[PN-6-7] 知的障害者に就労支援実践者が用いているアセスメントに関する文献研究
【はじめに】障害者雇用促進法が2020年に改正され,現在の民間企業における法定雇用率は2.3%になり,実雇用率も年々増加傾向にある.しかし,障害者職業センターの調査(2017)によると知的障害者は就業できても,1年後には32.0%が離職している.就労に関するアセスメントの不備が少なからずそれに影響していると考えたが,就労支援実践者が用いるアセスメントについての先行研究では,中枢神経障害や高次脳機能障害,精神障害の事例が多く,知的障害についての報告は見られなかった.
【目的】知的障害者の一般就労への支援に用いられるアセスメントについて文献的検討を行い,実態を把握すると共に,作業療法士としてどのようなアセスメント作成に取り組むべきかといった課題を明らかにする.
【方法】文献検索データベースは,医学中央雑誌Web(Ver.5.0)を使用した.キーワードは「知的障害」,就労支援のシソーラス用語である「障害者雇用援助」を組み合わせ,対象文献が少数であると予想し,年代と文献の種類は指定せず検索した.選定基準は①事例及び診断名,アセスメントの記載がある②一般企業への就労支援を著者または著者の所属機関が支援しているの両方を満たすもの,除外基準は①主目的がプログラムの効果検討である②支援開始当初から福祉的就労がゴールであるとし,対象となる文献を精読して抽出した.次に各文献の本文から,「就労支援の実施場所」「アセスメント」「最終的な就労状況」「評価を行った専門職」の4点を確認した.アセスメントに関しては,国際生活機能分類(ICF)に基づいて,心身機能・身体構造に該当するものは「心身機能評価」,活動と参加において,就労に関するものを「就労関連評価」,就労以外のものは「活動参加評価」とした.
【結果】検索日は2023年1月30日13:50,文献数は486件,本文ありで確認できた文献数は172件であった.抄録及び本文を確認し,選定基準を満たしたものは6件であり,事例数は9例であった.「就労支援の実施場所」は,生活介護事業1件,就労移行支援事業1件,地域障害者職業センター1件,相談支援事業1件,行政関係施設1件,特別支援学校1件であった.「アセスメント」は,心身機能評価4種,就労関係評価5種,活動参加評価4種で,全ての項目において観察評価と家族からの聞き取りが含まれていた.「最終的な就労状況」は,一般就労5例,障害福祉サービス利用4例であった.「評価を行った専門職」は,作業療法士1名,生活支援員1名,障害者職業カウンセラー1名,行政保健師1名,特別支援学校教員1名,不明1名であった.
【考察】本研究結果から,知的障害者の就労支援において,心身機能・就労関連・活動参加と幅広く評価をしていることがわかったが,支援者の観察評価や,施設独自の評価指標を用いている事例が散見された.また,心身機能評価ではWAIS-Ⅲや田中ビネー知能検査のような標準化された評価を用いている事例はあったが,身体機能評価で標準化された評価を用いた事例は見られなかった.知的障害者の支援において,作業能力・四肢の運動協応・体力や握力,ピンチ力などの身体機能面が就労継続に欠かせない指標と考える.就労技能に加え,身体機能面も併せて評価できることは作業療法士の強みでもあり,今回の結果からより使いやすい身体機能面の評価の作成が求められていると考えた.他職種との連携や支援領域が幅広い知的障害者に対する就労支援において,1つの共通認識になりうる計量的な評価があることでより円滑な支援に繋がるのではないかと示唆される.その為,他職種や他機関と共通認識が得られる,現場に合った評価の作成が必要だと考えられる.
【目的】知的障害者の一般就労への支援に用いられるアセスメントについて文献的検討を行い,実態を把握すると共に,作業療法士としてどのようなアセスメント作成に取り組むべきかといった課題を明らかにする.
【方法】文献検索データベースは,医学中央雑誌Web(Ver.5.0)を使用した.キーワードは「知的障害」,就労支援のシソーラス用語である「障害者雇用援助」を組み合わせ,対象文献が少数であると予想し,年代と文献の種類は指定せず検索した.選定基準は①事例及び診断名,アセスメントの記載がある②一般企業への就労支援を著者または著者の所属機関が支援しているの両方を満たすもの,除外基準は①主目的がプログラムの効果検討である②支援開始当初から福祉的就労がゴールであるとし,対象となる文献を精読して抽出した.次に各文献の本文から,「就労支援の実施場所」「アセスメント」「最終的な就労状況」「評価を行った専門職」の4点を確認した.アセスメントに関しては,国際生活機能分類(ICF)に基づいて,心身機能・身体構造に該当するものは「心身機能評価」,活動と参加において,就労に関するものを「就労関連評価」,就労以外のものは「活動参加評価」とした.
【結果】検索日は2023年1月30日13:50,文献数は486件,本文ありで確認できた文献数は172件であった.抄録及び本文を確認し,選定基準を満たしたものは6件であり,事例数は9例であった.「就労支援の実施場所」は,生活介護事業1件,就労移行支援事業1件,地域障害者職業センター1件,相談支援事業1件,行政関係施設1件,特別支援学校1件であった.「アセスメント」は,心身機能評価4種,就労関係評価5種,活動参加評価4種で,全ての項目において観察評価と家族からの聞き取りが含まれていた.「最終的な就労状況」は,一般就労5例,障害福祉サービス利用4例であった.「評価を行った専門職」は,作業療法士1名,生活支援員1名,障害者職業カウンセラー1名,行政保健師1名,特別支援学校教員1名,不明1名であった.
【考察】本研究結果から,知的障害者の就労支援において,心身機能・就労関連・活動参加と幅広く評価をしていることがわかったが,支援者の観察評価や,施設独自の評価指標を用いている事例が散見された.また,心身機能評価ではWAIS-Ⅲや田中ビネー知能検査のような標準化された評価を用いている事例はあったが,身体機能評価で標準化された評価を用いた事例は見られなかった.知的障害者の支援において,作業能力・四肢の運動協応・体力や握力,ピンチ力などの身体機能面が就労継続に欠かせない指標と考える.就労技能に加え,身体機能面も併せて評価できることは作業療法士の強みでもあり,今回の結果からより使いやすい身体機能面の評価の作成が求められていると考えた.他職種との連携や支援領域が幅広い知的障害者に対する就労支援において,1つの共通認識になりうる計量的な評価があることでより円滑な支援に繋がるのではないかと示唆される.その為,他職種や他機関と共通認識が得られる,現場に合った評価の作成が必要だと考えられる.