第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-5] ポスター:地域 5

Fri. Nov 10, 2023 4:00 PM - 5:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-5-1] 通所リハビリテーションの適正利用を目指した利用継続者と終了者の作業機能障害,作業参加,精神健康状態の関連性の検討

浜岸 佳助1, 京極 真2, 寺岡 睦2 (1.三重県立志摩病院リハビリテーション室, 2.吉備国際大学大学院保健科学研究科)

【はじめに】
通所リハビリテーション(以下,通所リハ)では,利用者毎に適切に課題を把握し,計画的に期間限定で活動•参加を促進することが期待される.しかし,新規利用から6ヶ月後に終了する利用者は1割と少ないことが報告されている.これは,利用者の計画の見直しが不十分であり,身体機能に偏ったリハビリテーションが実施されていることが関係している.
近年,通所リハでは活動・参加に焦点化した介入が求められている為,作業焦点または作業基盤の評価•介入の必要性は高まっている.しかし,通所リハにおいて作業参加や作業機能障害と利用継続•終了の関連を調査した報告はない.そこで,本研究の目的は,通所リハを終了した群と,1年以上利用継続している群に分け,作業機能障害の有無,作業参加の程度と精神健康状態との関連性を明らかにすることとした.仮説は,通所リハを終了した利用者ほど作業参加や精神健康状態は良好であり,利用が長期化している利用者は作業参加が低く,精神健康状態も関連して低くなり,作業機能障害を有する割合は高くなる,とした.
【対象と方法】
 研究デザインは横断的調査研究とし,アンケートを用いた質問紙調査を実施した.対象者は,通所リハの利用終了者と,1年以上利用を継続している利用者とした.終了の理由として死亡•入院した者や,認知機能の低下等によりアンケートに回答できないと予想される者は除外した.対象者の選定は各事業所の研究協力者に依頼し,データ収集は同意が得られた利用者に依頼した.調査項目は基本情報,自記式作業遂行指標(以下;SOPI),作業機能障害の種類と評価(以下;CAOD),精神健康調査票(以下;GHQ-12),改訂版自記式Frenchay Activities Index自己評価表(以下;FAI)とした.統計処理は記述統計量の算出,ベイズ統計の仮説検定で利用継続群と終了群の有意差検定,相関分析を実施した.本研究は吉備国際大学倫理審査委員会(21-41)において承認を得た上で実施した.
【結果】
利用継続群•終了群共に,基本特性に明らかな偏りは確認されなかった.作業機能障害の割合は参加者全体で20名(29%)であり,継続群(30%)•終了群(28%)共に同程度の割合であった.各尺度の合計得点の平均値において,終了群は継続群と比較してSOPIでは13.7点,FAIでは6.1点高くなり,CAODでは7.8点,GHQ-12では1.6点低い結果となった.しかし,群間比較では全ての評価尺度においてBF10が1を超えることはなく,利用継続群と終了群における尺度得点の差はないという帰無仮説を支持する結果となった.性別,年齢,介護度,介護者の有無においても利用継続群と終了群の関連は認められなかった.相関分析においてはSOPIとGHQ-12に中等度の負の相関(r=-.435,BF10 104.531)を,GHQ-12とCAODに中等度の相関(r=-.441,BF10 139.008)を認めた.また,SOPIとCAOD(r=-.355,BF10 9.965),SOPIとFAI(r=0.332,BF10 5.779)にはそれぞれ弱い相関を認めた.
【考察】
群間比較の結果からは,利用継続群と終了群で各尺度の平均値に差が無いという帰無仮説が支持された.一方,相関分析においては,利用継続/終了に関わらず,各尺度間の関連性が認められた.つまり,作業参加の得点が高いほど作業機能障害/精神健康状態の程度は低く,IADLの活動量は高くなる傾向が,作業機能障害の程度が高いほど精神健康状態が低下する傾向が確認された.