第57回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-5] ポスター:地域 5

Fri. Nov 10, 2023 4:00 PM - 5:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-5-9] 山口県作業療法士会における自動車運転再開支援体制構築に向けた取り組み

田中 伸二1,2, 石原 弥生1,3, 貞末 浩好4, 伊藤 正恭5 (1.山口県作業療法士会自動車運転対策委員会, 2.山口リハビリテーション病院, 3.山口県立こころの医療センター高次脳機能障害支援センター, 4.山口県警察本部交通部運転管理課, 5.山口県指定自動車学校協会)

【はじめに】
 山口県作業療法士会(以下,山口県士会)は,2017年に自動車運転対策委員会(以下,委員会)を設置した.山口県は,第7次やまぐち高齢者プランにおいて高齢化率が34.3%(全国第3位),高齢単身世帯の割合は16.2%(全国第4位),高齢夫婦のみ世帯の割合は16.2%(全国第2位)と全国有数の状況であることが示されている.また,県の総人口は年々減少を続けており,スーパーや病院など生活に必要な施設の減少や地域公共交通を担う運転手不足などの問題が顕在化している.このような状況から,自動車運転の可否が生活の質に直結することが少なくない.一方で,山口県士会員所属施設における自動車運転再開支援の実状として,支援実施施設は15施設/209施設(2017年調査,回答率50.9%)であり,そのうち実車評価を行っているのは9施設のみで,支援の必要性は高いものの支援体制は不十分であった.そこで,委員会は県内の支援施設拡充と他団体を含めた山口県における自動車運転再開支援体制の構築を目標に活動を実施することとした.
【目的】
 本報告の目的は,委員会の取り組みを報告し,今後の課題について検討することである.報告に際しては,山口県士会理事会にて審議し承認を得た.また,本報告にあたり開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【経過および事業内容】
 2017年から山口県警察本部交通部運転管理課および運転免許課,山口県指定自動車学校協会,山口県高次脳機能障害支援センターとともに2~3回/年会議の場を設けている.会議では,県の状況や山口県士会の取り組みなどの情報交換を行い,運転支援関連団体として役割の確認や相互理解を築いてきた.また,協議の中で実際に現場にて指導を行っている教習指導員らとともに,支援のフローチャートを共同で作成した.2022年には山口県士会が主体となり「山口県版脳損傷後の自動車運転再開支援マニュアル」と「山口県版脳損傷後の自動車運転再開ガイドブック」を作成し,各団体の監修を経て第1版を発行した.同年10月からは運転支援関連団体共同事業として県下6地域に1校ずつ協力自動車学校を設置し,実車評価の支援体制を整備するに至った.
【今後の課題および展望】
 運転支援関連団体における団体間の体制は整いつつあり,支援体制の構築という点においては一定の成果があったと考える.しかし,山口県士会員所属施設における支援施設の拡充については進んでいない可能性がある.(2023年9月頃にアンケート調査を実施予定)過去のアンケートにおいても,「具体的にどのように支援したらいいのか分からない」「自動車学校とどのように連携したらよいのかわからない」などの意見が繰り返し聞かれており,団体間の体制整備だけでなく支援を行う作業療法士に対するより直接的な取り組みが必要と考えた.そこで,委員会の事業として「運転支援地域連携サポート事業」を新たに企画した.内容は,委員会が実際に支援する作業療法士と共に実車評価の場に同行し,自動車学校との連携をサポートするというもので,支援する作業療法士の心理的ハードルを下げることや評価の視点などを共有し,支援施設と自動車学校の地域における連携を促進することを目的としている.まずは試行として件数を制限して実施することにしているが,指導員との顔つなぎや評価の視点の共有などメリットも高いと考える.そのため,作業療法士だけでなく指導員への意見聴取も含め事業の有効性について検証を行い,支援施設の拡充につなげていきたいと考える.