護師の思いに寄り添いながら,とともに考える機会を創り出すことで,重症者の支援に対して変化を起こす行動につなげることはできないかと考えた.本研究の目的は,作業療法士(以下,OT)と生活支援員および看護師がともに,重症者に対する集団活動支援における現場の課題と支援の方策を考えて実践することによる,生活支援員と看護師の意識や支援の変化を明らかにした.
【方法】アクションリサーチを用いて,OTが研究メンバーと一緒に,重症者に対する集団活動支援について考えるアクションを通して,生活支援員と看護師の意識や支援にどのような変化が起こるか観察し記述した.アクションリサーチは現場における問題を明確にし,可能な解決策を探るために行う協働的介入であり,実践改善の意図をもって始まる研究である.そこで,集団活動支援の課題抽出,計画立案,実践,評価・内省,計画の修正を周期的にらせん状に進んでいくスタイルで進めた.研究参加者は,OTとともに生活介護事業所における現在の課題を見いだし,課題解決に取り組む,生活支援員である研究メンバー(2名),研究メンバーが立案した計画を支援者の一員として共有して実践し,自己の意見を提供する研究参加者である生活支援員と看護師(13名),生活支援員と看護師の支援を受けるこの事業所の利用者である重症者(19名)であった.本研究は,所属大学と対象施設の研究倫理審査委員会の承認を得て行った.
【結果】現場の課題は,集団活動のねらいと重症者の反応が共有されていないことであった.そこで,集団活動のねらいを共有することと,重症者の反応をみる視点の共有するために,重症者の反応をみる視点を気づいてもらうことを意図した,簡易的な活動参加記録に記載することを計画して実践した.1回目の評価・内省では,生活支援員と看護師は安心して集団活動支援を行い,重症者の反応に気づくようになった.再計画では,研究メンバーは,生活支援員と看護師の重症者への支援の変化を実感していた.そこで実践を継続して,集団活動のねらいの定着と,重症者の反応の記録を積み重ねることを再計画した.2回目の評価・内省では,生活支援員と看護師は,主体的に重症者が楽しむ支援を行うようになり,重症者の反応への気づきが広がり,反応の違いが判るようになった.
【考察】本研究から明らかになったことは,生活支援員と看護師が,重症者が楽しめることを実感することが,支援の達成感につながり,支援の自信になることであった.それを可能にしたのは,重症者と一緒に集団活動を行うことが共通の認識になり,安心して支援ができるようになったこと.また,立場や専門性が異なる生活支援員と看護師に対して,教えるのではなく活動参加記録の記載を通して,重症者の反応に気づき,その違いが判るようになったことで,主体的に重症者を楽しませる支援に変化したと考えられる.そして,OTの関わりは,重症者への集団活動支援という,生活支援員と看護師の作業における意志と遂行に変化をもたらしたといえる.