第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-3] ポスター:地域 3

2023年11月10日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-3-3] 回復期リハビリテーションにおける余暇活動支援に関するスコーピングレビュー

溝部 晃佑1, 白井 はる奈2, 竹原 敦3 (1.地方独立行政法人市立吹田市民病院, 2.佛教大学保健医療技術学部作業療法学科, 3.群馬パース大学リハビリテーション学部作業療法学科)

【はじめに】
 回復期リハビリテーション(以下, 回復期リハ)は日常生活活動(以下, ADL)に基づくアウトカム評価が用いられ, 在宅復帰率の基準が定められていることから, 作業療法士(以下, OT)はADLに焦点を当てた実践が求められている. 社会生活基本調査(総務省 2021)に示されている, 各人が自由に使える時間を余暇と捉えると, 1日の生活の6時間22分を余暇が占めており, 回復期リハにおいても, より円滑に在宅での余暇活動が可能となるような支援が必要であると考えられる. 筆者は, 実践の中で病前の余暇活動の経験が少ない対象者や, 「やりたいことが何もない」と語る対象者など, 余暇活動支援に苦慮した事例を経験した. そこで本研究は, 回復期リハにおける余暇活動に対し, どのような評価や介入などが実施されているかを明らかにするためにスコーピングレビューを行った.
【方法】
 本文献レビューは, スコーピングレビューの報告ガイドに準拠して実施した. データーベース検索は, 医学中央雑誌Webを使用し, 2023年2月3日に実施した. 会議録を除外し, 検索対象期間を未設定とした上で, 検索語を「回復期リハビリテーション」AND「余暇」とした. 検索結果から, 3名で本研究の対象となる文献を選出した. 最終的に得られた文献について, 文献の基本情報, 対象者の属性, 余暇活動に対する評価, 介入, 成果, 関連するその他の要因を検討した.
【結果】
 検索の結果90件が得られ, 最終的に本研究目的に合うと判断した4件を研究対象として採用した. 対象文献の研究者は, OT1名, 理学療法士1名, 看護師1名, 職種不明1名であった. 余暇活動に関する評価は, 身体機能やADL, 有能感や自己効力感などの心理的側面, 性別や性格, 趣味, 趣向, 病前の仕事や余暇などの個人因子であった. 介入は, 機能練習やADL練習と並行し, 余暇活動を用いた練習, 対象者との細やかな対話, 家族とのコミュニケーション, 他職種連携, 新たな活動の模索などであった. それにより, 対象者の身体機能や動作能力の向上, 病前と同様または関連した余暇活動の獲得, 新たな余暇活動の獲得, 前向きな発言, QOLの向上などの成果が得られていた. 用いられていた理論として, ロイ適応看護理論における役割機能様式と人間作業モデルがそれぞれ1件であり, 対象者の役割獲得と関連する内容であった.
【考察】
 回復期リハの余暇活動支援は, 身体機能や動作能力に加え, 特に個人因子や心理的側面を評価しており, 機能練習や動作練習と並行して余暇活動を実施し, 家族や他職種との連携, 個人因子を手掛かりに新たな活動の模索が行われていた. その結果, 病前と同様または異なる方法で余暇活動に従事することや, 心理的側面の向上が示唆された. 余暇活動支援には個人因子を踏まえた上で心理的資質や価値観, 社会背景の評価が重要であると言われており(日本作業療法士協会 2019), 多様な形態の余暇活動の特性を理解し, 身体機能やADLだけでなく, その活動を行う対象者の個人因子を面接等により評価することが重要であると考えられる. また, 看護及び作業療法領域の全体理論を用いた役割に焦点を当てた報告があり, 余暇活動の役割に関する体系的な支援が重要であることが示唆される.
 本研究で得られた文献は4件と少なく, OTによる文献は1件であった. とは言え, OT協会の事例報告制度や作業療法学会では, 回復期リハにおける余暇活動に関する報告は散見され, 余暇活動支援を重要と考えるOTは少なくない. 社会生活に向けた余暇活動支援の必要性は明らかであり(酒井 2016), 余暇活動への実践を社会に示すことが今後の課題であると考える.