[PN-4-3] 「運転時認知障害チェックリスト」はファイブコグと関連するのか
【はじめに】日本では「高齢者の自動車運転」についてマスメディアで取り上げられることが多い.高齢ドライバーによる交通事故が多いためとされる.このことから事故防止のため様々な自動車運転に関するチェックリストが開発され「運転時認知障害早期発見チェックリスト30(以下,チェックリスト)」においては簡便なことから警視庁のホームページに掲載,各地に配布されている.しかし,このチェックリストと高齢者の認知機能の関連をみた報告は少ないため報告したい.
【対象および方法】対象はA町認知症予防教室に参加する高齢者37名(女性29名・男性8名)で平均年齢は75歳(幅66~84歳),教育年数は9~15年であった.「チェックリスト」は高齢者安全運転支援研究会が作成したもので「車のキーや免許証などを探し回ることがある」など30項目から成るチェックリストである.回答方法は「はい」「いいえ」の2件法で,5問以上にチェックが入った場合「運転要注意」となる.「ファイブコグ」は「位置判断」「単語記憶」「時計描画」「動物名想起」「共通単語」の認知機能を測る検査で,各課題毎の点数と総合ランク「健常」「軽度認知障害疑い」「認知症疑い」の3段階で判定されるスクリーニングテストで信頼性・妥当性が検討されている.ファイブコグはX年4月に,チェックリストはX年11~12月に施行した.この2つの尺度を統計処理ソフトStat Viewを使用し統計学的処理を行なった.なお,実施にあたっては対象者から口頭にて同意を得た.また,当院倫理委員会(2023.2.1)の承認も得ている.
【結果】チェックリストが運転要注意とする5項目以上該当した者は21.6%であった.項目別では,最も該当した者が多かった項目は項目18で48.6%が該当した.その他,項目3は29.7%,項目19は29.7%,項目21は37.8%,項目28は40.5%であった.年齢および教育年数と「チェックリスト該当数」に相関はみられず,性別と「チェックリスト該当数」に有意差があり,女性が低い(チェックが多い)という結果であった(P=0.0128).ファイブコグが「軽度認知障害疑い」となったのは3名(その他は健常)であった.位置判断得点は平均62点,単語記憶得点は平均67点,時計描画得点は平均55点,動物名想起得点は平均63点,共通単語得点は平均54点であった.ファイブコグ各課題と「チェックリスト」のカットオフ(4/5点)に有意差はなかった.ファイブコグ総合ランクと「チェックリスト」のカットオフに有意差はなかった.
【考察】今回,チェックリストと認知機能とは殆ど関連しなかった.認知機能と運転に関してMCI群は健常対照群と比べてわずかに運転技能の低成績を示すが,運転継続に支障があると判断するほどではない(Hirdら,2016)とされており,MCIのみから即座に運転中止とする必要はない(河野ら,2017)と言われている.また,小林ら(2020)は免許更新時の認知機能検査の得点とMMSEの得点との間に相関を認めなかったとしており,MMSEなどは運転の能力を評価するのには鋭敏ではなく,あくまでも参考と考えるべき(岡ら,2015)であろうと思われる.日本と同じように認知機能検査を導入している国は少なく,導入したデンマークでは高齢運転者の死亡事故率は変わりないが,歩行中と自転車乗用中の死亡事故率が高齢者で増し,他の年齢層ではみられなかった(Sirenら,2012).日本の高齢者交通事故対策は高齢者へ認知機能検査を課すよりも別の対策が求められるのではないだろうか.
【対象および方法】対象はA町認知症予防教室に参加する高齢者37名(女性29名・男性8名)で平均年齢は75歳(幅66~84歳),教育年数は9~15年であった.「チェックリスト」は高齢者安全運転支援研究会が作成したもので「車のキーや免許証などを探し回ることがある」など30項目から成るチェックリストである.回答方法は「はい」「いいえ」の2件法で,5問以上にチェックが入った場合「運転要注意」となる.「ファイブコグ」は「位置判断」「単語記憶」「時計描画」「動物名想起」「共通単語」の認知機能を測る検査で,各課題毎の点数と総合ランク「健常」「軽度認知障害疑い」「認知症疑い」の3段階で判定されるスクリーニングテストで信頼性・妥当性が検討されている.ファイブコグはX年4月に,チェックリストはX年11~12月に施行した.この2つの尺度を統計処理ソフトStat Viewを使用し統計学的処理を行なった.なお,実施にあたっては対象者から口頭にて同意を得た.また,当院倫理委員会(2023.2.1)の承認も得ている.
【結果】チェックリストが運転要注意とする5項目以上該当した者は21.6%であった.項目別では,最も該当した者が多かった項目は項目18で48.6%が該当した.その他,項目3は29.7%,項目19は29.7%,項目21は37.8%,項目28は40.5%であった.年齢および教育年数と「チェックリスト該当数」に相関はみられず,性別と「チェックリスト該当数」に有意差があり,女性が低い(チェックが多い)という結果であった(P=0.0128).ファイブコグが「軽度認知障害疑い」となったのは3名(その他は健常)であった.位置判断得点は平均62点,単語記憶得点は平均67点,時計描画得点は平均55点,動物名想起得点は平均63点,共通単語得点は平均54点であった.ファイブコグ各課題と「チェックリスト」のカットオフ(4/5点)に有意差はなかった.ファイブコグ総合ランクと「チェックリスト」のカットオフに有意差はなかった.
【考察】今回,チェックリストと認知機能とは殆ど関連しなかった.認知機能と運転に関してMCI群は健常対照群と比べてわずかに運転技能の低成績を示すが,運転継続に支障があると判断するほどではない(Hirdら,2016)とされており,MCIのみから即座に運転中止とする必要はない(河野ら,2017)と言われている.また,小林ら(2020)は免許更新時の認知機能検査の得点とMMSEの得点との間に相関を認めなかったとしており,MMSEなどは運転の能力を評価するのには鋭敏ではなく,あくまでも参考と考えるべき(岡ら,2015)であろうと思われる.日本と同じように認知機能検査を導入している国は少なく,導入したデンマークでは高齢運転者の死亡事故率は変わりないが,歩行中と自転車乗用中の死亡事故率が高齢者で増し,他の年齢層ではみられなかった(Sirenら,2012).日本の高齢者交通事故対策は高齢者へ認知機能検査を課すよりも別の対策が求められるのではないだろうか.