[PN-12-1] 訪問リハビリテーション利用者の栄養状態が介入3カ月後のADL改善に与える影響
【はじめに】
病院の高齢患者の多くは低栄養状態と言われており,ADL改善に負の影響を与えるとされている.そのため訪問リハビリテーション(訪問リハ)でも栄養状態の把握は重要と思われるが,症例数や報告の少なさから栄養状態とADL改善との関連は明らかではない.また訪問リハは介入期間の制限がなく漫然と継続されやすいため,ADL改善の予後予測は重要である.そこで本研究の目的は,訪問リハ開始時の栄養状態が介入3カ月後のADL改善に与える影響を明らかにすることとした.
【方法】
対象は2015~2017年に当センターで訪問リハを開始した283名(平均81.5歳,男性37.5%)とした.疾患内訳は大腿骨頸部骨折64名,脳血管疾患61名,廃用症候群55名,骨関節疾患55名,神経筋疾患24名,その他24名であった.訪問リハ開始時と3カ月後に栄養状態とADLを評価した.ADL評価法はFIM,栄養状態は簡易栄養状態評価法(MNA-SF)を使用した.MNA-SFは栄養評価のスクリーニング法(0~14点)であり,0~7点が低栄養,8~11点が低栄養のリスクあり,12~14点が栄養状態良好と判定する.次に対象者を訪問リハ開始時のMNA-SFを基準に,①低栄養,②低栄養のリスクあり,③栄養状態良好の3群に分類し,それぞれの開始時FIMと3カ月後FIMに有意差があるか調査した.2群の比較にはウィルコクソン順位和検定を用いた.他に3カ月後のFIM利得と栄養状態との関連を調査する目的に重回帰分析を実施した.目的変数はFIM利得,説明変数は年齢,性別,訪問リハ開始時のFIMおよびMNA-SF,MNA-SF 利得とした.検定の有意水準を5%とした.対象者には研究参加に対して同意を得ている.
【結果】
訪問リハ開始時と3カ月後のFIMの平均値(標準偏差)は,それぞれ97.3(20.0),102.6(19.3)であり,2群間で有意差を認めた.FIM利得は5.3(8.3)であった.栄養状態のMNA-SFは,開始時9.1(2.5),3カ月後 10.6(2.3)で有意差を認めた.MNA-SF利得は1.6(2.6)であった.開始時MNA-SFの3群の人数(%)は,①低栄養65名(23%),②低栄養のリスクあり175名(62%),③栄養状態良好43名(15%)であった.①低栄養群の開始時と3ヶ月後のFIMは,それぞれ86.4(24.6),93.9(24.7)であった.②低栄養のリスクありは,開始時FIM 99.3(17.4),3カ月FIM 104.3(17.0)であった.③栄養状態良好は,開始時FIM 105(15.7),3カ月後FIM 108.9(14.6)であった.開始時と3カ月後のFIMは,①低栄養,②低栄養のリスクあり,③栄養状態良好の順に高くなる傾向を示した.また①低栄養,②低栄養のリスクあり,③栄養状態良好のすべての群で,開始時と3カ月後のFIMで有意差を認めた.重回帰分析の結果,FIM利得に対して有意な項目として抽出されたのは,訪問リハ開始時のFIM(β=‐0.34),MNA-SF利得(β=0.35)であった(調整済みR2=0.16).
【考察】
①低栄養と②低栄養のリスクありの合計が約85%となっており,多くが栄養状態で問題を有していた.高齢人口の増加を考慮すると訪問リハにおいて栄養状態の評価は必要と考えた.また対象者の栄養状態に関わらず,訪問リハの介入によって3カ月後のADLが改善することが明らかになった.ただしMNA-SF利得が高いほどFIM利得が高くなる傾向から,訪問リハ介入において栄養状態の改善のアプローチも必要と思われる.開始時FIMが高いほど3カ月後のFIM利得が少なくなる傾向を認めたが,FIMの高さによる天井効果によるものと考えた.これらの結果から,訪問リハ介入によるADL改善の予後予測をおこなうにあたり,栄養状態の評価と栄養状態の改善を考慮に入れる必要があると考えた.
