第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-3] ポスター:地域 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-3-2] 介護予防ケアマネジメントを支援する同行訪問事業における役割の検討

園山 真弓1,5, 森田 祐司2, 山寺 直人2,5, 大山 勝範3,5, 由利 禄巳4,5 (1.篤友会リハビリテーションクリニック, 2.豊中市 福祉部長寿安心課 介護予防係, 3.千里中央病院, 4.森ノ宮医療大学 総合リハビリテーション学部作業療法学科, 5.大阪府作業療法士会)

【はじめに】2012年に創設した介護予防・日常生活支援総合事業(以下,総合事業)は地域の状況に応じた工夫が必要(厚生労働省,2015)であり,中でも介護予防ケアマネジメントの質の向上が求められている(竹田,2017).大阪府豊中市では介護予防ケアマネジメントにおける自立支援の考え方やアセスメント力向上を目的に,2020年度からリハビリ専門職(以下,リハ職)による介護支援専門員 (以下,ケアマネ)らとの同行訪問を1生活圏域で試行的に開始し,2022年度より全市展開した.2022年度より大阪府作業療法士会に協力依頼があり演者らが携わっている.リハ職は1回の同行訪問でADL・IADLの課題把握や自立支援に向けた助言などを行い,3ヶ月後に書面で経過報告を受けている.対象者および豊中市には報告の許可を得ている.
【目的】夫入所後の独居生活で訪問介護の利用を希望した事例の同行訪問経験を通してリハ職の役割と多職種連携の課題を検討したので報告する.
【事例】86歳女性,要支援1,戸建て住宅で独居(夫は3ヵ月前に入院後施設入所)である.洗濯物干し場は1階で段差あり(手摺りなし).既往歴は圧迫骨折(4,5年前),左膝痛(1回/2か月整形外科通院),多発性骨髄腫の疑い(数年前・定期的に検査).胆石・気管支喘息・不整脈・白内障・高血圧症に対する服薬あり.
【生活課題アセスメント】過去に体操教室の参加経験あり.夫と同居時は調理や洗濯など行っていたが,夫入院頃より浴槽からの立ち上がりが困難になった.夫入所後は洗濯回数が減少し,洗濯物干し場の段差昇降の困難さがあり,調理は温めのみであった.外出はバス・電車を利用するも受診のみで買い物は宅配サービスを利用.身体機能評価は片脚立位(右8.08,左2.15秒),5回立ち上がり(8.47秒),Timed Up & Go-Test(9.95秒)で膝の屈曲制限があった.夫の入所に伴う役割喪失と気力低下による活動量減少が,廃用性機能低下(バランス能力や下肢の柔軟性)に影響を及ぼしたと考えた.通所型サービスC(以下,通所C)の利用で身体面の機能低下は改善すると予測した.そこで,生活課題は「浴槽からの立ち上がり困難と洗濯物干し場などの段差昇降の困難さ」とし,改善を目指した通所Cの利用について本人と合意形成し,ケアマネに助言した.ケアマネには通所C終了後に通いの場へつなぐことも助言した.
【結果と考察】通所C終了後は手すりの導入もあり生活課題は改善した.数年ぶりに買い物にも行った.しかし,終了時カンファレンスでは,参加時の様子から心理面の支援が必要と判断され,通所リハビリテーションが勧められた.総合事業においてケアマネを支援する同行訪問の取り組みは報告がなく,新たな取り組みである.今回の事例は合意した生活課題は改善したが心理面の支援が必要と判断された.梅崎ら(2015)は配偶者死別の高齢女性が役割・趣味・友人交流の乏しさを報告している.類似した状態の本事例は配偶者の喪失という生活歴に留意したアセスメントが必要であったと考えられた.また,由利(2016)らは介護予防ケアマネジメントにおける連携は本人の意味や価値に沿った生活目標を設定し,多職種で共有することが重要と報告している.合意した生活課題が改善されても自立した生活に至らなかったのは,生活課題の背景にある個人の意味や価値のアセスメント不足が影響している可能性があると考えた.生活課題つまり目標設定は作業に対する意味や価値を重視した合意形成を行い,連携する必要があったと考えた.同行訪問におけるリハ職の役割は身体機能測定や自立度に加え,個人因子や心理面,さらには作業に対する意味や価値のアセスメントが重要で,伝える工夫が必要であると考えた.