[PN-5-12] 地域在住高齢者を対象とした「買い物能力工程分析表」の内容妥当性の検討
【はじめに】高齢者の主観的健康感には疾患,転倒や IADL(Instrumental Activities of Daily Living)が影響(池田,2017)する.要支援高齢者はバスや電車を使った外出(以下,外出),日用品の買い物(以下,買い物),預貯金の出しれや食事の用意などは健常高齢者に比べて自立度が低い(片寄,2019).IADLのなかでも,要支援者における食事の用意の自立割合は約7割であるが,外出や買い物の自立割合は約4〜6割と比較的少ない(河野,2009).このことから演者らは買い物能力の維持が重要であると考えた.しかし,買い物能力に対するゴールドスタンダードな評価方法はなく,Lawton IADL Scale(以下,Lowton)とFrenchay Activity Index (以下,FAI)などの下位項目で評価されることが多い.認知症者を対象として生活行為能力を評価する「生活行為工程分析表(Process Analysis of Daily Activity for Dementia: PADA-D)」はあるが,地域在住高齢者の買い物能力を詳細に評価し,介入の焦点化を図る評価表はない.そこで我々は,COSMIN(Consensus-based Standards for the selection of health Measurement Instruments)の尺度開発方法論に基づき,身体機能の低下に伴う買い物動作能力を詳細に分析できる,買い物能力工程分析表(以下,買い物分析表)を開発した.本研究の目的は,買い物分析表の内容妥当性について検討することである.
【方法】作業療法士(以下,OT)経験10年以上の博士3名(以下,専門家)がLawton, FAI, PADA-Dを参考に項目を検討し,Relevance(関連性)・Comprehensiveness(包括性)を協議して仮尺度を作成した.地域在住高齢者に携わる経験10年以上のOT(以下,臨床家)から過去の要介護でない事例を想起し,関連性・包括性に加え,Comprehensibility(理解度)と時間的実用性について意見聴取した.臨床家の意見を参考に専門家3名で再協議し,買い物分析表を試作した.再度臨床家に時間的実用性と意見聴取を行い完成した.所属の倫理審査を受けて実施した.本研究はJSPS科研費21K11128の助成を受けて実施した.
【結果】意見聴取した臨床家は延べ10名,想起した事例は31名(平均年齢81歳,女性23名(74%),要支援者27名(87%)であった.仮尺度への意見は「身だしなみを整える」は「整容・上衣更衣と靴・靴下の着脱の2種類の困難さがある」,「自宅から外に出る」は「『外』の判断に迷う」などであった.観察に要する時間は平均約13分であった.これらを踏まえ,最終的に臨床家全員の合意を得て試作した買い物分析表は,工程数10「①整容と上衣の更衣②靴下を履く③屋内歩行(20cmの段差昇降)④戸締り⑤屋外移動(平面50m歩行)⑥階段昇降(12~14段)⑦段差昇降(2Kgの物品を持ち20cmの段差)⑧頭部の高さから500gの物品を手に取る⑨屋内移動(2Kgの物品を持ち歩行5m)⑩膝の高さへの500gの物品収納」であった.判定基準は5段階「完全自立,修正自立(時間・自助具・見守り),不十分(75%以上自立),困難(25〜75%未満自立),不可(25%未満自立)」であった.
【考察】買い物動作を10工程に分け,能力を5段階で観察評価する買い物分析表の内容妥当性が確認できた.加えて時間的実用性も確認できた.Lawtonは「全ての買い物は自分で行う」が1点で「少額の買い物が行える・付き添い要,できない」は0点であり,詳細な能力評価が困難である.FAIは「週一回以上,月1〜3回,月1回未満,していない」と実行状況を問うものである.買い物動作分析表は,地域在住高齢者の買い物能力を詳細に評価できる可能性がある.今後は外的基準を用いた信頼性・妥当性の検討が必要である.
【方法】作業療法士(以下,OT)経験10年以上の博士3名(以下,専門家)がLawton, FAI, PADA-Dを参考に項目を検討し,Relevance(関連性)・Comprehensiveness(包括性)を協議して仮尺度を作成した.地域在住高齢者に携わる経験10年以上のOT(以下,臨床家)から過去の要介護でない事例を想起し,関連性・包括性に加え,Comprehensibility(理解度)と時間的実用性について意見聴取した.臨床家の意見を参考に専門家3名で再協議し,買い物分析表を試作した.再度臨床家に時間的実用性と意見聴取を行い完成した.所属の倫理審査を受けて実施した.本研究はJSPS科研費21K11128の助成を受けて実施した.
【結果】意見聴取した臨床家は延べ10名,想起した事例は31名(平均年齢81歳,女性23名(74%),要支援者27名(87%)であった.仮尺度への意見は「身だしなみを整える」は「整容・上衣更衣と靴・靴下の着脱の2種類の困難さがある」,「自宅から外に出る」は「『外』の判断に迷う」などであった.観察に要する時間は平均約13分であった.これらを踏まえ,最終的に臨床家全員の合意を得て試作した買い物分析表は,工程数10「①整容と上衣の更衣②靴下を履く③屋内歩行(20cmの段差昇降)④戸締り⑤屋外移動(平面50m歩行)⑥階段昇降(12~14段)⑦段差昇降(2Kgの物品を持ち20cmの段差)⑧頭部の高さから500gの物品を手に取る⑨屋内移動(2Kgの物品を持ち歩行5m)⑩膝の高さへの500gの物品収納」であった.判定基準は5段階「完全自立,修正自立(時間・自助具・見守り),不十分(75%以上自立),困難(25〜75%未満自立),不可(25%未満自立)」であった.
【考察】買い物動作を10工程に分け,能力を5段階で観察評価する買い物分析表の内容妥当性が確認できた.加えて時間的実用性も確認できた.Lawtonは「全ての買い物は自分で行う」が1点で「少額の買い物が行える・付き添い要,できない」は0点であり,詳細な能力評価が困難である.FAIは「週一回以上,月1〜3回,月1回未満,していない」と実行状況を問うものである.買い物動作分析表は,地域在住高齢者の買い物能力を詳細に評価できる可能性がある.今後は外的基準を用いた信頼性・妥当性の検討が必要である.