第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-2] ポスター:地域 2

2023年11月10日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-2-2] 孤独・孤立の生きづらさに対する多職種連携の実践

山下 祐司, 中田 麻友, 澤井 直樹, 西部 友璃加, 久米 由貴 (NPO法人コネクトスポット自立訓練・保育所等訪問支援 多機能事業所)

【はじめに】
内閣府が2021年12月に16歳以上を対象として孤独・孤立の実態調査を初めて実施した.結果,孤独感がある(社会とのつながりが希薄になっている)と答えた人は全体の36.4%となっており,新型コロナウイルスの長期蔓延や不安定な社会情勢から孤独・孤立を抱えた方は増えていると考えられる.その中でも「孤独感が常にある」と答えている方(4.6%)の背景に「心身の不調」「相談相手の不在」「未就労」「低所得」などがあり,支援に当たる上では心身機能だけでなく,社会参加へのアプローチも大切だと考えられる.当事業所はOTが発起人となり多職種で福祉事業所を立ち上げ,ひきこもり・不登校・発達特性・メンタル不調・貧困など多様な背景から孤独・孤立となっている人に伴走しつつ,共生社会の実現を掲げている.本発表ではこれまでの取り組みと今後の展望を報告する.
【事業概要】
1 障害福祉部門 ①成人の方へのつながりづくり(自立訓練):自宅への訪問支援(家族支援も含む),日中通える居場所作り,就労支援に取り組み,家庭だけでなく地域とのつながり(余暇支援や友達づくりも含む)を築けるように伴走している.②子どもの方へのつながりづくり(保育所等訪問支援):学校へ訪問して先生と勉強やコミュニケーションがより良くなるような環境づくりについて話し合いながら学校が生徒たちの居場所になるようにサポートする.
2 メディア活用部門 ①オンラインでも相談先を調べられるポータルサイト:「学校での悩みを聞いてほしい」など自分の欲しい団体情報を調べることができる.②市内の団体のネットワークづくり:お互いの団体についての意見交換の場づくりやイベントの企画をしている.③市民ライターの育成:生きやすさを伝えるまちの記事の配信をしている.
【結果】
①自立訓練(2019年9月~2022年12月)利用者は述べ68名(18〜60歳 平均年齢30.7歳).診断としては多い順に発達障害(34.8%),統合失調症・気分障害(31.9%),神経症(14.5%)となる.利用後は就職(バイトや正社員など),就労支援への移行,NPO団体へ移行などその人に合った地域資源とのつながりをつくることができた.②保育所等訪問支援(2020年4月〜2022年12月)利用児は述べ26名(小1〜中3)診断はASD,ADHD,LD,愛着障害など.市内の20の小中学校の普通級・支援級在籍の生徒(不登校の生徒も含む)のフォローや家族支援を実施.利用後は普通級で落ち着いて過ごせるようになったり,先生が安心して本人に対応できるようになったり,出席日数が増えたりなど学校とのより良いつながりづくりを行うことができた.③メディア活用部門(2021年5月~2022年12月)ポータルサイトの支援団体登録は25で行政,病院,フリースクール,市民活動団体などが掲載されイベント情報も毎月配信している.また団体間のネットワーク作りができる交流の場も企画している.5名の市民ライター育成を行い,まちの駄菓子屋,図書館,認知症の方のコミュニティなどの記事を配信している.
【今後の展望】
孤立・孤独の生きづらさを予防する取り組みとして①通信制高校の生徒に向けたコミュニケーション講座やキャリア教育の提供②企業の人事部と連携してメンタルヘルスの整備③道ゆく人が手に取れるように地域の掲示板等にポストカード(メンタルヘルスに関わるもの)の設置などをして行くことで,地域に暮らすみんながつながりを感じられる仕組みづくりをしていきたいと考えている.