[PN-4-2] 公共図書館と連携したレコード音楽を用いた回想法実践の試み
はじめに
高齢者の生きがい,外出・交流の促進など様々な課題が示されており,公共図書館も対応が求められている.我々は,認知症高齢者や家族にやさしい街づくりの一環として,公共図書館の認知症ブックカフェへ参加してきた.そして,公共図書館の利点,関係者の経験を活かした取り組みを行うため,広島市立中央図書館・広島大学医学部・広島都市学園大学連携事業として「図書館で,音楽を使った回想法体験」を実施することになった.回想法は,高齢者に対する心理社会的アプローチであり,懐かしい音楽は,情動を伴った回想を促すとされ,レコード音楽に関心を持って参加してもらうことで,外出や多世代交流につながり,今後の公共図書館の在り方も検討できると考えた.そこで,今回行った高齢者に親しみのあるレコードや所蔵資料を活用した連携事業の調査を行い,公共図書館における回想法実施の留意点や連携事業の在り方について,検討することとした.
方法
対象は,広島市立中央図書館で実施された連携事業「図書館で,音楽を使った回想法体験」へ参加し,調査の同意の得られた65歳以上の高齢者31名とした.プログラムは,計2時間の1回のみで,①概要説明,②1950年代から1960年代前半のレコード音楽を聴く(5曲),③グループ回想(約15分),④1960年代後半から1970年代のレコード音楽を聴く(5曲),⑤③と同じメンバーによるグループ回想(約15分),⑥まとめの順で進行した.参加者は,掲示されている1950年代から1970年代のレコード音楽を3曲までリクエストできた.回想のリーダーは,筆頭著者が行った回想法の基礎講習(90分)を受講した作業療法学部学生が担当し,活動中は支持的な傾聴,肯定的なフィードバックを基本とした.調査項目は,対象者の基本属性,懐かしいと思う音楽の年代,レコード音楽を聴いた際の想起について,プログラム終了後に調査用紙にて回答を求めた.統計解析は,懐かしい音楽の年代と基本属性との関連をχ2検定により検討した.
結果
半数以上が懐かしいと回答した音楽は1960年代と1970年代で,懐かしさを感じる音楽の年代と基本属性の関連では,1960年代の音楽で性別(p=0.04)との間に有意な関連がみられた.31名中で30名はレコード音楽を聴いた後,過去の出来事を想起したと回答していた.その他に,過去の出来事を想起した30名中,その出来事を29名が懐かしいと回答し,レコードを聴いて想起した時代は20歳代(約80%)が最も多かった.
考察
1960,1970年代の音楽を懐かしいと感じ,特に1960年代は男性が懐かしいと感じていた.また,多くは,想起した出来事に懐かしさを感じ,自分自身の20歳代の出来事を想起する傾向にあった.この時代は,多くの対象者とって学生時代,就職・結婚・子育てを経験し,この時代に聴いた音楽は感情を伴った記憶として残りやすく,当時の音楽を懐かしく感じたのではないかと考えられる.また,音楽により20歳代を思い出す参加者が多かったことは,更に検討する必要があると思われる.最後に,高齢化が進展する中で,公共施設,交通機関などで高齢者が安心して暮らせる環境作りがより一層重要になる.今回の連携事業は,公共図書館のサービスと高齢者のニーズを繋ぐ一環として捉えており,公共図書館が生涯学習の場となるだけでなく,住み慣れた地域の集い,交流,地域活動を創出する場になる可能性も期待されると考えられる.
倫理的配慮
本調査は,所属の疫学研究倫理審査委員会の承認を得た上で行われた.
高齢者の生きがい,外出・交流の促進など様々な課題が示されており,公共図書館も対応が求められている.我々は,認知症高齢者や家族にやさしい街づくりの一環として,公共図書館の認知症ブックカフェへ参加してきた.そして,公共図書館の利点,関係者の経験を活かした取り組みを行うため,広島市立中央図書館・広島大学医学部・広島都市学園大学連携事業として「図書館で,音楽を使った回想法体験」を実施することになった.回想法は,高齢者に対する心理社会的アプローチであり,懐かしい音楽は,情動を伴った回想を促すとされ,レコード音楽に関心を持って参加してもらうことで,外出や多世代交流につながり,今後の公共図書館の在り方も検討できると考えた.そこで,今回行った高齢者に親しみのあるレコードや所蔵資料を活用した連携事業の調査を行い,公共図書館における回想法実施の留意点や連携事業の在り方について,検討することとした.
方法
対象は,広島市立中央図書館で実施された連携事業「図書館で,音楽を使った回想法体験」へ参加し,調査の同意の得られた65歳以上の高齢者31名とした.プログラムは,計2時間の1回のみで,①概要説明,②1950年代から1960年代前半のレコード音楽を聴く(5曲),③グループ回想(約15分),④1960年代後半から1970年代のレコード音楽を聴く(5曲),⑤③と同じメンバーによるグループ回想(約15分),⑥まとめの順で進行した.参加者は,掲示されている1950年代から1970年代のレコード音楽を3曲までリクエストできた.回想のリーダーは,筆頭著者が行った回想法の基礎講習(90分)を受講した作業療法学部学生が担当し,活動中は支持的な傾聴,肯定的なフィードバックを基本とした.調査項目は,対象者の基本属性,懐かしいと思う音楽の年代,レコード音楽を聴いた際の想起について,プログラム終了後に調査用紙にて回答を求めた.統計解析は,懐かしい音楽の年代と基本属性との関連をχ2検定により検討した.
結果
半数以上が懐かしいと回答した音楽は1960年代と1970年代で,懐かしさを感じる音楽の年代と基本属性の関連では,1960年代の音楽で性別(p=0.04)との間に有意な関連がみられた.31名中で30名はレコード音楽を聴いた後,過去の出来事を想起したと回答していた.その他に,過去の出来事を想起した30名中,その出来事を29名が懐かしいと回答し,レコードを聴いて想起した時代は20歳代(約80%)が最も多かった.
考察
1960,1970年代の音楽を懐かしいと感じ,特に1960年代は男性が懐かしいと感じていた.また,多くは,想起した出来事に懐かしさを感じ,自分自身の20歳代の出来事を想起する傾向にあった.この時代は,多くの対象者とって学生時代,就職・結婚・子育てを経験し,この時代に聴いた音楽は感情を伴った記憶として残りやすく,当時の音楽を懐かしく感じたのではないかと考えられる.また,音楽により20歳代を思い出す参加者が多かったことは,更に検討する必要があると思われる.最後に,高齢化が進展する中で,公共施設,交通機関などで高齢者が安心して暮らせる環境作りがより一層重要になる.今回の連携事業は,公共図書館のサービスと高齢者のニーズを繋ぐ一環として捉えており,公共図書館が生涯学習の場となるだけでなく,住み慣れた地域の集い,交流,地域活動を創出する場になる可能性も期待されると考えられる.
倫理的配慮
本調査は,所属の疫学研究倫理審査委員会の承認を得た上で行われた.