第57回日本作業療法学会

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[PN-10] ポスター:地域 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-10-8] 在宅生活における調理の困りごとの解決に向けた片手での調理の方法の工夫,道具の活用の検討

山中 基司, 宮田 淳志, 三郎丸 朋美, 松原 麻子, 矢田 かおり (地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立リハビリテーション病院リハビリテーション技術科)

【はじめに】
 当院作業療法部門では,自宅に退院した患者やその家族を対象として「退院後の生活に関するアンケート調査」(以下,退院後アンケート)を実施しており,第55回日本作業療法学会で脳卒中後片麻痺患者の調理動作に影響する要因について報告した.その中で,手の機能や役割を考えた上での調理練習や,自助具の提供,また包丁操作が難しい場合には電動調理機器の活用により,調理の再開率や頻度が向上すると考察した.今回,退院後アンケートの調査期間を拡大し,挙げられた困りごとを解決するための手段を検討し,入院中からそれらの困りごとの解決を図るため,片手での調理の方法の工夫,道具の活用を掲載した動画を作成したため,その取り組みを報告する.
【対象と方法】
 2016年6月から2021年3月までに当院回復期リハビリテーション病棟から在宅復帰し,且つ入院中に調理練習を実施した脳卒中後片麻痺患者のうち,退院後アンケートに記載されていた47名,52項目の在宅生活における調理の困りごとを対象とした.困りごとには,「玉ねぎなど球体の野菜の頭と尻の部分を切るのが難しい」「手の力が弱く,包丁で切ることが難しい」「野菜をきざむこと」といった「包丁で材料を切ること」に関するものが13項目,「手を切らないように常々気をつけなければならない」といった「安全性の配慮」に関するものが3項目挙がっており,それらを元に,当院作業療法部門の作業療法実践ワーキンググループ(作業療法士6名:経験年数は13.5±7.0年)で困りごとを解決するための手段を検討し,動画を作成した.尚,本調査は当院の倫理審査委員会での承認を受け,アンケートの回答をもって同意を得ている.
【結果】
 困りごととして挙がっていた「手の力が弱く,包丁で切ることが難しい」に対してUDグリップ包丁の使用,「野菜をきざむこと」に対してフードプロセッサーの使用といった,自助具や電動調理機器の活用を考え,片手動作で実際に調理を行っている場面を撮影し,動画編集を行った.また,「玉ねぎなど球体の野菜の頭と尻の部分を切るのが難しい」に対して「まな板の持ち手部分に乗せて玉ねぎの端を切り落とすこと」を,「手を切らないように常々気をつけなければならない」に対して「包丁の刃を体に向けて置かないこと」を方法の工夫として考え,動画にコメントを掲載した.
【考察】
 退院後アンケートで挙がった困りごとを元に,「包丁で材料を切ること」と「安全性の配慮」に着目した方法を検討した.片手で材料を一定の大きさに切り,フードプロセッサーを使用する調理の動画を作成した.通常の包丁に加え,UDグリップ包丁を使用する場面を取り入れた.また方法の工夫として,「まな板の持ち手部分に乗せて玉ねぎの端を切り落とすこと」「包丁の刃を体に向けて置かないこと」等を掲載した.このような方法の工夫,道具の活用が在宅生活における困りごとの解決につながり,調理の再開率や頻度が向上すると考える.
 今回作成した動画を,調理練習を行う前の患者に閲覧してもらうことにより,片手での調理をより具体的にイメージできるようになると考える.また石川¹⁾は自助具を活用した支援を効率良く提供するための体制づくりの必要性を述べている.経験年数の浅い作業療法士が動画を閲覧することにより,具体的な方法の工夫,自助具や道具の活用を学ぶことができ,卒後教育に寄与できると考える.
【文献】
1)石川哲也:片麻痺に対する自助具活用の情報提供「片手生活のアイデア集」の紹介.作業療法ジャーナル 52(5):432-437,2018.