[PN-11-1] 介護保険を卒業し社会資源へと移行できた症例
【序論】
病院退院後,在宅生活に適応し住み慣れた地域で長く生活する為には,活動量を低下させない事が重要である.しかし,COVID-19の流行による外出自粛の影響で,高齢者の活動量はコロナ前と比べ有意に低下している(松本, 2021).今回,病前のように登山などの活動を再開したいという希望をもたれていたが,COVID-19の感染への不安から自宅に引きこもりがちとなり活動量が低下していた症例を担当した.合意目標の設定と外出先の情報提供,デイサービス卒業後に地域資源へ繋げる事を意識した介入を行った結果,合意目標は達成され近隣のスポーツジムへと繋げることができた為,以下に報告する.なお,本報告において本人に説明の上書面にて同意を得ている.
【症例紹介】
60歳代女性で1年前に左大腿骨転子部骨折を受傷しガンマネイル固定実施.その後,自宅退院となったが生活全般に対する不安感から活動量が低下していたため,当デイサービスを利用開始となった.既往歴は骨粗鬆症で要介護認定は要支援1.希望は「歩く力をつけ登山やエアロビクスを再開したい」であった.歩行は独歩可能だがすり足歩行,左下肢立脚中期において骨盤帯が左側へ動揺が見られ,目線は下方を見ながら歩く傾向にあり,5m歩行は4.6秒で左大腿部に疼痛を認めた.認知機能面に問題はみられなかった.本症例において,明確な生活行為の目標を設定する事で,永続的なデイサービスの利用ではなく,介護保険を卒業し地域資源への移行が可能と考えた.その為,合意目標として「歩行能力が向上し,近隣のスポーツジムへ通うことができる」とし,スポーツジムにて基礎体力をつけた後,登山やエアロビクスの再開を目指す事で同意を得た.
【介入経過と結果】
第1期:歩行動作改善を目指し身体機能向上へ向けて介入した時期(3ヶ月):油圧式マシンやセラバンドを用いた中殿筋の筋力向上訓練,平行棒を用いた片脚立位姿勢保持や歩行動作を行い骨盤左右動揺の改善を目指し,介入を行なった.
第2期:外出時の不安感軽減を目指し介入した時期(3ヶ月): 歩行時の動揺が減少し「自信を持って歩けるようになってきた」との発言も聞かれた.屋外歩行練習について話をした際,娘から「自宅に来て孫の世話をして欲しい」と頼まれていたが,自身の身体状況では道中転倒すると思い断っていた.外出時の不安感軽減に向けて,Googleマップで道路状況などを確認し安全に歩けるルートを伝えた結果,娘様の自宅へ行き孫の世話を行なう事ができた.
第3期:スポーツジムにて継続した運動が行えるよう指導した時期(2ヶ月):認定調査の日程が決まった為,デイサービス卒業後は近隣のスポーツジムへ通い同じ油圧式マシンや歩行動作が正確に実施できる事を目指し介入を行なった.その後,近隣のスポーツジムへ通う事ができるようになり合意目標は達成された.
【考察】
作業療法において,生活行為に関連する課題を専門家視点で見極め,対象者への交渉や提案,遂行結果のフィードバックを通して真のニーズを引き出すといった,目標設定の協業を行う事が重要であると報告されている(横井ら,2020).今回,介入前に症例の生活背景や身体状況などを評価し,希望に沿って“活動と参加”を意識した実現可能な目標設定を行い,介入経過ごとに再評価とフィードバックを実施した.その結果,様々な場面にて主体的な取り組みが増えていき,自信を持ってデイサービスを卒業され,地域資源へスムーズに移行できたと考える.
病院退院後,在宅生活に適応し住み慣れた地域で長く生活する為には,活動量を低下させない事が重要である.しかし,COVID-19の流行による外出自粛の影響で,高齢者の活動量はコロナ前と比べ有意に低下している(松本, 2021).今回,病前のように登山などの活動を再開したいという希望をもたれていたが,COVID-19の感染への不安から自宅に引きこもりがちとなり活動量が低下していた症例を担当した.合意目標の設定と外出先の情報提供,デイサービス卒業後に地域資源へ繋げる事を意識した介入を行った結果,合意目標は達成され近隣のスポーツジムへと繋げることができた為,以下に報告する.なお,本報告において本人に説明の上書面にて同意を得ている.
【症例紹介】
60歳代女性で1年前に左大腿骨転子部骨折を受傷しガンマネイル固定実施.その後,自宅退院となったが生活全般に対する不安感から活動量が低下していたため,当デイサービスを利用開始となった.既往歴は骨粗鬆症で要介護認定は要支援1.希望は「歩く力をつけ登山やエアロビクスを再開したい」であった.歩行は独歩可能だがすり足歩行,左下肢立脚中期において骨盤帯が左側へ動揺が見られ,目線は下方を見ながら歩く傾向にあり,5m歩行は4.6秒で左大腿部に疼痛を認めた.認知機能面に問題はみられなかった.本症例において,明確な生活行為の目標を設定する事で,永続的なデイサービスの利用ではなく,介護保険を卒業し地域資源への移行が可能と考えた.その為,合意目標として「歩行能力が向上し,近隣のスポーツジムへ通うことができる」とし,スポーツジムにて基礎体力をつけた後,登山やエアロビクスの再開を目指す事で同意を得た.
【介入経過と結果】
第1期:歩行動作改善を目指し身体機能向上へ向けて介入した時期(3ヶ月):油圧式マシンやセラバンドを用いた中殿筋の筋力向上訓練,平行棒を用いた片脚立位姿勢保持や歩行動作を行い骨盤左右動揺の改善を目指し,介入を行なった.
第2期:外出時の不安感軽減を目指し介入した時期(3ヶ月): 歩行時の動揺が減少し「自信を持って歩けるようになってきた」との発言も聞かれた.屋外歩行練習について話をした際,娘から「自宅に来て孫の世話をして欲しい」と頼まれていたが,自身の身体状況では道中転倒すると思い断っていた.外出時の不安感軽減に向けて,Googleマップで道路状況などを確認し安全に歩けるルートを伝えた結果,娘様の自宅へ行き孫の世話を行なう事ができた.
第3期:スポーツジムにて継続した運動が行えるよう指導した時期(2ヶ月):認定調査の日程が決まった為,デイサービス卒業後は近隣のスポーツジムへ通い同じ油圧式マシンや歩行動作が正確に実施できる事を目指し介入を行なった.その後,近隣のスポーツジムへ通う事ができるようになり合意目標は達成された.
【考察】
作業療法において,生活行為に関連する課題を専門家視点で見極め,対象者への交渉や提案,遂行結果のフィードバックを通して真のニーズを引き出すといった,目標設定の協業を行う事が重要であると報告されている(横井ら,2020).今回,介入前に症例の生活背景や身体状況などを評価し,希望に沿って“活動と参加”を意識した実現可能な目標設定を行い,介入経過ごとに再評価とフィードバックを実施した.その結果,様々な場面にて主体的な取り組みが増えていき,自信を持ってデイサービスを卒業され,地域資源へスムーズに移行できたと考える.