病院の高齢患者の多くは低栄養状態と言われており,ADL改善に負の影響を与えるとされている.そのため訪問リハビリテーション(訪問リハ)でも栄養状態の把握は重要と思われるが,症例数や報告の少なさから栄養状態とADL改善との関連は明らかではない.また訪問リハは介入期間の制限がなく漫然と継続されやすいため,ADL改善の予後予測は重要である.そこで本研究の目的は,訪問リハ開始時の栄養状態が介入3カ月後のADL改善に与える影響を明らかにすることとした.
【方法】
対象は2015~2017年に当センターで訪問リハを開始した283名(平均81.5歳,男性37.5%)とした.疾患内訳は大腿骨頸部骨折64名,脳血管疾患61名,廃用症候群55名,骨関節疾患55名,神経筋疾患24名,その他24名であった.訪問リハ開始時と3カ月後に栄養状態とADLを評価した.ADL評価法はFIM,栄養状態は簡易栄養状態評価法(MNA-SF)を使用した.MNA-SFは栄養評価のスクリーニング法(0~14点)であり,0~7点が低栄養,8~11点が低栄養のリスクあり,12~14点が栄養状態良好と判定する.次に対象者を訪問リハ開始時のMNA-SFを基準に,①低栄養,②低栄養のリスクあり,③栄養状態良好の3群に分類し,それぞれの開始時FIMと3カ月後FIMに有意差があるか調査した.2群の比較にはウィルコクソン順位和検定を用いた.他に3カ月後のFIM利得と栄養状態との関連を調査する目的に重回帰分析を実施した.目的変数はFIM利得,説明変数は年齢,性別,訪問リハ開始時のFIMおよびMNA-SF,MNA-SF 利得とした.検定の有意水準を5%とした.対象者には研究参加に対して同意を得ている.
【結果】
訪問リハ開始時と3カ月後のFIMの平均値(標準偏差)は,それぞれ97.3(20.0),102.6(19.3)であり,2群間で有意差を認めた.FIM利得は5.3(8.3)であった.栄養状態のMNA-SFは,開始時9.1(2.5),3カ月後 10.6(2.3)で有意差を認めた.MNA-SF利得は1.6(2.6)であった.開始時MNA-SFの3群の人数(%)は,①低栄養65名(23%),②低栄養のリスクあり175名(62%),③栄養状態良好43名(15%)であった.①低栄養群の開始時と3ヶ月後のFIMは,それぞれ86.4(24.6),93.9(24.7)であった.②低栄養のリスクありは,開始時FIM 99.3(17.4),3カ月FIM 104.3(17.0)であった.③栄養状態良好は,開始時FIM 105(15.7),3カ月後FIM 108.9(14.6)であった.開始時と3カ月後のFIMは,①低栄養,②低栄養のリスクあり,③栄養状態良好の順に高くなる傾向を示した.また①低栄養,②低栄養のリスクあり,③栄養状態良好のすべての群で,開始時と3カ月後のFIMで有意差を認めた.重回帰分析の結果,FIM利得に対して有意な項目として抽出されたのは,訪問リハ開始時のFIM(β=‐0.34),MNA-SF利得(β=0.35)であった(調整済みR2=0.16).
【考察】
①低栄養と②低栄養のリスクありの合計が約85%となっており,多くが栄養状態で問題を有していた.高齢人口の増加を考慮すると訪問リハにおいて栄養状態の評価は必要と考えた.また対象者の栄養状態に関わらず,訪問リハの介入によって3カ月後のADLが改善することが明らかになった.ただしMNA-SF利得が高いほどFIM利得が高くなる傾向から,訪問リハ介入において栄養状態の改善のアプローチも必要と思われる.開始時FIMが高いほど3カ月後のFIM利得が少なくなる傾向を認めたが,FIMの高さによる天井効果によるものと考えた.これらの結果から,訪問リハ介入によるADL改善の予後予測をおこなうにあたり,栄養状態の評価と栄養状態の改善を考慮に入れる必要があると考えた.