第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-12] ポスター:地域 12

Sat. Nov 11, 2023 4:10 PM - 5:10 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-12-8] 訪問リハビリテーション事業所における地域展開の一例

浅野 友佳子1, 中村 充雄2, 中村 眞理子2 (1.文屋内科消化器科医院訪問リハビリテーションらいらっく, 2.札幌医科大学保健医療学部)

<はじめに>
 日本訪問リハビリテーション協会では訪問リハビリテーションとは疾病や加齢等によりICFでいう健康状態を害した人だけでなく,健康状態を損なう恐れのある者及びその家族や生活を共にする地域住民の全てを対象と捉え,その対象者が生活を営む圏域(地域)に出向き,リハビリテーションの立場から行われる支援の全ての総称を指すものである.と定義されている.一方,農村部や地方都市では人口減少による病院の小児科や産婦人科の撤退などの問題により適切な支援を受けられずに地域で生活している子どもも存在する.今回,当事業所が展開する活動をきっかけに地域の小学校や保育所に作業療法士として関わる機会を得たためその内容と今後地域での作業療法の展開について必要と考えられる点について報告する.なお,報告にあたり関係機関には同意を得ている.
<保育所や小学校支援のきっかけ>
 当事業所では放課後等デイサービスや生活介護事業所,障害者能力開発校,高次脳機能障害の自助グループ,高次脳機能障害者や発達障害者の家族会の設立・学習会など様々なところで保健所や他事業者と協働して事業を展開している.その中でも今回,高次脳機能障害者の関係者学習会に参加していた保健師や相談員と発達障害者の家族会に参加していた保護者から家族会等での作業療法士の関与について子供発達支援センターに伝えられ,地域療育協議会で講話依頼を経て,保育所や小学校へ介入するようになった.
<保育所での介入>
 保育所は年に1回①子どもと保護者が一緒に遊べる遊びの紹介②身体や認知の発達についての講話を依頼された.ともに対象年齢別に遊びを用意し,子どもと保護者が一緒に遊びその遊びの意味や発達ついて話をすることで,保護者の子供への関心や子供と接する時間を意識的に増やそうとする保護者が増えるなどの効果が得られた.また,保育士に関しても遊びと発達の関係の再確認や保護者に対する遊びの重要性を伝える機会になったと感想をいただいた.
<小学校での介入>
 小学校では支援学級の子どもを中心に月に1回介入する機会を得た.実際の学校での授業の観察から評価を行い,実際に子どもと一緒に遊ぶことや担任の先生と一緒に介入することを行った.その際,評価に関しては次回介入時までに内容をまとめわかりやすいイラストなどを入れ子どもの強みと弱みに関して認知や身体機能面から説明したものをメールで送信した.また,一緒に遊ぶ際もビデオで撮影し,その後先生方と遊びの際のポイントや内容について話し合いの場を持った.担任の先生と一緒に介入する際も先生の行いたいことを事前に聞き,その動きが出せるよう補助をし,その後内容の確認を行った.先生からは分析の仕方や介入方法のきっかけがつかめ,他の児童にも生かせそうとの感想をいただいた.
<考察>
 当事業所は介護保険の対象者が中心の事業所であるが,当事業所が展開する事業がきっかけとなり,地域での子どものリハビリテーションや発達についての相談が掘り起こされた.支援に係る資源が少ない地域では訪問リハ事業所などが積極的に地域に赴き介入する必要性を感じた.普段から地域でリハビリテーションを必要としている人たちを調査し,支援を行い,様々な職種の人たちと交流するきっかけを作り,必要なところに作業療法を届け,適切なところに繋げられる幅広い知識と他職種と連携する技量が地域展開をする上で必要だと考える.また,今回対象が異なるととらえていた事業からも情報がつながったことから,各々の活動の広報の範囲を限定することなく,広く行う事でニーズの掘り起こしが可能になることが示唆された.