第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-11] ポスター:地域 11

Sat. Nov 11, 2023 3:10 PM - 4:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-11-6] 地域在住高齢者の排泄問題に対する行動療法の実際

長嶺 ふじ子1,2, 仕垣 幸太郎3, 平良 さやか3 (1.回復堂Mahanalabマハナラボ, 2.日本コンチネンス協会, 3.大浜第一病院)

【背景及び目的】
「作業療法ガイドライン」では作業療法で扱う生活機能とICF項目として,消化器系・代謝系・内分泌系の機能,尿路・性・生殖の機能への作業療法の実践が明記されている.また「作業療法士養成教育モデル・コア・カリキュラム2019」では作業療法評価学および治療学の項目において対象疾患として「下部尿路機能障害」「排便障害」が掲載されており,排泄障害を有する者への作業療法の実践が求められている.排便機能や排尿機能の維持は,地域在住者にとってもQOLに影響の高い項目であり,その機能が破綻した場合には日常生活の維持や社会参加が損なわれる事が予想される.その一方で排泄行為においての作業療法の実践は広く知られるものの,機能自体を改善するための行動療法については情報が十分でない現状が課題となっている印象を持っている.
今回,長期間市販下剤を使用していた女性への下剤離脱への関りを得る機会があり,排泄機能への行動療法を行った.具体的な内容を報告する事で地域在住者に対する作業療法の内容を明らかにしたい.発表に際し,本人より同意を得ている.
【症例】70代女性 10年以上前より市販の下剤を3日に一度使用.大腸内視鏡検査時に刺激性下剤の使用中止を医師より指示され,運動療法や生活についてのアドバイスを希望.ADL・IADLは保たれており,地域にて自立した生活を送っている.性格は几帳面で健康志向が強い.下剤離脱に対して,自然排便が得られない事への不安感を認めた.
【方法】食事日誌及び排便日誌の記載を指導し,食事量・食事内容・水分量の評価,ブリストルスケールによる便性評価を実施した.ヒアリングにより排便姿勢,睡眠時間,運動頻度及び強度の評価を実施,排便機能評価としてObstructed defecation symptom(以下ODS)を用いて評価を行った.
【問題点】介入前は自然排便が乏しく,刺激性下剤を使用後ブリストルスケール6番便が大量であった.ODS:9/32点.刺激性下剤離脱に対しての不安感があった.
【介入】本人に対して以下の4項目の指導を実施した.1ブリストルスケール,排便日誌,食事日誌の記載 2下剤中止及びプレバイオティクスの摂取指導 3正常な排便についての情報学習の提供(定義,腸脳相関についてなどの基礎知識) 4生活習慣・運動指導(便秘体操,マッサージ,温罨法)
【結果】指導後より下剤使用は中止し,プレバイオティクス摂取を開始.5日後に自然排便あり.その後3日ごとにブリストルスケール4番の排便が見られるようになり,徐々に自然排便頻度改善.排便日誌で変化を確認する事で,下剤離脱への不安も軽減し,2週間後下剤なしで毎日の自然排便を得られるようになった.ODS:2点へ改善
【考察】「慢性便秘診療ガイドライン」では,食事・生活・排便習慣などの行動療法は保存的治療としての有効性が述べられており,適正な指導が求められている.地域在住高齢者においては,市販薬を自由に購入できることが可能である一方で,長期使用による副作用についての情報は得られにくく,本症例では大腸メラノーシスへの移行による便秘の進行が懸念される状況であった.排便に特化した評価・行動療法を提供する事で不安感を払拭し,下剤離脱が可能となった.今後も地域在住者に対し排泄の問題に対して適切な情報提供と評価・行動療法を実践し,問題の解決ならびにQOL向上に寄与できるよう努めたい.
【文献】日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編「慢性便秘症診療ガイドライン2017」南江堂