第57回日本作業療法学会

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[PN-11] ポスター:地域 11

2023年11月11日(土) 15:10 〜 16:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-11-5] 認知症高齢者とその家族が自宅で実施できる回想法プログラムの作成

今井 あい子1, 工藤 元貴2, 佐野 佑樹3, 上田 奈央4, 木村 大介5 (1.鈴鹿医療科学大学保健衛生学部リハビリテーション学科作業療法学専攻, 2.デイサービスセンター渚園, 3.長太の寄合所「くじら」, 4.医療法人社団主体会 主体会病院, 5.関西医療大学保健医療学部作業療法学科)

<背景> 回想法は,認知症高齢者の行動・心理症状(以下,BPSD)の改善に有効であること,加えて,バーンアウト軽減効果など実施者側にも好影響であることが報告されている.回想法は専門職に限らず誰でも実施可能とされているが,認知症高齢者にとって身近な存在である家族が実施できるプログラムはない.また,世界的なCOVID-19の感染拡大により,不特定多数の他者との関わりが制限されている状況において,自宅で行う回想法プログラムの確立は認知症高齢者とその家族に役立つと思われる.そこで本研究では,地域にて回想法を実践する作業療法士(以下,OTR)と共に,認知症高齢者とその家族が自宅でできる回想法プログラムを作成した.また,プログラムの改良を目的として認知症介護者のサポートに精通した認知症カフェスタッフ(以下,カフェスタッフ)から意見を収集し,質的に分析することとした.
<方法> 認知症高齢者とその家族が自宅でできる回想法プログラムについては,A県にて月1回開催されている認知症カフェで,回想法を中心的に実施しているOTR3名と大学にて地域作業療法を担当する教員1名で,回想法の資料,家族への回想法のやり方の説明,頻度,時間,留意事項等を検討しプログラムを作成した.カフェスタッフからの意見収集では,実際に使用する資料を用いてプログラムを口頭で説明した.その後,カフェスタッフよりプログラムの改良点を質問紙への自由記述で収集した.カフェスタッフには,事前に研究説明を行い,質問紙への記載をもって研究協力への同意とした.自由記述から得たテキストデータの分析には,質的帰納的分析を用いた.分析では,まず文章を意味のあるまとまりごとに区切った.切片化は,元の文脈の意味を失わないように行い,その後,切片に対してコードを割り当てた.次に,類似したコードをまとめてカテゴリを作成した.分析にあたっては,質的研究の経験があり,かつ大学にて教育に従事する作業療法士1名によって分類の妥当性と信頼性を確認した.なお,本研究は筆頭著者所属の臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:470).
<結果> 回想法プログラムの資料では,認知症高齢者が幼少期に経験した「遊び」,「学校での出来事」,「故郷」,「年中行事」等のカテゴリーごとに写真と回想を促す声かけを掲載することとした.家族への回想法のやり方の説明では,回想法の概要,回想を深める質問の仕方,受容的な聞き方等に関する資料を作成し,回想法実施の経験者が説明することとした.頻度・時間は,週1 回,1回45-60分とした.カフェスタッフからの意見収集では,7名の協力が得られ,全て女性(スタッフ歴5.5 ± 2.2)であった.プログラムの改良点の最多コード数のカテゴリは「回想法のやり方について,専門職が見本を示しながら説明する」,2番目にコード数の多かったカテゴリは「設定時間の変更」,3番目は「個人的な写真を使った回想が良い」であった.
<考察・結語> カフェスタッフより得られたプログラムの改良に関する意見では「回想法のやり方について,専門職が見本を示しながら説明する」が最多コード数のカテゴリであった.本プログラムでは,家族に回想法のやり方を説明する際,資料を用いて説明する方法をとったが,初めて回想法を知る家族に対しては,当事者,家族,専門職の三者で回想法を一緒に行い,説明するステップを入れることが家族への回想法プログラムの導入や継続において重要であると考えられた.