[PN-5-2] Pathways and Resources for Engagement and Participation (PREP)をミドルエイジクライシスに直面した男性に用いた一例
【はじめに】
Pathways and Resources for Engagement and Participation (PREP)は環境と活動を調整することで障害のある人々の参加を促進する介入プログラムである. このプログラムはこれまでに身体障害の子どもに介入が行われてきた. しかし, 環境や活動の不適合により日常生活への参加が阻害されるのは障害のある子どもたちに限ったことではない. PREPの応用を検討することで, 環境や活動に不適合を感じている多様な人々を支援できる可能性がある. そこで今回, PREPを用いて心身の不調に悩む成人男性に介入を行いその効果と有用性について検討した.
【介入と結果】
事例紹介:40代男性Aさんは大学に勤務する作業療法士であり, 筆頭演者とは養成校時代に出会った. Aさんは原因不明の疲労に悩んでおり, 研究の関心とも重なり今回試験的なPREP介入を希望した. 介入は1-2週間の頻度でオンライン会議ツールを用いたセッション(およそ60分/回)が7回実施された. セッションは筆頭演者が行い, 第2演者が補助的に参加した.
初期評価:COPMを実施し3つの目標を特定した:①現在の7割程度の疲労感で日々の業務が遂行できる(重要度10・遂行度1・満足度1), ②年内に2本の論文の執筆を完成させる(重要度7・遂行度4・満足度2), ③年度内に次の研究計画を完成させる(重要度8・遂行度4・満足度6). またSF-36を実施したところ, 身体機能58, 日常役割機能(身体)29, 体の痛み62, 全体的健康感47, 活力27, 社会生活機能57, 日常役割機能(精神)48, 心の健康52であった. 各目標の遂行度は週2回Aさんが筆頭演者に報告した.
介入:フェーズ1(セッション1-4)では①に対して戦略を立て実行した. Aさんは原因不明の疲労を更年期障害と関連づけ漢方を服用するようになった. 検査の結果その関連は否定されたものの, 漢方自体は効果的で使用を継続した. 次にAさんは疲労とメンタルヘルスの不調との関連を疑い情報を集め, ミドルエイジクライシスに陥っていることに気がついた. そして, 自身の過去を振り返ることの重要性を理解し, 今後の研究生活への向き合い方の再構築を試みるようになった. フェーズ2(セッション5-7)では, ①への介入を終了し②への介入を開始した. このフェーズでは論文を書きあげるために研究仲間同士で進捗を褒め合うルーチンを作り, 日々淡々と書き続ける大切さに気づくようになった. これにより以前の完璧主義的な考え方から解放され, リラックスして執筆に取り組めるようになった.
再評価:介入前, 介入終了時, フォローアップ3週間後のCOPMは, ①遂行度1→8→9, ②遂行度4→10→9, ③遂行度4→3→6となった. 介入前と各介入フェーズの遂行度をクラスカル・ウォリス検定で解析したところ, すべての目標で統計学的に有意な改善が認められた. 多重比較を行ったところ, ①では介入前と介入終了時, ②③では介入前・介入終了時とフォローアップの間に有意な改善が見られた. SF-36では日常役割機能(身体)で29→31, 全体的健康感で47→55, 活力で27→34, 心の健康は52→57に改善した.
【考察】
PREPの多様な人々への応用のために, 今回ミドルエイジクライシスに直面した男性に行ったところ, わずか2ヶ月余りの介入であったが, 作業遂行とQOLが改善し, この効果は介入終了後にも継続していた. PREPは障害を持つ子どもだけではなく, 働く人々の心身の不調に対する予防に役立つ可能性がある. なお, Aさんには事前に口頭と書面にて同意を得た. また本研究に開示すべきCOI関係はない.
Pathways and Resources for Engagement and Participation (PREP)は環境と活動を調整することで障害のある人々の参加を促進する介入プログラムである. このプログラムはこれまでに身体障害の子どもに介入が行われてきた. しかし, 環境や活動の不適合により日常生活への参加が阻害されるのは障害のある子どもたちに限ったことではない. PREPの応用を検討することで, 環境や活動に不適合を感じている多様な人々を支援できる可能性がある. そこで今回, PREPを用いて心身の不調に悩む成人男性に介入を行いその効果と有用性について検討した.
【介入と結果】
事例紹介:40代男性Aさんは大学に勤務する作業療法士であり, 筆頭演者とは養成校時代に出会った. Aさんは原因不明の疲労に悩んでおり, 研究の関心とも重なり今回試験的なPREP介入を希望した. 介入は1-2週間の頻度でオンライン会議ツールを用いたセッション(およそ60分/回)が7回実施された. セッションは筆頭演者が行い, 第2演者が補助的に参加した.
初期評価:COPMを実施し3つの目標を特定した:①現在の7割程度の疲労感で日々の業務が遂行できる(重要度10・遂行度1・満足度1), ②年内に2本の論文の執筆を完成させる(重要度7・遂行度4・満足度2), ③年度内に次の研究計画を完成させる(重要度8・遂行度4・満足度6). またSF-36を実施したところ, 身体機能58, 日常役割機能(身体)29, 体の痛み62, 全体的健康感47, 活力27, 社会生活機能57, 日常役割機能(精神)48, 心の健康52であった. 各目標の遂行度は週2回Aさんが筆頭演者に報告した.
介入:フェーズ1(セッション1-4)では①に対して戦略を立て実行した. Aさんは原因不明の疲労を更年期障害と関連づけ漢方を服用するようになった. 検査の結果その関連は否定されたものの, 漢方自体は効果的で使用を継続した. 次にAさんは疲労とメンタルヘルスの不調との関連を疑い情報を集め, ミドルエイジクライシスに陥っていることに気がついた. そして, 自身の過去を振り返ることの重要性を理解し, 今後の研究生活への向き合い方の再構築を試みるようになった. フェーズ2(セッション5-7)では, ①への介入を終了し②への介入を開始した. このフェーズでは論文を書きあげるために研究仲間同士で進捗を褒め合うルーチンを作り, 日々淡々と書き続ける大切さに気づくようになった. これにより以前の完璧主義的な考え方から解放され, リラックスして執筆に取り組めるようになった.
再評価:介入前, 介入終了時, フォローアップ3週間後のCOPMは, ①遂行度1→8→9, ②遂行度4→10→9, ③遂行度4→3→6となった. 介入前と各介入フェーズの遂行度をクラスカル・ウォリス検定で解析したところ, すべての目標で統計学的に有意な改善が認められた. 多重比較を行ったところ, ①では介入前と介入終了時, ②③では介入前・介入終了時とフォローアップの間に有意な改善が見られた. SF-36では日常役割機能(身体)で29→31, 全体的健康感で47→55, 活力で27→34, 心の健康は52→57に改善した.
【考察】
PREPの多様な人々への応用のために, 今回ミドルエイジクライシスに直面した男性に行ったところ, わずか2ヶ月余りの介入であったが, 作業遂行とQOLが改善し, この効果は介入終了後にも継続していた. PREPは障害を持つ子どもだけではなく, 働く人々の心身の不調に対する予防に役立つ可能性がある. なお, Aさんには事前に口頭と書面にて同意を得た. また本研究に開示すべきCOI関係はない.