第57回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-4] ポスター:地域 4

2023年11月10日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (展示棟)

[PN-4-4] 中高生による高齢者の生活向上プロジェクト

米田 美登里1,5, 宮腰 真2,5, 菊池 ゆひ3,5, 米田 貢3,5, 東川 哲朗4,5 (1.独立行政法人地域医療機能推進機構金沢病院附属介護老人保健施設, 2.独立行政法人地域医療機能推進機構金沢病院, 3.金沢大学医薬保健研究域保健学系, 4.社会医療法人財団董仙会恵寿金沢病院, 5.公益社団法人石川県作業療法士会)

【はじめに】近年,高齢者の社会的フレイル(交流の減少,孤立)は,高齢者の身体,認知機能低下の加速要因になっており解決すべき課題である.一方,中高生の学校教育においては,「生きる力」を育成するためのキャリア教育支援が推進されているが方法が限られている.そこで,公益社団法人石川県作業療法士会(以下,当会)は,地域の高齢者と中高生をつなぎ,よりよい社会づくりを目標に「中高生による高齢者の生活向上プロジェクト」を実施している.今回,プロジェクト事業のひとつとして,高齢者のICT端末の活用を中高生が教えることで促進し,世代間交流を通じて高齢者の生活向上と中高生のキャリア教育支援を目的に「高齢者のオンライン体験交流会」の活動を報告し,今後の作業療法士の地域貢献について検討する.
【方法】事業概要;中高生ボランティアが高齢者のニーズに応じて,タブレット操作,ユーチューブの利用などをサポートする.また,中高生が高齢者の生活変化,普段の困りごとなどについて,交流を通じて知る機会とし,豊かなこころを育むことを期待する.作業療法士は高齢者と中高生の交流が円滑に進むよう支援する.
開催方法;当会が主催.開催地の地域包括支援センター等と開催日2-3か月前から連携し,準備を開始.会場は高齢者が参集しやすい場所とした.当会がポスターを作成し,WEB,SNSで配信.高齢者は地域包括支援センターなどで募集し,中高生は当会が周辺の中学校,高等学校の進路指導,キャリア教育担当教諭に連絡,周知を依頼した.参加人数は,会場の広さを考慮し,高齢者,中高生ともに5-10名で募った.タブレットとWi-Fiルーターは当会で用意し,スマートフォンの場合は個人が普段使用しているもの利用した.
【実践結果】1)交流会は令和3年8月-令和5年2月15日までの期間に,金沢市6回,津幡町1回,輪島市1回で計8回開催した.参加者は延べ数で,65歳以上の地域在住高齢者55名,中高生39名,大学生9名,作業療法士スタッフ48名であった.新型コロナ感染症の拡大が懸念された時期には,高齢者と一部スタッフのみが会場に参集し,中高生は自宅からオンラインで参加し実施した(4/8回).2)アンケート結果:①楽しさについては全ての中高生,高齢者が「楽しかった」と回答した.②再参加については中高生の97%,高齢者の100%が「参加したい」と回答した.③自由記載は,高齢者では「YoutTube発見!楽しみが増えた」「テレビ通話が楽しかった」など,新しい発見,交流の喜び,感謝の記載があり,中高生では「困っていることがあると知ることができた」「私達が教えるだけではなく,お互いに教え合える関係になりたい」など,高齢者の生活や考えを知る機会になり,高齢者の役に立てるという世代間交流の意義などの記載があった.
【考察】当会が実施した高齢者のICT端末の利用と若者の世代間交流が,高齢者の社会的孤立という社会課題の解決に役立つ可能性がある.また若者の豊かなこころの育成に加え,我々作業療法士という職業を伝える機会になったと考える.当会にとって,積極的な自治体との交流は,今後の地域貢献活動にもつながる機会となった.
高齢者と若者の交流が減少している日本社会で,このように高齢者と若者の双方が楽しむ様子は,今後の社会にあるべき姿,目指す未来であると考える.作業療法士の認知度は一般にはまだ低く,医療,福祉の領域外での積極的な取り組みが重要と考える.今後,会員,行政,教育機関などへの働きかけを増やし,継続的,かつスムーズな運営に向けた工夫が必要である.本事業は日本財団の助成金をもとに実施した.