[PN-6-1] 通所リハビリテーション利用高齢者の趣味活動に認知機能低下やうつ傾向が及ぼす影響
背景:趣味活動は高齢者の健康の維持・向上に関与するだけでなく,認知症の防御因子の一つに挙げられている.また,認知症の危険因子のうち,高齢期に修飾可能な危険因子として抑うつ,社会的接触の低下,身体活動の低下などが報告されている.地域在住高齢者において趣味活動が認知症やうつの発症リスクを抑制する可能性については報告されるが,認知機能低下リスクが高い介護施設利用者の趣味活動について認知機能やうつとの関連性を検討した報告は見あたらない.目的:通所リハビリテーションを利用している高齢者を対象とし,趣味活動の有無と認知機能低下やうつ傾向との関連を明らかにすることである.方法:対象者は通所リハビリテーションを利用している65歳以上の高齢者とし,組入基準はミニメンタルステート検査 (Mini Mental State Examination; MMSE)の得点が10点以上,除外基準は介護施設入所歴,普段の生活状況を知る介護者が不在,寝たきりの状態とした.研究協力施設は某県内の介護老人保健施設2施設である.対象者の趣味活動に関するアンケート調査を面談にて実施し,調査時の趣味活動の有無により趣味あり群と趣味なし群の2群に分けた.認知機能はミニメンタルステート検査 (Mini Mental State Examination; MMSE)を用いて,うつに関しては高齢者用うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale-15; GDS-15)を用いて評価した.認知機能の程度は,MMSEの得点により,24点以上を認知機能正常,20~23点を認知機能軽度低下,19点以下を認知機能中等度低下の3段階に分けた.うつの程度は,GDS-15の得点により,5点以下をうつなし,6~10点をうつ傾向,11点以上をうつ状態とし,3段階に分けた.趣味活動の有無と認知機能やうつとの関連についてはロジスティック回帰分析を用いて解析し,有意水準は5%とした.なお,本研究は宮城大学及び研究フィールドの介護保険事業所の倫理委員会の承認を得て行った.結果:組入基準を満たした対象者は,224人(女性158人,年齢83±7歳)であり,趣味あり群は178人(女性130人,年齢83±7歳),趣味なし群は38人(女性28人,年齢82±7歳)であった.年齢と性別は両群間で有意差を認めなかった.対象者の認知機能の程度は正常が58人,軽度低下が58人,中等度低下が98人であり,うつの程度はうつなしが104人,うつ傾向が83人,うつ状態が27人であった.認知低下とうつ傾向を持つ人の割合は趣味あり群の方が趣味なし群よりも有意に小さかった.認知機能正常に対する軽度低下のオッズ比に有意差を認めなかったが,中等度低下のオッズ比は0.214(95%CI: 0.067-0.690, p=0.010)であった.うつなしに対するうつ傾向のオッズ比は0.262(95%CI: 0.099-0.694, p=0.007),うつ状態のオッズ比は0.083(95%CI: 0.024-0.279, p<0.001)であった.考察: 今回の結果より,認知機能低下が中等度(MMSEが19点以下)になると趣味活動を喪失している傾向を認めた.また,うつ傾向(GDS-15が6点以上)になると趣味活動を持つことが少なくなり,うつ状態(GDS-15が11点以上)になるとさらにその傾向が強くなっていた.結論:通所リハビリテーション利用高齢者の認知機能低下とうつ傾向は趣味活動の維持を阻害する要因と考えられた.