[PN-12-10] " 歌と共に生きる. "
【はじめに】今回,訪問リハビリテーション(以下,リハビリ)の短期集中リハビリにて,最も意味のある生活行為である『シャンソン』に着目し介入することで行動変容に繋がった症例を担当する機会を得た.その作業療法(以下,OT)の詳細を以下に報告する.
【倫理的配慮】本症例には同意を取り,当院倫理委員会の承認を得ている.
【症例紹介】70歳代女性.シャンソン歌手・教室の運営・講師を生業としていた.転倒により骨盤骨折,座骨骨折,左肘頭骨折を受傷され,急性期病院での加療後,回復期リハビリ病棟に入院される.73日リハビリ加療し自宅退院され,訪問OTが開始となる.
【評価】遂行能力は,身体機能は著しく低下(左臀部・肘の疼痛,関節可動域制限[伸展-35°,屈曲80°],筋力低下[握力右18㎏,左12.5㎏],バランス低下,耐久性低下)しており,精神機能は問題なし.日常生活動作(以下,ADL)は,自宅内はなんとか杖歩行自立,家事と入浴に介助が必要な状態で,機能的自立度評価法(以下,FIM)は運動項目82/91点であった. 「歌と共に生きてきた.」と話されシャンソンを中心とした仕事復帰を切実に願っているが,遂行能力低下によって仕事・家事・ADLに対し不安の訴えが多い.個人的原因帰属の低下が著しく,作業機能障害となり,不活発な生活を余儀なくされている.望む作業である,[シャンソン歌手としての仕事]に対し遂行度0/10,満足度0/10, [身の回りの身の回りの動作(入浴,家事含め)]に対し遂行度3/10,満足度2/10であった.
【介入の基本方針】週3回,各1時間の訪問OTにて,遂行能力への介入を行いつつ,身の回りの動作を作業的に遂行できることを合意目標とした.また,訴えを傾聴し受容的に関わることで関係性の構築を図り,最も意味のある生活行為である『シャンソン』に対し具体的に思考・行動できるよう意志の変化を齎すことをOTの基本方針とした.
【経過】①痛みと向き合い傾聴・関係性の構築(介入~20日):不安の訴えを受容・傾聴し,遂行能力への介入後,OTにシャンソンを教授されるようになる.OTも生徒としての役割を遂行し,関係性が徐々に構築される.②ADL向上から,『シャンソン』復帰に向け(~50日):遂行能力向上のタイミングで入浴・家事動作を協業し,個人的原因帰属向上し,自立に至る.仕事復帰へのスケジューリングを協業し,週1回近場でのシャンソン教室再開する.③更なる『シャンソン』の拡大と作業的生活へ(~90日): OTの時間を作業の相談の場として活用されるようになり,自動車運転を伴った遠方でのシャンソン教室再開・コンサートの計画再開を果たす.
【結果】短期集中リハビリ実施加算が適応される約3ヵ月で,シャンソン歌手復帰を成し遂げた.ADL再獲得を果たした(FIM運動項目82点→91点). [シャンソン歌手としての仕事]に対し遂行度8/10,満足度7/10, [身の回りの動作(入浴,家事含め)]に対し遂行度8/10,満足度9/10.左肘関節の関節可動域向上(伸展-15°,屈曲145°),筋力向上(右21㎏,左18㎏)が認められた.
【考察】山田ら(2007)は「意志,習慣化,遂行能力,または環境の変更は,新しい考え,感情,行為が創発するダイナミックな条件を作り出す.」と報告している.遂行能力のアプローチに加え,"歌と共に生きる."という症例の意志を中心に据え,習慣化と環境の変化を十分考慮し,タイミングよく意味のある作業を協業していくことで,症例の中で,新しい考え,感情,行為が創発され,作業的な生活に方向付けることが出来たのではないかと考える.また,介護保険下での訪問リハビリにおける短期集中リハビリにて,個別性を重視し明確な生活行為の目標を持つと共に,高頻度にOTを行うことの有用性を改めて実感することができた.
【倫理的配慮】本症例には同意を取り,当院倫理委員会の承認を得ている.
【症例紹介】70歳代女性.シャンソン歌手・教室の運営・講師を生業としていた.転倒により骨盤骨折,座骨骨折,左肘頭骨折を受傷され,急性期病院での加療後,回復期リハビリ病棟に入院される.73日リハビリ加療し自宅退院され,訪問OTが開始となる.
【評価】遂行能力は,身体機能は著しく低下(左臀部・肘の疼痛,関節可動域制限[伸展-35°,屈曲80°],筋力低下[握力右18㎏,左12.5㎏],バランス低下,耐久性低下)しており,精神機能は問題なし.日常生活動作(以下,ADL)は,自宅内はなんとか杖歩行自立,家事と入浴に介助が必要な状態で,機能的自立度評価法(以下,FIM)は運動項目82/91点であった. 「歌と共に生きてきた.」と話されシャンソンを中心とした仕事復帰を切実に願っているが,遂行能力低下によって仕事・家事・ADLに対し不安の訴えが多い.個人的原因帰属の低下が著しく,作業機能障害となり,不活発な生活を余儀なくされている.望む作業である,[シャンソン歌手としての仕事]に対し遂行度0/10,満足度0/10, [身の回りの身の回りの動作(入浴,家事含め)]に対し遂行度3/10,満足度2/10であった.
【介入の基本方針】週3回,各1時間の訪問OTにて,遂行能力への介入を行いつつ,身の回りの動作を作業的に遂行できることを合意目標とした.また,訴えを傾聴し受容的に関わることで関係性の構築を図り,最も意味のある生活行為である『シャンソン』に対し具体的に思考・行動できるよう意志の変化を齎すことをOTの基本方針とした.
【経過】①痛みと向き合い傾聴・関係性の構築(介入~20日):不安の訴えを受容・傾聴し,遂行能力への介入後,OTにシャンソンを教授されるようになる.OTも生徒としての役割を遂行し,関係性が徐々に構築される.②ADL向上から,『シャンソン』復帰に向け(~50日):遂行能力向上のタイミングで入浴・家事動作を協業し,個人的原因帰属向上し,自立に至る.仕事復帰へのスケジューリングを協業し,週1回近場でのシャンソン教室再開する.③更なる『シャンソン』の拡大と作業的生活へ(~90日): OTの時間を作業の相談の場として活用されるようになり,自動車運転を伴った遠方でのシャンソン教室再開・コンサートの計画再開を果たす.
【結果】短期集中リハビリ実施加算が適応される約3ヵ月で,シャンソン歌手復帰を成し遂げた.ADL再獲得を果たした(FIM運動項目82点→91点). [シャンソン歌手としての仕事]に対し遂行度8/10,満足度7/10, [身の回りの動作(入浴,家事含め)]に対し遂行度8/10,満足度9/10.左肘関節の関節可動域向上(伸展-15°,屈曲145°),筋力向上(右21㎏,左18㎏)が認められた.
【考察】山田ら(2007)は「意志,習慣化,遂行能力,または環境の変更は,新しい考え,感情,行為が創発するダイナミックな条件を作り出す.」と報告している.遂行能力のアプローチに加え,"歌と共に生きる."という症例の意志を中心に据え,習慣化と環境の変化を十分考慮し,タイミングよく意味のある作業を協業していくことで,症例の中で,新しい考え,感情,行為が創発され,作業的な生活に方向付けることが出来たのではないかと考える.また,介護保険下での訪問リハビリにおける短期集中リハビリにて,個別性を重視し明確な生活行為の目標を持つと共に,高頻度にOTを行うことの有用性を改めて実感することができた.