第57回日本作業療法学会

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[PN-10] ポスター:地域 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-10-3] 地域包括ケア病棟へ内科疾患で入院した患者の転帰先に関する因子の検討

寸村 純哉, 小田 高司 (小林記念病院入院診療部)

【はじめに】
令和元年の地域包括ケア病棟の機能等に関する調査では,内科疾患による入院が42.4%(呼吸器:15.9%,循環器:8.9%,消化器:12.6%,内分泌:5.0%)と高く,70歳以上の入院が81.0%と報告されている.そのため,地域包括ケア病棟において,高齢の内科疾患患者の退院支援は重要であると考えられる.先行研究では,回復期リハビリテーション病棟,地域包括ケア病棟に入院した整形外科疾患患者を対象とした転帰先に関する研究は散見されるが,内科疾患を対象とした研究は少ない.本研究で,地域包括ケア病棟へ内科疾患で入院した患者の転帰先を決定する因子を分析し,退院支援の一助とすることを目的とした.
【方法】
対象は,2022年4月1日から2022年11月30日までに,自宅から当院の地域包括ケア病棟へ内科疾患で入院した57名(85.0±6.5歳,男性24名,女性33名)とした.入院死亡または転院した59名,2週間以内の退院8名,データ欠損2名を研究対象から除外した.基本情報(年齢,性別),入院時評価項目としてFunctional Independence Measure(以下,FIM)得点,Mini-Mental State Examination-Japanese(以下,MMSE-J),同居者の有無を評価した.退院時FIM得点,FIM利得,退院時介護度,退院時の移動手段(歩行可能・歩行不能),転帰先(自宅群・対象群),在院日数を退院時評価項目とした.本研究では,病前の居住地に退院した者を復帰群,その他へ退院した対象を非復帰群に定義し,復帰群と非復帰群で各項目をMann-Whitney検定またはχ2検定で比較した.統計解析はSPSS(Ver26)を使用し,有意水準は5%とした.調査項目は匿名化し,対象者への同意はホームページに掲載してオプトアウトで行った.本研究は,所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施された.
【結果】
復帰群(32名)と非復帰群(25名)の年齢(復帰群:83.8±6.1歳,非復帰群:86.6±6.7歳),性別(復帰群:男性12名,女性20名,非復帰群:男性12名,女性13名)には差が認められなかった(p>0.05).評価項目においては入院時のFIM得点(復帰群:54.4±22.5,非復帰群:34.80±16.1),MMSE-J(復帰群:16.6±9.5,非復帰群:10.7±8.8),退院時のFIM得点(復帰群:80.0±30.4,非復帰群:41.8±25.1),FIM利得(復帰群:25.6±20.2,非復帰群:7.6±23.8),退院時介護度(復帰群:4.6±2.3,非復帰群:6.6±1.2),退院時の移動手段(復帰群:歩行可能26名,歩行不能6名.非復帰群:歩行可能12名,歩行不能13名),在院日数(復帰群:38.3±13.3,非復帰群:48.5±10.6)において有意な差が認められた(p<0.05).
【考察】
自宅以外へ退院した患者は入院時FIM,退院時FIM,認知機能が低く,在院日数が長い傾向にあった.先行研究においては,地域包括ケア病棟からの転帰先が自宅以外の対象は,入院時における排泄動作能力・移動動作能力が低いと報告されている.本研究の結果を踏まえ,地域包括ケア病棟へ内科疾患で入院し,入院時の日常生活能力・認知機能が低い場合,自宅退院が困難になる可能性が示唆された.また,FIM利得も低い傾向にある為,ベッドサイドの環境調整・福祉用具選定による介入で日常生活の自立度向上を図ることが,自宅復帰を支援する上で重要と考えられる.