第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-12] ポスター:地域 12

Sat. Nov 11, 2023 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-12-2] 要介護者・主介護者双方に対する社会参加への関わりが社会的ケア関連QOL向上に繋がった訪問リハビリテーション事例

三田 晃希1, 知花 朝恒2, 壹岐 伸弥2, 奥埜 博之1 (1.医療法人孟仁会 摂南総合病院リハビリテーション科, 2.医療法人香庸会 川口脳神経外科リハビリクリニック)

【はじめに】在宅生活を続けていくためには,要介護者と主介護者のQuality Of Life(QOL)が重要となる.また,健康関連QOLのみならず,自分の時間やセルフケア,社会参加などの社会的ケア関連QOL(Social Care Related QOL;SCRQOL)も在宅生活の継続に影響すると思われるものの,訪問リハビリテーション(訪問リハビリ)で具体的に関わった報告は少ない.本報告の目的は,SCRQOLが低値であった訪問リハビリ事例と主介護者に対して,双方へのヒアリング,アンケートの結果から介護サービスの調整の提案と他の介護者への介護指導を実施したことで双方のSCRQOLと事例の健康関連QOLが改善した経過から,作業療法士としての適切な関わり方について後方視的に検討することである.なお,本発表に関し事例,主介護者に同意を得ている.
【事例紹介】事例は左中大脳動脈の脳梗塞を呈した要介護4の80歳代女性である.発症後より5ヶ月の入院加療を経て,主介護者である60歳代の長女と同居のかたちで自宅退院され,退院後より週2回,40分/回の訪問リハビリを開始した.発症前のADLは自立レベルであった.初期評価ではFMA下肢11/34点と身体機能の低下を認めた.認知機能面の低下は認めず,ADLではFIMの運動項目52/91点とトイレ動作など生活全般に介護を要する状態であり,主介護者がADLの介護を担っていた.事例の健康関連QOL評価としてEQ-5D-5LのQOLスコアは0.2/1.0と低値であった.SCRQOL評価としてASCOTを用いたQOLスコアは0.08/1.0と主に社会参加や安全の感覚で低値を示した.主介護者の介護負担感測定尺度としてBIC-11で特に時間的介護負担感が強く,SCRQOL評価として介護者版ASCOTでは特に社会参加が低値を示していた.介入初期は主介護者の時間的介護負担感の軽減や事例の社会参加増大を目的に週1回の半日型デイサービスの利用とADL訓練を実施するもADL,双方のSCRQOLに変化を認めなかった.そのため,改めて,双方へヒアリング,アンケートを行った.具体的には,主介護者に対して,どのような場面で介護負担感を感じているか,負担感軽減に向けてどのように解決して行きたいか等のヒアリング,アンケートを実施し,それを基に事例との対話を行った.結果,主介護者の時間的制約に関してはデイサービスの利用時間,回数の増加,その他家族介護者の支援を求めていた.事例からはデイサービスでの過ごし方について「カラオケが趣味なのでトイレで排泄可能なら1日行きたい」や家族介護に関して「長女以外の介護は怖い」との発言を認めたことから,トイレ動作自立を目的とした動作指導,デイサービス利用時にオムツ対応からトイレ誘導への変更をデイサービスへ依頼した.さらに,時間的制約の解消を目的に近隣に居住する次女への介護指導と週2回の1日型デイサービスへのサービス変更をケアマネジャーへ依頼した.
【結果】ADLではトイレ動作が自立し,FIMの運動項目は57点に向上した. EQ-5D-5Lにおいても0.5へと改善を認めた.ASCOTは安全の感覚や社会参加,有意義な活動の項目が改善し0.8となり「娘のためにできることが増えてよかった」との発言を得た.主介護者の介護負担感はBIC−11で時間的介護負担感の軽減を認めた.介護者版ASCOTの社会参加の項目で改善を認め「家族に任せて孫と遊ぶ時間や美容室に行ける時間が増えた」との発言を得た.
【考察】在宅生活を行うSCRQOLの社会参加,安全の感覚が低値を示した事例と社会参加が低値を示した主介護者に対しては,事例,主介護者双方と利用サービスの中で画一的な動作訓練や介護サービス導入だけでなく,双方の社会参加や安全の感覚が制限されている理由を共有し,解決策を共同して選択していくことを提案することの重要性が示唆された.