第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-3] ポスター:地域 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-3-1] 住民主体の通いの場が高齢者の心身・生活機能に与える影響

大森 大輔1, 高原 正樹1, 井村 亘2, 倉本 由伽3, 島村 れい4 (1.医療法人 紀典会 北川病院リハビリテーション室, 2.玉野総合医療専門学校 作業療法学科, 3.株式会社三葉 COMPASS発達支援センター丸亀Link, 4.和気町地域包括支援センター)

【背景】我が国は,諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行している.このような状況の中,厚生労働省においては,2025年を目途に,高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで,可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制の構築を推進している.
岡山県南東部に位置する和気町は人口約1万3千人で高齢化率は41.6%であり,地域包括ケアシステム構築は喫緊の課題である.
和気町地域包括支援センターは高齢者が主体となって行う通いの場の充実を図り,住民がお互いに助け合い住み慣れた地域で自分らしく生活することを目指している.我々は,和気町地域包括支援センターからの依頼で2019年に認知機能低下とフレイル予防を目的に住民主体の通いの場を立ち上げた.しかし,2020年から新型コロナウイルス感染拡大のため,その通いの場の運用は中止となっていた.その後,2022年7月より通いの場が再開し,参加者の心身機能や生活機能面の状態確認と住民主体での運用の再教育のための関わりを報告する.
【目的】本研究は高齢者の認知機能低下とフレイル予防に資する知見を得ることをねらいとして,住民主体の通いの場の参加が高齢者の心身・生活機能に与える影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】研究デザインは,4派のパネル調査(1派:2019年6月・2派:2019年12月・3派:2022年7月・4派:2023年1月)とした.
対象者は和気町在住の高齢者で4派とも参加した9名(70歳~85歳)とした.
住民リーダー中心に運動や体操を実施してもらい,実施方法の違いや忘れている運動は作業療法士がその都度指導を行った.
介入方法は,準備体操・転倒防止体操・スカット体操・リーダー考案の活動を住民リーダー中心に実施することした.頻度は週1回とし,1回の活動時間は2時間とした.
アウトカム指標はMoCA-J,生活のひろがり,人とのつながり,FAI(手段的日常生活活動),生きがい尺度,握力,5m歩行速度,片足立ち時間,Timed Up&Goテスト(以下:TUG)とした.解析は4派の各アウトカム指標の得点の差をフリードマン検定を用いて比較した.
【倫理】本研究は,研究者所属施設の責任者の許可を得た後に,対象者に対して口頭および文章で説明して同意を得て実施した.また,申告すべき利益相反はない.
【結果】MoCA-J,5m歩行速度は1派と2派で有意に改善し,2派と3派で有意に低下を示していた.握力は1派と3派で有意な低下を示し3派と4派で有意に改善を示していた.TUGでは3派と4派で有意に改善を示していた.その他のアウトカム指標については,有意な差は認められなかった.
【考察】3派での身体機能や認知機能の低下はコロナ禍による外出自粛や通いの場の中止のためによるものだと考える.生活機能や生きがいなどは維持できていることから,コロナ禍においても他者と接触が少ない畑仕事などは継続できたからではないかと考える.
住民主体の通いの場の再開後は住民同士が一緒に運動や会話することがことで,身体機能が改善し,認知機能や生活機能は維持された考える.
中止した2年間で運動・体操の内容を忘れており,住民リーダーを中心として運動や体操の再教育を行うことで,住民主体で運営できるようになったと考える.