[PN-6-6] テキストマイニングを用いた就労継続に影響する精神障害者の主観の文献検討
はじめに
2018年に精神障害者は雇用義務化の対象となり,2022年時点でも他の障害に比較して新規就労者数は多い.一方で障害別離職率では精神障害者が最も高い状況にある.この問題に対応する施策は就労定着事業等があり,企業・自宅等への訪問等で,生活リズム,金銭・体調管理などの課題解決に向けて,必要な連絡調整や指導・助言等の支援を実施するものだが,具体的内容は支援者の経験の多寡によるものであり,当事者中心の有効な支援方法は確立されていない.そこで本研究の目的は,一般企業で就労継続中あるいは就労継続経験のある精神障害者がどのような主観を持ちながら働いているのか文献調査し,就労継続に影響する主観の内容を概観する.本研究の意義は,就労定着における支援の着眼点に寄与することである.
方法
検索は,医中誌Web Ver.5とメディカルオンラインを使用し,検索語は「就労継続」or「就労定着」and「精神障害」と,「仕事」and「定着」or「継続」and「精神障害」とし,発行年の期間は限定しなかった(最終検索日2023年1月21日).本研究は,精神障害者の一般企業での就労継続における主観の抽出を目的としていることから,適格基準は,①対象者は一般企業で就労継続中または就労継続経験がある精神障害者であること,②就労継続に関する対象者の主観や語りの記述があるもの,③原著論文とした.除外基準は,福祉的就労であること,精神障害者以外を対象としているものとした.本研究では,KH corder3を用いて分析した.分析時の語の統制設定のため,強制抽出語を複合語の検出から「人間関係」とし,使用しない語を「会社」「多い」「作る」とした.次に,頻出後の単純集計と共起ネットワーク図を出力し,カテゴリ化を図った.
本研究は,科研費基盤研究(C)研究課題22K01957の助成を受けて実施した.開示するCOI関係はない.
結果
対象論文は,医中誌では236件,メディカルオンラインでは6件,延べ242件の文献が抽出された.包含基準に基づき抽出された論文を精査した結果,対象論文は7件となった.この7件から対象者の主観や語りの記述部分を抽出した.全ての単語の総抽出語は3,154語,同一の単語を一つの単語として捉えた場合の語数(異なり語数)は746語であった.頻出語の上位10位は「仕事」「就労」「開示」「自分」「不安」「生活」「障害」「体調」「職場」「病気」の順であった.頻出語のうち共起関係を示した共起ネットワークでは,10のサブグラフが検出された.各内容は,①就労は生活が充実する変化があり保護を抜けるか悩む,②病気を持って働くことは職場で周囲の目を気にせず受け入れること,③責任ある仕事を継続するために能力の工夫と必要に応じた支援を得る,④薬を飲む工夫,⑤体調の悪さを受け入れる,⑥障害を開示する,⑦気持ちに無理のない選択,⑧仲間が出来る,⑨失敗できない不安,⑩仕事を続けることは回復を考え人間関係や上司の理解が変わることに期待せず障害を隠さず働くこと,を示していた.
考察
精神障害者の離職理由は,「職場の雰囲気・人間関係」「賃金・労働条件に不満」「疲れやすく体力・意欲が続かなかった」「症状が悪化(再発)した」「仕事内容が合わない」(厚生労働省,2013)等がある.今回,就労継続に関する精神障害者の主観や語りからは,職場の人間関係などに期待せず,自身の体調を受け入れ,必要に応じた支援を得ること等が抽出され,これらは離職理由となる事柄への克服を目指した就労継続に関する主観であると考えた.これらの主観より,今後の就労定着支援における着眼点が導き出される可能性がある
2018年に精神障害者は雇用義務化の対象となり,2022年時点でも他の障害に比較して新規就労者数は多い.一方で障害別離職率では精神障害者が最も高い状況にある.この問題に対応する施策は就労定着事業等があり,企業・自宅等への訪問等で,生活リズム,金銭・体調管理などの課題解決に向けて,必要な連絡調整や指導・助言等の支援を実施するものだが,具体的内容は支援者の経験の多寡によるものであり,当事者中心の有効な支援方法は確立されていない.そこで本研究の目的は,一般企業で就労継続中あるいは就労継続経験のある精神障害者がどのような主観を持ちながら働いているのか文献調査し,就労継続に影響する主観の内容を概観する.本研究の意義は,就労定着における支援の着眼点に寄与することである.
方法
検索は,医中誌Web Ver.5とメディカルオンラインを使用し,検索語は「就労継続」or「就労定着」and「精神障害」と,「仕事」and「定着」or「継続」and「精神障害」とし,発行年の期間は限定しなかった(最終検索日2023年1月21日).本研究は,精神障害者の一般企業での就労継続における主観の抽出を目的としていることから,適格基準は,①対象者は一般企業で就労継続中または就労継続経験がある精神障害者であること,②就労継続に関する対象者の主観や語りの記述があるもの,③原著論文とした.除外基準は,福祉的就労であること,精神障害者以外を対象としているものとした.本研究では,KH corder3を用いて分析した.分析時の語の統制設定のため,強制抽出語を複合語の検出から「人間関係」とし,使用しない語を「会社」「多い」「作る」とした.次に,頻出後の単純集計と共起ネットワーク図を出力し,カテゴリ化を図った.
本研究は,科研費基盤研究(C)研究課題22K01957の助成を受けて実施した.開示するCOI関係はない.
結果
対象論文は,医中誌では236件,メディカルオンラインでは6件,延べ242件の文献が抽出された.包含基準に基づき抽出された論文を精査した結果,対象論文は7件となった.この7件から対象者の主観や語りの記述部分を抽出した.全ての単語の総抽出語は3,154語,同一の単語を一つの単語として捉えた場合の語数(異なり語数)は746語であった.頻出語の上位10位は「仕事」「就労」「開示」「自分」「不安」「生活」「障害」「体調」「職場」「病気」の順であった.頻出語のうち共起関係を示した共起ネットワークでは,10のサブグラフが検出された.各内容は,①就労は生活が充実する変化があり保護を抜けるか悩む,②病気を持って働くことは職場で周囲の目を気にせず受け入れること,③責任ある仕事を継続するために能力の工夫と必要に応じた支援を得る,④薬を飲む工夫,⑤体調の悪さを受け入れる,⑥障害を開示する,⑦気持ちに無理のない選択,⑧仲間が出来る,⑨失敗できない不安,⑩仕事を続けることは回復を考え人間関係や上司の理解が変わることに期待せず障害を隠さず働くこと,を示していた.
考察
精神障害者の離職理由は,「職場の雰囲気・人間関係」「賃金・労働条件に不満」「疲れやすく体力・意欲が続かなかった」「症状が悪化(再発)した」「仕事内容が合わない」(厚生労働省,2013)等がある.今回,就労継続に関する精神障害者の主観や語りからは,職場の人間関係などに期待せず,自身の体調を受け入れ,必要に応じた支援を得ること等が抽出され,これらは離職理由となる事柄への克服を目指した就労継続に関する主観であると考えた.これらの主観より,今後の就労定着支援における着眼点が導き出される可能性がある