第57回日本作業療法学会

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[PN-12] ポスター:地域 12

2023年11月11日(土) 16:10 〜 17:10 ポスター会場 (展示棟)

[PN-12-6] 訪問リハビリテーションで,就労を目指しバス利用を中心に外出練習を行った事例

高松 早紀, 永井 亜希子, 川上 直子, 川北 慎一郎 (社会医療法人財団菫仙会 恵寿総合病院 リハビリテーションセンター)

【はじめに】今回,脳出血後遺症による左片麻痺と高次脳機能障害がある事例に対し,訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)から就労に繋げる機会を得た.公共バス利用に向けた指導,多職種連携の結果,就労継続支援B型事業所(以下事業所)で週2回の就労が可能になったため報告する.本報告に際し家族と本人に説明し同意を得ている.
【事例紹介】症例は40代男性.Z日自宅で右被殻出血を発症し,Z+196日に自宅退院.訪問リハビリ利用開始.屋外杖歩行監視レベルとなり,Z+341日から社会復帰について検討する事となった.BRS左上肢,手指,下肢III.既往に左大腿骨頭壊死あり,長時間の立位は疼痛で困難.歩行は短下肢装具とT字杖使用し日中屋内歩行自立,屋外歩行は監視.高次脳機能は,WAISIIIは境界域.注意の配分に低下あるが,単純作業は1時間程度の持続可能.介護保険は要支援2所持.本人から具体的要望は無かったが,社会と関わる事には興味を示したため,B型での就労を目指す事となった.
【就労支援開始】ケアマネージャーから就労支援センターの相談員(以下相談員)に連絡してもらい,情報交換を行った.事業所が送迎可能な地域まで公共バス利用が必要なため,Z+352日に市内のバス会社の協力のもと乗車評価を実施した.課題は,降車時の転倒リスク,運賃の支払い方法,母親に「周りの人に迷惑がかかる」と強い不安があった事だった.
【介入経過】バスステップは3段で,地面へ降りる段が20cm以上あり,車高を下げても降段は軽介助,手すりと杖を持ち替える必要があった.杖を置く位置と手すりを掴む位置の確認,落とした杖を拾う練習を実施した.自主練習で最寄りのバス停までの400mの散歩を日課とした.母親には介助方法を指導し,本人と一緒にバス利用練習を開始してもらった.母親は不安から過介助だったが,訪問リハで本人と母親に実施状況を確認しながら,練習を継続.反復することで徐々に慣れ,監視でバスの乗降可能となった. Z+519日OTがバス停で待機し事例一人でバス乗降練習も実施できた.その後冬季となり,本人の希望で春からの就労を調整することとした.母親との練習は継続し,冬用の靴での歩行練習や雨具の検討を行った.事業所からの帰宅時は公共バスダイヤの都合で乗り換えが1回増えるため,転倒リスクが高まる事を事業所に相談,帰宅は送迎してもらえる事となった.
【結果】Z+706日,相談員,事業所職員,本人,母親,OTで就労に向け面談.4日間の研修期間で片手でも行える仕事を試した.その結果座位で行えるタオルを畳む作業が本人に適していた.仕事の様子を相談員に確認してもらい問題なし.Z+732日から週2回の就労開始となった.通勤時間は学生や他の通勤者で混み合うため,慣れるまで母親の付き添いとし,支払いは回数券を使用した.その後2週間程で母親の付き添いなく安全に公共バス利用が可能となった.
【考察】今回の事例は,事業所への移動手段の公共バス利用が課題となった.訪問リハでは動作練習以外にも,多職種との連携,地域のバス会社の協力を得る事,母親の指導等多岐に渡る調整が必要だった.発症から時間がかかったが,就労に向けてOTを継続し,本人の状態に合わせて連携できたことで今回の就労に繋がったと考える.