[PN-11-8] 長崎県作業療法士会での発達障害領域における取組みについて
【はじめに】 長崎県作業療法士会では,学童保育への訪問支援が実施できる体制を整備すること,身近な地域の医療機関や福祉機関へ,早期に必要な支援に結びつくことができる体制を整備することを目的に,令和3年度から3年間,特設委員会を設置し,活動を行った.令和4年度からは特設委員会を常設化し,活動を継続した.今回,長崎県作業療法士会での発達障害領域における取組みについて振り返り,学童保育や発達障害児支援における地域の支援体制整備の必要性について,考察を加え報告する.今回の報告について,長崎県作業療法士会理事会の承認を得ている.
【方法】作業療法士を対象に,平成31年度から令和4年度までの4年間で,合計7回研修会を開催した.コロナ禍以降は,オンラインでの研修や集合とオンラインを併用したハイブリッド方式での研修会を開催した.学童保育についての研修内容は,学童保育の訪問支援ができる作業療法士を増やすことを目的とした研修に加え,学童保育の訪問支援の際に,発達障害領域で経験年数10年以上の作業療法士と一緒に,普段身体障害領域や精神障害領域で勤務する作業療法士や発達障害領域での経験年数10年未満の作業療法士が同行訪問することで,OJTの形で作業療法士の人材育成に取り組んだ.発達障害児支援についての研修内容は,発達障害の当事者や家族から体験談を伺ったり,発達障害に関する基礎的な知識を得ることを目的とした研修会,発達検査ができるようになることを目的とした研修,評価結果の解釈や事例検討を通したグループワークを行なった.研修会終了後に任意での無記名式アンケートを行い,研修への感想や今後の取り組みに関する意見を調査した.感想や意見の自由記述は,KH Coderを用いて,想起ネットワークを作成し,語の結びつきから構造を検討した.
【結果】研修会の参加者は延べ320名であった.作業療法士だけでなく,理学療法士,言語聴覚士,臨床心理士,学童保育支援員,学校教員など,他職種からの参加も見られた.作業療法士の専門領域の内訳は身体障害107名(34%),精神障害19名(6%),発達障害87名(27%),その他14名(4%)であった.他職種から延べ93名(29%)の参加があった.アンケート結果の平均について,理解度は「理解できた(57%)」「概ね理解できた(35%)」,活用度は「非常に役立つ(64%)」「多少役立つ(30%)」,満足度は「とても満足した(75%)」「概ね満足した(20%)」という結果であった.想起ネットワークからは「貴重な話」「発達障害の研修の機会」「小児分野への興味」「作業療法の話」「教育の現場で感じたこと」などの構造が明らかになった.
【考察】アンケート結果やKH Coderを用いた想起ネットワークの構築をとおして,普段身体障害や精神障害などで勤務している作業療法士にとって,教育の現場で感じたことなどを伝える研修や発達障害に関する研修を行なったことは大変貴重な機会であること,研修等をとおして小児分野への興味が高まった可能性があることが示唆された.取組みを通して,身近な地域には,支援を必要とするが支援に繋がっていない子どもや保護者がいること,学童保育や発達障害児支援において,人材育成を含めた地域の支援体制の整備が必要であることが示唆された.他職種とも連携を取りながら,作業療法士としてできることを考え,取り組んでいくことが求められる.また,発達障害領域においても,地域包括ケアシステム構築の一助ができるよう,引き続き継続して活動していくことが必要である.
【方法】作業療法士を対象に,平成31年度から令和4年度までの4年間で,合計7回研修会を開催した.コロナ禍以降は,オンラインでの研修や集合とオンラインを併用したハイブリッド方式での研修会を開催した.学童保育についての研修内容は,学童保育の訪問支援ができる作業療法士を増やすことを目的とした研修に加え,学童保育の訪問支援の際に,発達障害領域で経験年数10年以上の作業療法士と一緒に,普段身体障害領域や精神障害領域で勤務する作業療法士や発達障害領域での経験年数10年未満の作業療法士が同行訪問することで,OJTの形で作業療法士の人材育成に取り組んだ.発達障害児支援についての研修内容は,発達障害の当事者や家族から体験談を伺ったり,発達障害に関する基礎的な知識を得ることを目的とした研修会,発達検査ができるようになることを目的とした研修,評価結果の解釈や事例検討を通したグループワークを行なった.研修会終了後に任意での無記名式アンケートを行い,研修への感想や今後の取り組みに関する意見を調査した.感想や意見の自由記述は,KH Coderを用いて,想起ネットワークを作成し,語の結びつきから構造を検討した.
【結果】研修会の参加者は延べ320名であった.作業療法士だけでなく,理学療法士,言語聴覚士,臨床心理士,学童保育支援員,学校教員など,他職種からの参加も見られた.作業療法士の専門領域の内訳は身体障害107名(34%),精神障害19名(6%),発達障害87名(27%),その他14名(4%)であった.他職種から延べ93名(29%)の参加があった.アンケート結果の平均について,理解度は「理解できた(57%)」「概ね理解できた(35%)」,活用度は「非常に役立つ(64%)」「多少役立つ(30%)」,満足度は「とても満足した(75%)」「概ね満足した(20%)」という結果であった.想起ネットワークからは「貴重な話」「発達障害の研修の機会」「小児分野への興味」「作業療法の話」「教育の現場で感じたこと」などの構造が明らかになった.
【考察】アンケート結果やKH Coderを用いた想起ネットワークの構築をとおして,普段身体障害や精神障害などで勤務している作業療法士にとって,教育の現場で感じたことなどを伝える研修や発達障害に関する研修を行なったことは大変貴重な機会であること,研修等をとおして小児分野への興味が高まった可能性があることが示唆された.取組みを通して,身近な地域には,支援を必要とするが支援に繋がっていない子どもや保護者がいること,学童保育や発達障害児支援において,人材育成を含めた地域の支援体制の整備が必要であることが示唆された.他職種とも連携を取りながら,作業療法士としてできることを考え,取り組んでいくことが求められる.また,発達障害領域においても,地域包括ケアシステム構築の一助ができるよう,引き続き継続して活動していくことが必要である.