第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-10] ポスター:地域 10

2023年11月11日(土) 14:10 〜 15:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-10-9] 通所リハビリテーションにおいてADOCを活用して目標共有した3症例の報告

森 佐知子, 川口 悠子, 林 奈美 (偕行会リハビリテーション病院リハビリテーション部)

【はじめに】
 当院の通所リハビリテーション(以下通所リハビリ)は,1時間以上2時間未満のサービスで,利用者と一対一で関わる時間は短く,目標設定のための面接時間を設けることが難しい.また通所リハビリ利用者の中には,疾病により活動範囲が狭小化し,活動参加レベルの目標立案が難しいケースも多い.Aid for Decision-making in Occupation Choice(以下ADOC)は活動参加レベルの目標設定を行いやすくするためのアプリケーションであるが,通所リハビリ利用者を対象としたADOCの実践報告は少ない.今回,事前に紙面版ADOCを渡し,希望する活動を選んで来てもらうことで,時間短縮を図り,それをもとに療法士と目標設定を行った.また満足度や現状を確認し,リハビリ内容や活動目標も相談して進めた.その結果,目標を言語化したことが自己認識を促し,行動変容に繋がったため報告する.なお報告にあたり対象者の同意と当院倫理審査委員会の承認を得ている.
【症例紹介】
 A氏)50歳代男性,左被殻出血(要支援2)右Br-S:Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,BI:95点(入浴軽介助),Frenchay Activities Index(以下:FAI)11点,ADOCで挙がった項目と満足度:掃除2,旅行2,炊事2.B氏)70歳代女性,左恥骨骨折,メニエール病(要支援2)BI:100点,FAI:10点,ADOC:買い物1,散歩1,自動車運転1.C氏)60歳代男性,転移性脳腫瘍術後(要介護2)左Br-S:Ⅴ-Ⅴ-Ⅴ,左上肢・体幹失調症状著明,BI:95点(階段見守り),FAI:13点,ADOC:散歩2,旅行1,買い物2.
【経過】
 各症例に対して,ADOC項目をもとに日常生活内の活動の目標を設定し,通所リハビリ時に進捗状況を確認した.A氏)家事動作は,未経験さゆえの満足度低値であったため,掃除などの実動作練習を実施した.工夫する点を提案し自信へつなげられるよう介入した.旅行は,転倒や疲労への不安や歩行スピードの遅さによる減点であったため,バランス訓練やトレッドミルでの歩行練習,有酸素運動を実施した.活動目標は,朝食後の洗い物を提案した.B氏)屋外歩行への恐怖心があったため,歩行車を選定し短距離から屋外歩行練習を実施した.下肢筋力やバランス訓練,有酸素運動にて体力向上を図った.活動目標は,10分の散歩を提案した.C氏)転倒の恐怖心が強く,一人での外出が困難であったため,家族に現状を説明し,協力を依頼した.またバランス訓練や床上動作練習,上肢機能訓練を行った.活動目標は,起立訓練や歩行機会の増加を提案した.
【再評価結果(3~6ヵ月後)】
 A氏)FAI:20点,ADOC:掃除3,旅行4,炊事4.B氏)FAI:27点,ADOC:買い物4,散歩3,自動車運転5.C氏)FAI:16点,ADOC:散歩3,旅行3,買い物3~4
いずれの症例においても身体機能やADL能力は変化なかったが,ADOCの満足度とFAIの点数は向上した.
【考察】
 通所リハビリで工夫しADOCを活用したことで,色々な希望が聞き出せ,新たな目標設定やリハビリを実施できた.生活内での活動目標を立て,自己認識を促したことで,行動変容につながったと考える.それに伴い,満足度やFAIの点数が向上した可能性がある.また目標設定は,決めた後の進捗確認やフォローも大切であると,先行文献で言われている.通所リハビリは1週間に数回の関わりだが,利用時に活動目標の状況を確認できたことがよかったと考えられる.