[PN-2-7] 家事練習の効果と退院後の実施状況に関する調査
【はじめに】当院作業療法部門では,自宅に退院した患者やその家族を対象として「退院後の生活に関するアンケート調査」を実施している.本研究では,アンケートを用いて退院後の家事動作の状況について聴取し,今後の作業療法介入で必要な視点について検討することを目的とした.
【対象と方法】対象は2021年3月~2022年9月までに当院回復期リハ病棟から在宅復帰し,且つ当院入院中に家事動作練習を実施した患者のうち,返送があった96名分の回答とした.退院前に退院後アンケートを配布し,退院1~2週間後を目安とし郵送にて回収した.調理,掃除,洗濯の3つの家事動作について退院後に実施しているか否かを聴取した.なお,各項目については当院で練習を実施した動作にのみ回答するように事前に患者へ伝達した.退院後に家事を再開している患者に対しては,動作の中での困りごとについても自由記載での聞き取りを行った.また,入院中に実施した家事動作練習について「とても役に立った」,「少し役に立った」,「ほとんど役に立たなかった」,「全く役に立たなかった」,「わからない」の5件法で聴取し,役に立った練習についても複数選択式(実際の家事練習,福祉用具などの情報提供)で回答を得た.本調査は,当院の倫理委員会での承認を受け,アンケートの回答をもって同意を得た.
【結果】対象の疾患は脳血管疾患37名,整形疾患37名,中枢神経系疾患14名,末梢神経系疾患4名,廃用症候群4名であった.当院入院中に調理練習を実施した患者は81名であり,そのうち62名(76.5%)が退院後に調理を実施していた.同様に,掃除は練習を行った患者84名のうち,61名(72.6%)が退院後に実施していた.洗濯は練習を行った患者88名のうち,72名(81.8%)が退院後に実施していた.当院での家事動作練習については,「とても役に立った」81名,「少し役に立った」10名,「ほとんど役に立たなかった」1名,「全く役に立たなかった」0名,「わからない」4名であった.実際の家事動作練習が役に立ったと回答した人は60名,福祉用具などの情報提供が役に立ったと回答した人は24名であった.困りごとの自由記載欄には,「鍋などの重たいものは家族に手伝ってもらっている」,「食材を切ることのみ行っている」などの意見が散見された.
【考察】調理,掃除,洗濯のいずれの家事動作も7割以上の患者が退院後に実施していた.また,当院での家事動作練習について9割以上の人が「役に立った」と回答していることからも,入院中の家事動作練習は有用であることが示唆された.実施した割合に関しては,洗濯が最も多い結果となっており,次いで調理,掃除となった.先行研究において,洗濯や食事の後片付けは比較的難易度が低く,再開に至りやすい家事項目であると述べられており(小林竜ら,2019),本研究においても同様の結果となった.しかし一方で,「家族に手伝ってもらっている」,「動作を部分的に行っている」等の意見が聞かれたことから,動作の全てを独力で行えていない人が一定数いることが分かった.特に調理において家族の協力を得ているといった意見が多く見られた.調理は工程数が多く,またメニューによっても方法が異なるため,動作を完遂する難易度は他の家事に比べて高くなることが示唆された.家族と協業して行うことも方法の一つであるが,それに対する患者の満足度については知る必要があると考える.入院中に家事動作練習を実施する際には,病前の家事動作実施状況だけでなく,退院後の必要性や患者本人の希望などを十分に聴取することでより個別性の高い訓練が行えるのではないかと考える.
【対象と方法】対象は2021年3月~2022年9月までに当院回復期リハ病棟から在宅復帰し,且つ当院入院中に家事動作練習を実施した患者のうち,返送があった96名分の回答とした.退院前に退院後アンケートを配布し,退院1~2週間後を目安とし郵送にて回収した.調理,掃除,洗濯の3つの家事動作について退院後に実施しているか否かを聴取した.なお,各項目については当院で練習を実施した動作にのみ回答するように事前に患者へ伝達した.退院後に家事を再開している患者に対しては,動作の中での困りごとについても自由記載での聞き取りを行った.また,入院中に実施した家事動作練習について「とても役に立った」,「少し役に立った」,「ほとんど役に立たなかった」,「全く役に立たなかった」,「わからない」の5件法で聴取し,役に立った練習についても複数選択式(実際の家事練習,福祉用具などの情報提供)で回答を得た.本調査は,当院の倫理委員会での承認を受け,アンケートの回答をもって同意を得た.
【結果】対象の疾患は脳血管疾患37名,整形疾患37名,中枢神経系疾患14名,末梢神経系疾患4名,廃用症候群4名であった.当院入院中に調理練習を実施した患者は81名であり,そのうち62名(76.5%)が退院後に調理を実施していた.同様に,掃除は練習を行った患者84名のうち,61名(72.6%)が退院後に実施していた.洗濯は練習を行った患者88名のうち,72名(81.8%)が退院後に実施していた.当院での家事動作練習については,「とても役に立った」81名,「少し役に立った」10名,「ほとんど役に立たなかった」1名,「全く役に立たなかった」0名,「わからない」4名であった.実際の家事動作練習が役に立ったと回答した人は60名,福祉用具などの情報提供が役に立ったと回答した人は24名であった.困りごとの自由記載欄には,「鍋などの重たいものは家族に手伝ってもらっている」,「食材を切ることのみ行っている」などの意見が散見された.
【考察】調理,掃除,洗濯のいずれの家事動作も7割以上の患者が退院後に実施していた.また,当院での家事動作練習について9割以上の人が「役に立った」と回答していることからも,入院中の家事動作練習は有用であることが示唆された.実施した割合に関しては,洗濯が最も多い結果となっており,次いで調理,掃除となった.先行研究において,洗濯や食事の後片付けは比較的難易度が低く,再開に至りやすい家事項目であると述べられており(小林竜ら,2019),本研究においても同様の結果となった.しかし一方で,「家族に手伝ってもらっている」,「動作を部分的に行っている」等の意見が聞かれたことから,動作の全てを独力で行えていない人が一定数いることが分かった.特に調理において家族の協力を得ているといった意見が多く見られた.調理は工程数が多く,またメニューによっても方法が異なるため,動作を完遂する難易度は他の家事に比べて高くなることが示唆された.家族と協業して行うことも方法の一つであるが,それに対する患者の満足度については知る必要があると考える.入院中に家事動作練習を実施する際には,病前の家事動作実施状況だけでなく,退院後の必要性や患者本人の希望などを十分に聴取することでより個別性の高い訓練が行えるのではないかと考える.