[PN-6-3] 高次脳機能障害のある方の就労支援について
<はじめに>
今回,福岡市において高次脳機能障害のある方(以下,当事者)を対象とした就労移行支援事業所(以下,就労移行)を開設するにあたり,当事者や支援者から多くのことを学んだ.地方都市において就労移行を新たに開設した意義や目的について考察を加え,報告する.
<きっかけ>
筆者は過去に就労移行で2年間,当事者4名の就職と1名の復職に関わった.
なかでも,当事者同士で行うグループワーク(以下,GW)の効果は非常に大きかった.自身以外の当事者に共感してもらうこと,先輩からアドバイスをもらうこと,互いに進捗を報告して刺激をもらうことには,他のどんな支援でも敵わない力があった.その経験をもとに,転職し,回復期リハビリテーション(以下,リハ)病院で復職を目指したリハを提供したが,院内での就労支援に限界を感じるのに時間はかからなかった.要因として,①リハスタッフ単独で行える支援ではなく,チーム力が重要②入院加療中に予後予測がつきにくく,相談できる支援機関との繋がりが乏しい③当事者に社会で失敗を経験する機会がないために自己理解が深まりにくい④受傷して日も浅いため,本人や雇用主も復職に対して判断材料が少ない.などがあった.
また,支援機関からは,軽症例は受け入れ可能だが,抑制や感情コントロールに難のあるケースは受け入れられにくく,中等度以上の当事者への支援を十分に提供できている就労移行は少ないといった意見や,親亡き後を憂いている状況も少なからずあることを知ることができた.さらに,外来リハ終了後や復職後の離職ケースなどへの支援は受け皿が足りていないのではないか,との情報も聞くことがあった.
<方法・経過>
この状況を俯瞰し,新たに高次脳機能障害のある方を積極的に受け入れる就労移行を開所することは非常に意義のあることだと考えた.また,病院や支援機関の繋ぎ役として地域に存在することも必要ではないかと考え,開設に向けて動き出した.そのなかで,開所までに顔と顔の繋がりを作ることができた機関は,県下の高次脳機能支援拠点,地域活動支援センター,障害者の支援団体,ハローワーク,障害者職業センター,相談支援事業所,回復期病院,急性期病院,大学,施設外就労や軽作業先の企業などであった.また,病院への座談会や体験会,体験利用,オンラインGWなど体験型の催し物も開催した.高次脳機能障害に対する理解のある事業所ができて心強い,とのありがたい言葉も少なからずあった.
<結果>
開所1ヶ月で3名の新規利用者に繋がり,今後利用を検討している方々とも繋がることができている.まだまだ成果は出ていないものの,今後も地域の支援機関と対面で話せるよう会いに行き,未だ出会うことのできていない,本当に支援の必要な方々へ支援を届けていきたい.そのために,支援への想いや取り組みを共有し,地域のなかで必要な存在となれるよう,活動を続けていきたい.
<結語>
地域の中での役割は,高い支援力があって初めて果たすことができる.利用当事者や企業のアセスメントはもちろん,企業での業務や対人交流を想定して実践的な訓練を提供し,補完手段の獲得を促すこと.これらを事業所内,施設外就労先,実習先などで経験し,自己理解を得た上で一般就労へ向けて進んでいく.そして,企業への障害理解を促すための訪問やリハ出勤などを段階的に導入するなど,細かい丁寧な支援が必要となる.作業療法士の,本人及び環境(物的,人的),作業(仕事)を分析する力を就労支援の場で活かせるよう,日々目の前の当事者から学び,実践していきたい.
学会当日には,事例を通して関係機関との具体的な連携にも言及したい.
今回,福岡市において高次脳機能障害のある方(以下,当事者)を対象とした就労移行支援事業所(以下,就労移行)を開設するにあたり,当事者や支援者から多くのことを学んだ.地方都市において就労移行を新たに開設した意義や目的について考察を加え,報告する.
<きっかけ>
筆者は過去に就労移行で2年間,当事者4名の就職と1名の復職に関わった.
なかでも,当事者同士で行うグループワーク(以下,GW)の効果は非常に大きかった.自身以外の当事者に共感してもらうこと,先輩からアドバイスをもらうこと,互いに進捗を報告して刺激をもらうことには,他のどんな支援でも敵わない力があった.その経験をもとに,転職し,回復期リハビリテーション(以下,リハ)病院で復職を目指したリハを提供したが,院内での就労支援に限界を感じるのに時間はかからなかった.要因として,①リハスタッフ単独で行える支援ではなく,チーム力が重要②入院加療中に予後予測がつきにくく,相談できる支援機関との繋がりが乏しい③当事者に社会で失敗を経験する機会がないために自己理解が深まりにくい④受傷して日も浅いため,本人や雇用主も復職に対して判断材料が少ない.などがあった.
また,支援機関からは,軽症例は受け入れ可能だが,抑制や感情コントロールに難のあるケースは受け入れられにくく,中等度以上の当事者への支援を十分に提供できている就労移行は少ないといった意見や,親亡き後を憂いている状況も少なからずあることを知ることができた.さらに,外来リハ終了後や復職後の離職ケースなどへの支援は受け皿が足りていないのではないか,との情報も聞くことがあった.
<方法・経過>
この状況を俯瞰し,新たに高次脳機能障害のある方を積極的に受け入れる就労移行を開所することは非常に意義のあることだと考えた.また,病院や支援機関の繋ぎ役として地域に存在することも必要ではないかと考え,開設に向けて動き出した.そのなかで,開所までに顔と顔の繋がりを作ることができた機関は,県下の高次脳機能支援拠点,地域活動支援センター,障害者の支援団体,ハローワーク,障害者職業センター,相談支援事業所,回復期病院,急性期病院,大学,施設外就労や軽作業先の企業などであった.また,病院への座談会や体験会,体験利用,オンラインGWなど体験型の催し物も開催した.高次脳機能障害に対する理解のある事業所ができて心強い,とのありがたい言葉も少なからずあった.
<結果>
開所1ヶ月で3名の新規利用者に繋がり,今後利用を検討している方々とも繋がることができている.まだまだ成果は出ていないものの,今後も地域の支援機関と対面で話せるよう会いに行き,未だ出会うことのできていない,本当に支援の必要な方々へ支援を届けていきたい.そのために,支援への想いや取り組みを共有し,地域のなかで必要な存在となれるよう,活動を続けていきたい.
<結語>
地域の中での役割は,高い支援力があって初めて果たすことができる.利用当事者や企業のアセスメントはもちろん,企業での業務や対人交流を想定して実践的な訓練を提供し,補完手段の獲得を促すこと.これらを事業所内,施設外就労先,実習先などで経験し,自己理解を得た上で一般就労へ向けて進んでいく.そして,企業への障害理解を促すための訪問やリハ出勤などを段階的に導入するなど,細かい丁寧な支援が必要となる.作業療法士の,本人及び環境(物的,人的),作業(仕事)を分析する力を就労支援の場で活かせるよう,日々目の前の当事者から学び,実践していきたい.
学会当日には,事例を通して関係機関との具体的な連携にも言及したい.