第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-3] ポスター:地域 3

Fri. Nov 10, 2023 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-3-8] 高齢者の認知症予防を目指した楽しさプログラムはいきいき百歳体操よりも認知機能改善に有効か?

本家 寿洋1, 大山 千尋2, 千葉 幸子3, 小林 京子4, 林 孔美4 (1.北海道医療大学大学院リハビリテーション科学研究科, 2.砂川市立病院, 3.花月鍼灸院, 4.上砂川町福祉課保健予防係)

【序論】WHO(2019)は,認知症低減には運動を推奨するがエビデンスは低く,いまだ認知症予防のエビデンスが乏しい状況(山崎,2020)である.一方で,平成23年に認知症予防の目的で上砂川町全8地区のいきいき百歳体操(以下,体操)を開始したが,認知症は要介護要因第1位の40%と現在も変化がなく,認知症予防が町の大きな課題であった.そこで上砂川町は,認知症の認知機能が改善した楽しさの研究(大山ら,2019)に着目し,高齢者への認知症予防の新たなモデル事業として,筆頭筆者が開発した<生涯人生を楽しむための楽しさPG>(以下,楽しさPG)をコロナ禍の2021年に開始した.本研究の目的は,楽しさPGが体操よりも認知機能,生活満足度,意欲低下,歩行スピードの改善に有効かを検討することである.
【方法】研究デザインは単盲検非ランダム化比較試験で大学の倫理委員会の承認を得た.対象者は,保健師が文書と口頭で説明して書面で同意を得た上砂川町のADL自立高齢者37名で,認知症者は除外した.実施は,事前アウトカム→12回3か月間実施→事後アウトカムの流れで1回目は2021年3月にA地区9名の楽しさPG群(以下,PG群)とC地区9名の体操群,2回目は2022年6月にB地区11名のPG群とD地区8名の体操群とし,体操群は体操のDVDを見て1回30分実施した.PG群は体操実施後に楽しさPGを60分行った.楽しさPGは,388名の余暇活動の楽しさの語り(Honke,2016)で配布資料を作成し,1~9回目は余暇活動の楽しさ評価法の18の楽しさを学び,対象者に楽しさの経験を語ってもらい,10~12回目はパークゴルフ実施後に18の楽しさを振り返った.主要アウトカムはMMSE,副次アウトカムはLSI-Z,やる気スコア,TUGとし,事前の両群の得点に差がなければ,TUGの変化量の群間比較はt検定,他のアウトカムの群間比較はMann-WhitneyのU検定で効果量(r)を求めた.また,TUGの群内前後比較はt検定,TUG以外のアウトカムの群内比較はWilcoxon符号付順位和検定で効果量(r)を求めた.有意水準は5%未満とした.
【結果】1回目は2度の緊急事態宣言で8か月を要し,パークゴルフは2021年に1回のみの実施となった.性別や年齢(体操群:79.2歳±4.8 PG群:79.9歳±4.0)および事前の両群のTUG(p=.02)以外のアウトカムは有意差がなかった.事前の体操群の中央値(四分位範囲)はMMSE29.0(4.0),LSI-Z19.0(6.5),やる気スコア7.0(10.0)で,PG群はMMSE 30.0(2.0),LSI-Z 16.0(6.3),やる気スコア12.5(10.3)だった.両群の各アウトカムの前後得点を両側検定した結果,体操群はTUG(6.5秒±1.1⇒7.5秒±1.6 p<0.001)とやる気スコア(p=.02)で有意な低下,MMSE(p=.11)とLSI-Z(p=.10)も低下し,PG群の有意差はないがMMSE(p=.08)の効果量は0.39,TUG(7.5秒±2.4⇒7.3秒±2.2 p=.17)の効果量は0.31, LSI-Z(p=.64)の効果量は 0.10と全て改善傾向だった.また,両群の各アウトカムの変化量を両側検定した結果,MMSEに有意差があり(p=.02),効果量はMMSE 0.42,LSI-Z 0.28,やる気スコア0.21だった.また,A地区は自主的にポールウォーキングの会を設立し,B地区は参加者同士で誘い合って様々な活動を開始した.
【考察】群間比較の結果,PG群が体操群よりもMMSEが有意に改善し中程度の効果量を認めたので,楽しさPGは体操よりも認知機能の改善に有効と考えた.また,歩行スピードはPG群前後比較で中程度の効果量を認めた.楽しさPGの認知機能や歩行スピードの改善は,コロナ禍かつ楽しさPG後半のパークゴルフが中断しても,18の楽しさを学ぶ事で住民同士のつながりが強化されて新たな活動が生じたためと考えた.2023年はこの成果を活かし,認知症予防を目指して楽しさPGを住民主導で行う楽しさPG養成講座の実施が決定した.