[PN-4-6] 三鷹市における横断歩道の実態調査
【はじめに】杏林大学のある東京都三鷹市において,実際に高齢者が横断歩道を渡り切れない場面に遭遇し,交通事故の危険性を日常的に感じることがある.令和2年国土交通省の調査では,全国の交通事故における死者数の約23%は横断中に発生.また,交通事故数は減少傾向であるが,被害者の約56%が65歳以上の高齢者であり,こちらは依然として高い割合を占めている.通常横断歩道を渡る歩行速度は1.0m/秒とされており,青信号は横断歩道全体を渡るだけの時間が与えられているとされるが,先行研究をみると横断歩道の信号の設定は地域によって多少の差がある.
そこで,地域生活を送るうえで実際の横断歩道や信号の仕組みを知ることは有益ではないか.その情報を得ることで普段利用する経路に基づいた具体的な作業療法計画に繋がると考えた.
【目的】東京都三鷹市の横断歩道の距離と信号時間について実態調査し,地域の交通事情を把握することを目的とした.
【方法】対象は東京都三鷹市の164箇所378基の横断歩道,時間帯は外出頻度が多い午前10時から午後4時とした.横断歩道は最短距離,最長距離,歩道幅を測定.歩行者信号時間は青点滅時間を含む青信号時間(以下青全体時間),青点滅時間を除いた青信号時間(以下青点灯時間),青点滅時間,赤信号時間を測定し,各信号時間における横断歩道を渡りきるのに必要な速さ(以下歩行速度)を算出した.
【結果】全最短距離における歩行速度は,青全体歩行速度0.04-0.76m/秒(平均0.35±0.16m/秒),青点灯歩行速度0.05-1.04m/秒(平均0.46±0.24m/秒),青点滅歩行速度0.61-4.43m/秒(平均1.72±0.46m/秒)であった.全最長距離における歩行速度は青全体歩行速度0.04-0.95m/秒(平均0.40±0.17m/秒),青点灯歩行速度0.05-1.46m/秒(平均0.52±0.26m/秒),青点滅歩行速度0.62-4.59m/秒(平均2.03±0.55m/秒)であった.その中で青点灯歩行速度0.75m/秒以下の信号は323個で全体の85%であった.
【考察】警視庁によると,高齢者の多い場所や要望のあった場所では青点灯歩行速度が0.75m/秒で渡り切れるよう調節されている.三鷹市の横断歩道の8割以上は健康な高齢者であれば渡り切れるよう設定されていたため,高齢者の多い地域であると考えられた.信号の特徴として,青点滅時間は横断歩道の距離に比例し横断歩道の距離が20mを超えた場合は青点滅時間が10秒までで設定されているが,その中に青点滅時間が10秒以下であった信号が確認された.それらの横断歩道は全て中央分離帯が設けられていたため,中央分離帯のある横断歩道では二つの横断歩道がある,と捉えた方が安全であるといえる.また,青点滅時から横断を行うことがあるが,三鷹市では青点滅速度の最速値が3.0m/秒であった.これは1.0kmを約5分30秒ペースでランニングする程度の速さに匹敵するため,青点滅時の強引な横断は身体に負荷がかかるうえ非常に危険が伴う行為となることが明確となった.
今回の調査より,三鷹市の横断歩道は歩行者にとって比較的ゆとりをもって渡れる設定であり,屋外を想定した歩行訓練の際には歩行速度は1.0m/秒を目安にしても問題ないといえる.更に,事故を防ぐためには,本調査で得られた青点滅時間に必要な速さを具体的に伝えることで,より注意喚起を促すことができるであろう.このように実際の地域の状況を知り,実生活に繋がる具体的な作業療法実施が可能となると考える.
そこで,地域生活を送るうえで実際の横断歩道や信号の仕組みを知ることは有益ではないか.その情報を得ることで普段利用する経路に基づいた具体的な作業療法計画に繋がると考えた.
【目的】東京都三鷹市の横断歩道の距離と信号時間について実態調査し,地域の交通事情を把握することを目的とした.
【方法】対象は東京都三鷹市の164箇所378基の横断歩道,時間帯は外出頻度が多い午前10時から午後4時とした.横断歩道は最短距離,最長距離,歩道幅を測定.歩行者信号時間は青点滅時間を含む青信号時間(以下青全体時間),青点滅時間を除いた青信号時間(以下青点灯時間),青点滅時間,赤信号時間を測定し,各信号時間における横断歩道を渡りきるのに必要な速さ(以下歩行速度)を算出した.
【結果】全最短距離における歩行速度は,青全体歩行速度0.04-0.76m/秒(平均0.35±0.16m/秒),青点灯歩行速度0.05-1.04m/秒(平均0.46±0.24m/秒),青点滅歩行速度0.61-4.43m/秒(平均1.72±0.46m/秒)であった.全最長距離における歩行速度は青全体歩行速度0.04-0.95m/秒(平均0.40±0.17m/秒),青点灯歩行速度0.05-1.46m/秒(平均0.52±0.26m/秒),青点滅歩行速度0.62-4.59m/秒(平均2.03±0.55m/秒)であった.その中で青点灯歩行速度0.75m/秒以下の信号は323個で全体の85%であった.
【考察】警視庁によると,高齢者の多い場所や要望のあった場所では青点灯歩行速度が0.75m/秒で渡り切れるよう調節されている.三鷹市の横断歩道の8割以上は健康な高齢者であれば渡り切れるよう設定されていたため,高齢者の多い地域であると考えられた.信号の特徴として,青点滅時間は横断歩道の距離に比例し横断歩道の距離が20mを超えた場合は青点滅時間が10秒までで設定されているが,その中に青点滅時間が10秒以下であった信号が確認された.それらの横断歩道は全て中央分離帯が設けられていたため,中央分離帯のある横断歩道では二つの横断歩道がある,と捉えた方が安全であるといえる.また,青点滅時から横断を行うことがあるが,三鷹市では青点滅速度の最速値が3.0m/秒であった.これは1.0kmを約5分30秒ペースでランニングする程度の速さに匹敵するため,青点滅時の強引な横断は身体に負荷がかかるうえ非常に危険が伴う行為となることが明確となった.
今回の調査より,三鷹市の横断歩道は歩行者にとって比較的ゆとりをもって渡れる設定であり,屋外を想定した歩行訓練の際には歩行速度は1.0m/秒を目安にしても問題ないといえる.更に,事故を防ぐためには,本調査で得られた青点滅時間に必要な速さを具体的に伝えることで,より注意喚起を促すことができるであろう.このように実際の地域の状況を知り,実生活に繋がる具体的な作業療法実施が可能となると考える.