第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-2] ポスター:地域 2

Fri. Nov 10, 2023 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-2-3] 住民主体!持続したフレイル予防の実現に向けて!

金久 雅史1, 有光 一樹2, 杉本 徹3, 桂 雅俊4, 岡野 真也5 (1.高知リハビリテーション学院, 2.高知リハビリテーション専門職大学, 3.リハビリテーション病院すこやかな杜, 4.土佐リハビリテーションカレッジ, 5.須崎くろしお病院)

【はじめに】
 豊かな山々に囲まれた高知県仁淀川町は,高齢化率55.8%(令和4年4月時点)と,全国的にも高齢化先進町である.同町では住み慣れた町で元気に過ごすために,令和3年5月から住民主体で取り組む短期集中型総合プログラム「ハツラッツ」(以下ハツラッツ)を展開し,高知県作業療法士会から作業療法士(以下OT)5名がチームで参画している.ハツラッツ開始後,約1年半が経過し,令和5年2月時点での卒業生は延べ36名となった.今回,ハツラッツが卒業後の健康維持やフレイル予防に寄与しているかどうか,モニタリングとして体力測定を実施したため,結果とともに考察を加えて報告する.なお,本報告は同町および該当住民に報告の趣旨を説明し同意を得ている.
【ハツラッツの活動】
 ハツラッツでは,フレイルの徴候が認められる者を対象とし,運動・栄養・口腔を3本柱に掲げ,総合事業における通所型サービスCの手法を取り入れ,週2回半日型で3ヶ月間を1クールとして,下肢筋力トレーニングや体力測定を住民主体で実施している.OTは住民主体を後方支援する役割で参加している.ハツラッツの魅力の一つは,フレイル徴候を認めて参加した「鯉さん」と呼ばれる対象者が,卒業後は新たな鯉さんを支える側に回る「お支えさん」としての役割を担うことである.ハツラッツの会場はいつも熱気と笑顔に溢れており,住民同士の賑やかな交流が絶えない点も魅力の一つである.
【方法と統計】
 ハツラッツを経験した卒業生11名(男性6名,女性5名)を対象とし,平均年齢80.7±6.1歳,卒業後の平均月数は11.2±5.0ヶ月であった.モニタリングとして5m歩行,Time Up and Go test(以下TUG),片脚立位バランス,Chair-Standing test 30(以下CS-30),握力測定を実施した.各項目はハツラッツに鯉さんとして参加した時期にも測定しており,開始時・卒業時・モニタリング時の測定結果についてTukey-Kramaer検定を用いて検討した.有意水準は5%未満とした.
【結果】
 体力測定の結果を開始時・卒業時・モニタリング時の順に示す.5m歩行は3.2±0.7秒・2.5±0.4秒・2.6±0.5秒,TUGは7.5±1.3秒・6.0±1.3秒・6.3±1.5秒,片脚立位バランスは11.8±8.9秒・18.6±12.3秒・19.2±9.4秒,CS-30は16.6±3.8回・25.2±4.9回・26.4±6.0回,握力は28.5±9.7kg・31.1±9.8kg・30.9±10.0kgであった.全ての測定項目において開始時と卒業時,開始時とモニタリング時において有意な向上を認めた.
【考察】
 日本各地で展開されている総合事業における短期集中型サービスでは,卒業後早期に再びフレイル状態に陥るケースも少なくない.今回,卒業後数ヶ月が経過しても,その効果を維持できていることが確認された.これは,卒業後もお支えさんの役割を担うことで,自身の社会参加に寄与していることが要因であると考えられる.また,卒業後ハツラッツに稀にしか参加していなくとも,体力の維持・向上を認めた対象者も確認された.ハツラッツを経験して自ら行動変容したことが,社会性を高め,日常生活の活動量維持に繋がっていることが推察される.加えて,対象者以外の卒業生らも,その多くが地域のフレイル予防活動に積極的に参加しており,体力も維持されていることが予測される.循環型の住民同士で支え合うハツラッツの手法は,持続したフレイル予防に大きく貢献できる活動であると考える.