第57回日本作業療法学会

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ポスター

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[PN-6] ポスター:地域 6

Fri. Nov 10, 2023 5:00 PM - 6:00 PM ポスター会場 (展示棟)

[PN-6-11] 障害者のおしゃれの支援に関する文献研究

金原 衣理子1,2, 笹田 哲3 (1.神奈川県立保健福祉大学大学院博士後期課程, 2.イムス横浜狩場脳神経外科病院, 3.神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【序論】リハビリテーションにおいて,対象者の役割の創出,社会参加の実現といったアプローチの展開が求められている(厚生労働省,2017).衣服の着用やおしゃれをすることは,潤いと楽しみのある生活の実現と社会への積極的参加につながることが報告されている(川端,2008).高齢者を対象としたファッションセラピーでは,服装への関心が高まり,自己意識や自立に対する意欲の高揚,精神的・身体的健康の維持・促進の効果が期待できると言われている(泉,2002).しかし,作業療法の臨床場面では,障害者に対する更衣動作に着目した介入は多く行われるものの,おしゃれに焦点を当てた介入や研究は少ない.そこで,様々な領域での障害者のおしゃれに関する支援の動向を知ることを目的に,文献研究を行うこととした.本演題発表に関して開示すべきCOI関係にある企業等はない.
【方法】文献検索は,医中誌Web,CiNiiを使用し,2023年1月20日に実施した.医中誌Webの検索語は「((装い/AL or おしゃれ/AL or ファッション/AL or (衣服/TH or 衣服/AL) or (服装/TH or 服装/AL)) and (障害者/TH or 障害者/AL))」とし,発行年や論文種類は限定をせずに検索を行った.CiNiiの検索語は「(装い OR おしゃれ OR ファッション OR 衣服 OR 衣類 OR 服装 OR 服飾)AND (障害者)」とし,期間は限定せずに検索した.得られた結果から,本研究との関連性が低いもの,おしゃれに焦点があたっていないもの(体温調節や着脱のしやすさ,介護負担軽減について記載されているもの等),本文・抄録共に入手困難と判断したものは除外した.
【結果】医中誌Webでは243件,CiNiiでは216件,合計459件が検出され,そのうち該当する文献は119件であった.文献の種類としては,原著論文7件,紀要10件,解説5件,解説・特集4件,特集36件,連載企画21件,会議録21件,その他15件であった.対象者の領域は,身体障害46件,視覚障害30件,発達障害26件,精神障害2件,その他15件であった.年代としては,2000年頃から徐々に件数が増え始め,2002年に多く集中していた.領域別の内容としては,身体障害・発達障害領域では,着心地が良く見た目が綺麗に見えるユニバーサルデザインやファッションショーの取り組み,心理面への効果が注目されていた.視覚障害領域では,好きな衣服を選ぶための色を伝えるシステムや,社会生活での実践的なおしゃれの工夫について取り上げられていた.精神障害領域では,外見を整えることで心身の健康に繋げる取り組みが報告されていた.
【考察】原著論文は7件と少ないものの,特集や連載企画,会議録といった文献は多く散見され,特に2002年頃からおしゃれに関する支援が注目されてきたことが伺える.領域別の件数としては精神障害領域が少なく,総患者数(厚生労働省,2020)の割合から比較すると,身体障害領域も少ないように思われる.領域別の内容としては,身体障害や発達障害の領域では車いすや補装具の使用,身体の不自由さから,着心地や衣服の形が綺麗に見えることへのニーズが多く,視覚障害の領域では色が見えない(見えづらい)ことから,衣服を選ぶ際に手がかりとなることへのニーズが多いことが考えられる.本研究の限界として,検索語の設定により全てを網羅できたとは言えないこと,化粧やヘア,ネイルといった美容に関する支援については明らかにできていないことが挙げられる.作業療法においても,様々なニーズに合わせたおしゃれの支援を積極的に行うことで,対象者の社会生活を豊かにできるのではないかと考える.