第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-2] ポスター:地域 2

Fri. Nov 10, 2023 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-2-12] 岩手県シルバーリハビリ体操指導者養成事業における活動の拡がりと課題

小志戸前 奈那, 渡部 祐介, 佐藤 英雄, 高橋 真由美, 大井 清文 (公益財団法人いわてリハビリテーションセンター)

【はじめに】岩手県では,地域包括ケアシステムの構築に向けた介護予防の一環として,平成27年度より「岩手県シルバーリハビリ体操(以下シルリハ体操)指導者養成事業」を実施しており,当センターではその委託を受け,同年度より指導者養成講習会を開催している.今回は,本年度までの本事業の活動の拡がりと事業展開における課題について報告する.
【倫理的配慮】指導者等の情報が個人を特定できないデータとして統計的に利用する事への同意を得ている.
【シルリハ体操の概要】シルリハ体操は,茨城県立健康プラザの大田仁史先生により考案された92種類の体操から成り,対象は健康高齢者から虚弱高齢者,更には要支援者や要介護者も含まれ,高齢者の尊厳を守り日常生活の自立支援を目指している.その中で最も特徴的な点は,住民が住民を育てる住民主体型の介護予防システムということである.シルリハ体操の指導者は1~3級指導者で構成され,3級指導者は地域活動の実践者,2級指導者は地域活動のリーダー,1級指導者は地域の指導者であるとともに,3級指導者を養成する役割が位置付けられている.1級指導者を養成した市町村では,その次年度よりそれまでの県主催から市町村主催での講習会開催が可能となる.
【活動経過】平成27年度の事業開始以降,今年度新たに参加した滝沢市を加え,計15市町村で789名の指導者が養成されている(令和5年2月現在).このうち2級指導者は329名,1級指導者は59名となっている.また,令和4年度の市町村開催は,9市町村において3級講習会が開催された.
【リハ専門職との連携の現状】本事業においては,医師やリハ専門職および保健師の役割が重要である.殊に市町村主催の講習会は,保健師等の市町村担当者と1級指導者が運営の主体となるが,専門性の高い科目(介護予防論や神経解剖学,摂食・嚥下障害)の講義や講習会の見守り,終了後の振り返り指導等を医師とリハ専門職が担っている.市町村主催の講習会においては,これまで当センターおよび地域リハビリテーション体制における盛岡南部広域支援センターの南昌病院が主に支援してきたが,実施市町村の拡大に伴い令和元年度より,宮古圏域の宮古第一病院,盛岡北部圏域の東八幡平病院といった広域支援センターが,当センターとの連携・協力により圏域のリハ専門職を対象とした研修事業を行うなど,指導者や行政と連携し講習会の準備運営の支援を行ってきた.さらに広域支援センターによる支援が十分に行き届かない市町村においても,当地のリハ専門職を活用し,山田町,二戸市や西和賀町にてその実践や支援体制を構築している.
【考察(課題も含めて)】平成27年度から開始された本事業は事業が拡大している一方で,コロナ禍の影響もあり,新たな指導者の養成と指導者のレベルアップが大きな課題となっている.また指導者の活動への支援としては,指導者の定例会での体操フォローアップや体操教室立ち上げなど多岐にわたり,リハ専門職による支援・協働は不可欠となっている.特に市町村主催に移行したところでは,広域支援センターや地域のリハ専門職の更なる協力が必要になっている.また資源の少ない市町村においては,市町村相互の連携強化も必要になっており,県支援センターである当センターとしても本事業に参加出来るリハ専門職の更なる育成を進めていき,継続して講習会や体操の質を維持・向上していけるよう,今後も積極的な支援を行いながら,県内全域に浸透すべく事業の推進に努めていく所存である.また作業療法士として地域共生社会の実現に向けて,地域リハビリテーション支援体制の下で行政,保健師,医師,他のリハ専門職等と連携しながら地域づくりに貢献していきたい.